イスラム教といえば脳裏に浮かぶのは極端な男尊女卑。女性は中学校以上の教育を受けられない、なんて話も聞く現在。
ところがイランでは「大学合格者の6割(分野によっては7割)が女性」という何やら一見矛盾した実情があるようだ。
これはなぜなのか?
1.イスラム化による「安心感」と進学の許容
1979年のイラン革命後、社会のイスラム化(男女分離など)が進んだことが、保守的な家庭の意識を変えた。
• 親の承諾:以前の世俗的な体制下では、保守的な親は「娘が西洋化される」ことを恐れて進学を拒む傾向があった。しかし、革命後に学校が「イスラム的に清廉な場所」になったことで、安心して娘を大学へ送り出せる環境が整った。
• 男女分離の恩恵:医療や教育現場で男女分離が徹底されたため、女性患者を診る女性医師や、女子生徒を教える女性教師の需要が爆発的に高まり、国策として女性の高度教育が推進された。
2.社会的制約からの「逃避」と「自己実現」
女性にとって、大学は数少ない「自由なコミュニティ」としての機能を果たしている。
• 家庭外の居場所:就職や公的な活動に制約が多い分、勉強は女性が実力を証明し、家庭外で過ごすための最も正当な手段となっている。
• 結婚市場での優位性: 高学歴であることが「教養のある母親」としてのステータスとなり、より良い結婚条件につながるという現実的な側面もある。
3.男性側の経済的・構造的要因
一方で、男性側には「大学に行かない(行けない)」事情がある。
• 早期の就労:男性は「家族を養う」という強い社会的プレッシャーがあるため、4〜6年も大学に通うより、早くからビジネスや実業の世界に入って現金を稼ぐことを優先する傾向がある。
• 兵役の存在:男性には兵役義務があり、その期間の空白を嫌って進学を躊躇したり、キャリア形成を急いだりするケースが見られる。
4.STEM分野(理系)への集中
驚くべきことに、イランの工学や理学といったSTEM分野の学生の約7割が女性というデータもある。
• 実力主義の試験:イランの大学入試(コンクール)は非常に過酷な一発勝負の筆記試験で、この「数字と実力だけで決まる」仕組みが、縁故や性別の壁に阻まれやすい社会において、女性が自らの能力で扉をこじ開ける数少ないルートとなっている。
現状と課題の対照
教育水準だけを見れば世界トップクラスの女性活躍だが、現実は以下の表のような歪みを抱えている。

イランの女性たちは「教育という武器」を手にしているが、それを振るうための「社会的な戦場(職場)」が未だに制限されているという、高度な教育と低い社会参画のギャップが最大の問題点となっている。