いまや「戦闘」の主流となりつつあるサイバー戦に対して、日本はどのような対策をとっているのだろうか。
実は、日本の現在のサイバー防衛体制は、近年劇的に変化し強化されつつある。これは、国家を背景とする主体によるサイバー攻撃の高度化・深刻化、そしてウクライナ侵攻のような地政学的リスクの高まりを受けたものだ。
これまでの「攻撃を受けてから対処する」受動的な姿勢から、「攻撃を未然に防ぎ、抑止する」能動的な姿勢(能動的サイバー防御:Active Cyber Defense)への抜本的な転換が進んでいる。

以下に、日本のサイバー防衛体制、重要インフラ防衛における課題と対策についてまとめる。
1. 日本の現在のサイバー防衛体制
日本のサイバー防衛は、複数の政府機関が連携し、防衛省・自衛隊が国家安全保障に関わる重大な事態に対処するという二段構えの構造になっている。
A. 全体的な司令塔と官民連携(内閣官房)
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政府全体のサイバーセキュリティ政策の司令塔は、内閣官房に置かれている。
組織・役割 詳細
・国家サイバー統括室 (NCO) :2025年に新設された、サイバー安全保障の新たな司令塔組織。政府機関、警察、自衛隊、民間事業者(特に重要インフラ事業者)間の情報共有と調整を統合的に行る。後述する「能動的サイバー防御」の実施において中核的な役割を担う。
・NISC(内閣サイバーセキュリティセンター):政府機関や重要インフラ事業者のサイバーセキュリティ対策の基準策定や、インシデント発生時の対応調整を行う。
・官民安全保障情報共有プラットフォーム:政府と重要インフラ事業者等が、脅威情報や脆弱性情報を迅速に共有・分析するための枠組み。
B. 安全保障・防衛の実働部隊(防衛省・自衛隊)
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国家安全保障に関わる重大なサイバー攻撃(武力攻撃に準ずる事態)への対処を担当する。
組織・役割 詳細
・自衛隊サイバー防衛隊:2022年に新編された、自衛隊のサイバー戦専門部隊。自衛隊の指揮通信システムの防護を主としつつ、国家レベルのサイバー攻撃に対処する能力の向上を図っている。人員は大幅に拡充され、将来的に数万人規模の体制を目指している。
・能動的サイバー防御 (ACD) の実施:国家安全保障戦略に基づき、自衛隊は警察と連携し、攻撃元となっているサーバーやボットネットに対し、技術的措置を講じて無力化(通信遮断やデータ消去など)する権限を持つ方向で制度整備が進んでいる。
C. 捜査・取り締まりと第一次的対処(警察庁)
サイバー事案の捜査、犯罪としての取り締まり、および特定重要インフラに対する第一次的な対処を担当する。
2.インフラ防衛に向けた課題と対策
重要インフラ(電力、通信、交通、金融、医療など)へのサイバー攻撃は、物理的な破壊や機能停止を引き起こし、国民生活や社会経済活動に甚大な影響を及ぼす可能性がある。
課題 1:平時からの潜伏と防衛の難しさ

• 課題: サイバー戦は有事になってから突然始まるのではなく、平時の段階から相手国のインフラ等へ悪意のあるプログラム(マルウェア)を潜伏させておくのが主流で、これにより有事の際に一斉に攻撃を起動し、インフラを麻痺させることができる。
• インフラ防衛における構造的問題: インフラ機器にマルウェアが潜伏している疑いがあっても、それを検証(フォレンジック)したり駆除したりするためには、新幹線や電力網などの社会インフラを長期間停止させる必要がある。しかし、現実的に社会生活を止められないため、調査・駆除が非常に困難だ。
対策:能動的サイバー防御 (ACD) の導入
これまで政府は民間事業者からの自発的な報告に依存していたが、新たな戦略では、国が能動的に情報を収集・分析し、攻撃を未然に排除することを目指している。
• 常時監視と情報の集約: 国内の通信事業者が扱う通信データ(メタデータ等)を含め、脅威情報を国が能動的に収集・分析する体制を構築する。特に、海外からの不審な通信トラフィックを検知し、攻撃者の指令サーバー(C2サーバー)を特定する。
• 早期警戒と官民連携の義務化: 特定された脅威情報は、被害が予想される重要インフラ事業者等へ即座に共有される。これまでの「推奨」レベルの情報共有ではなく、法的な枠組みに基づいた「義務」としての側面が強化される。
• 無害化措置(攻撃の無力化): 国(警察庁および自衛隊のサイバー部隊)が、攻撃元となっているサーバーやボットネットに対して、データ消去や通信遮断などの技術的措置を講じて無力化することを可能とする。これは、従来の「専守防衛」の解釈をサイバー空間において拡張するものと言える。
課題 2:複合的な軍事・諜報活動への対応

• 課題: 実際の軍事作戦前には、相手国のレーダー網や電力をハッキングで落としたり、防犯カメラや個人の端末を乗っ取って要人の位置情報を把握・監視するなど、サイバー攻撃が重要な事前準備として用いられている。また、サプライチェーンの脆弱性を突いた攻撃も増加している。
対策:包括的な防衛能力の強化
• 法的・制度的基盤の刷新: 2025年に成立した「サイバー対処能力強化法」により、能動的サイバー防御の実施に必要な法的権限が整備された。これには、米国のNSA(国家安全保障局)や英国のGCHQ(政府通信本部)が行っているような、通信情報の能動的な収集・分析を日本の法体系の中で可能にするものが含まれる。
• サプライチェーンリスクへの対処: 重要インフラ事業者が使用する機器やソフトウェアの調達において、セキュリティ上の懸念がないかを確認する審査制度の導入や、セキュリティ・クリアランス(適性評価)制度の整備が進んでいる。
課題 3:人材・技術能力の不足

• 課題: 高度化するサイバー脅威に対処するためには、高度な専門知識と技能を持った人材が不可欠だが、日本では慢性的に不足している。また、量子コンピュータの実用化により、現在広く使われている暗号技術が破られる(危殆化)リスクも現実味を帯びている。
対策:人材育成と技術革新への投資
• 人材の抜本的拡充: 自衛隊や警察におけるサイバー専門人材の採用・育成を強化。予備自衛官補の活用や民間人材の積極的な採用も進めている。また、防衛省サイバーコンテストなどを通じて、優秀な人材の発掘にも取り組んでいる。
• 技術的研究・開発: AIを活用した自律的なサイバー防護技術や、量子コンピュータでも解読が困難な「耐量子計算機暗号(PQC)」への移行など、次世代の技術的研究を進めている。防衛装備庁などで、各種装備システムのサイバー防護技術の研究も行われている。
このように、日本は現在、重要インフラを含む国家全体をサイバー脅威から守るため、司令塔の設置、法制度の整備、能動的防御の導入、人材・技術の強化といった多角的な対策を、官民一体となって推し進めている。
とはいうものの、本当に優秀なIT人材が公務員になるかといえば、こえは大いに疑問だ。役人のトップは出世の為には国民の不利益など全く無視の、ド文系官僚であり、その下の小役人は言語同断の低レベル。
こんな世界に優秀なIT人材を確保するのは至難の業だろう。