ポルシェ カレラ (2006/3/5) |
||||
前期型996の涙目に比べて丸目になった997。やはりポルシェは丸目が似合う。 |
||||
クルマ好きが一度はオーナーになってみたいクルマの筆頭は、何と言ってもポルシェ。その中でも911系こそが、マニアにとっては何時かはポルシェ、五体満足なうちにオーナーになりたい
クルマの代名詞だろう。
最近はケイマンやボクスターなど、スポーツ性では寧ろ911系を上回るものもあるが、やはり誰が何と言おうがポルシェはリアエンジン!そのポルシェ911系の現行モデルがコードナンバー997。今まで、ボクスター、ケイマンS、カレラSと試乗したが、
997の中でも一番ベーシックなカレラの試乗記が無かった事に気が付いて、遅ればせながら今回の実施となった。 | ||||
写真左: リアエンジンのカレラは、この角度から見るのが一番それらしい。アグレッシブなケイマンに比べて優雅で美しい。 |
||||
写真下:
上からボクスター、ケイマンS、カレラのサイドビュー。 こうして見ると、カレラのリアオーバーハングの長さが良く判る。 ポルシェは車名に“S”が付くとキャリパーが赤になる。この3車種ではケイマンSのみ赤いキャリパーが付く。 こうして見ると、ケイマンがボクスタークーぺであることと、3車ともBピラー以前は可也似ているのが判る。何しろ部品の50%が共通なのだから。 |
||||
左のカレラと右のケイマンSを正面から見れば、ライトとエアインレットの形状の違いで、差別化しているのが判る。 |
実はフロントスクリーンから前のバルクヘッド以前は両車とも殆ど同じ。ボンネットは事実上は共通部品ですらある。 |
|||
ここまでの内容から、米国ではボクスターとカレラの価格差は日本程では無いのが理解できた筈なので、今度は先ず外形を比べてみる
ことにする。上の一連の写真を見ても判るように、911はBピラーより後ろがマルで違う。リアエンジンというレイアウトから必然的にリアのオーバーハングが長くなるが、
それが逆に優雅なデザインに結びつき、結果として高級感を醸し出している。
|
||||
フロントとリアのボンネット&エンジンカバーを開けたところ。 |
||||
フロントのトランクはボクスター/ケイマンと同じ。 |
それでは、各部を見てみよう。 |
|||
現代では世界の量産車で唯一のリアエンジン。 |
||||
ドアを開けた光景は、実を言えばボクスター/ケイマン(987)と非常に似ている。ポルシェに詳しくない人(実際、世の中の殆どの人がそうだろう)なら、チョット区別が付かないくらい似ている。500万円も余計に投資したカレラオーナーからみれば、面白くはないだろうが、 前述のように米国では最大300万円の差だと思えば納得も出来る。 |
||||
987と997は双子とは言わないまでも、普通の兄弟よりは遥かに似ているインテリア。 これでは987から997に買い換えても、大きな感動はないだろう。 最大の違いはメーターが5連になることだ。 |
||||
カレラ(997)の室内 試乗車はオプション(24万円!)のエレクトリックコントロールシート(要するに電動シート)が付いていた。 この写真の大きさでは、チョット見はケイマンと区別が付かない。 |
ケイマン/ボクスター(987)の室内 写真のケイマンは標準シートなのでバックレストのみ電動。カレラも標準はこのタイプとなる。 写真の長いレバーは力が入り易く、手動の上下調整としては実に使い勝手が良い。 |
|||
上部のエアコン噴出し口が四角い以外は、オーディオとエアコン操作パネル は全く同じ。試乗車はオプションのレザー仕上げなので、ケイマンと違って見えるが、標準仕様なら殆ど同じとなる。 |
写真はオプションのフルオートエアコン装着のためカレラと全く同じとなる。上部のエアコン吹き出し口が丸いことでボクスター/ケイマンであることが判別できる。 |
|||
この写真から、両車とも全く同じスイッチやノブが使用されているのが判る。 |
左のカレラはオプションのレザー仕上げドアパネルとBOSEオーディオシステムを装着しているが、標準なら、これも全く同じ光景が見られる筈。 |
|||
運転席に座ると、シートの座り心地 も、ドライバーの視線に入るインテリアも987とソックリだ。試乗車はオプションのレザー仕上げを装備しているから、レザーの縫い目(ステッチ)が見えるので、雰囲気が違うが、これが標準仕様ならば更に似ている事になる。最大の違いは987の3連メーター に対してこちら(997)は5連メーターとなる。詳細は上の写真を参照されたい。 |
||||
向かって左にあるキーを差し込むオーソドックスなイグニッションスイッチ。左隣はライトのスイッチ。 |
それではいよいよエンジンを掛けてみよう。 |
|||
イグニッションオンの初期表示。警告灯は実にクッキリ鮮やかで見やすい。これぞ精密計器という質感だ。 |
||||
同じく初期表示の拡大。オイルのレベルが表示されるが、半角カタカナ表示はシラケル。 |
||||
走り出すにはブレーキを踏みながら、セレクターをDに入れて、他車に比べて長いパーキングレバーをリリースするという手順では、一般的なAT車と何ら変らない。 取り合えず2車線の国道を流れに乗って走る。この程度の速度では回転計の針は2000rpm以下で、負荷が少なければ1600rpm程度で巡航すら出来る。 この時の走行音は高級サルーン並みとは言わないまでも結構静かだ。それでも耳を澄ませば、微かに聞こえるのは御馴染みのポルシェサウンドで、ケイマンに比べて音量は小さいものの、 例のモーターのような音や、ヒューンという吸気音のような音などが聞こえている。 |
||||
ポルシェのティプトロの独特な点として第1にセレクターレバーにある。P→R→N→Dという配置は一般的だし、マニアルにする場合にDから左でMもよくあるタイプだが、
それから先、実際にマニアルでシフトするにはステアリングのスイッチのみで、セレクトレバーでのマニアルシフトは出来ない。 |
||||
マニアルシフトはステアリングのスポークに埋め込まれたスイッチで行う。 |
||||
小さい表示にも関らずに非常に見やすいシフトインジケータ。左はパーキング時、中央はDレンジの時で走行中のギヤポジションが一目で判る。 右はマニアル時。 |
||||
走り始めてから10分程すると水温も十分に上がってきて、また自分自身も慣れてきたので、前が空いたこともあり、ステアリングスイッチをマイナス2回で
4速から2速にシフトダウンする。
大したショックも無く、回転計の針は4000rpm程度まであがって既にポルシェサウンドを奏でている。
そのままフルスロットルを踏んでみると、クルマはグングンと加速をして6000rpmを過ぎてからも益々シビレるサウンドを発しながら、難なくレッドゾーンの始まる7000rpmに到達する。
そこで、シフトアップスイッチをいれ3速に、更に加速を続け・・・・あっ、ヤバイ!左側のアナログ速度計は10時辺りを指している。慌てて回転計の下部にあるデジタル速度表示をみれば、やっぱりヤバイ。
そこで減速して、車の流れを見つけて左車線に入る。
成る程、ケイマンやボクスターのトップエンドは差別化のためにデチューンしてあるという噂は確かに本当だろう。このトップエンドの特性を手に入れたければ、総額1200を投資しなさいというわけだ。 |
||||
ステアリングコラム左に生えているのがウインカー&ライトの切り替えレバー。ウインカーはロックする手前で戻すと、その後3回点滅する。ロックする時のフィーリングは1000万 円超どころか、国産低価格車にすら負けるフィーリングだ。 |
試乗車にはオプションのオートクルーズが装着されていた。 |
|||
カレラのステアリング特性はケイマンに比べれると明らかにマイルドに感じる。勿論、一般的には十分にクイックなのだけれど、987がミッドエンジンで回転軸に対する慣性が極端に少ないことからくる、
ステアリングレスポンスの鋭さに比べれば遥かに穏やかだから、長距離のクルージングには向いている。やはり987はピュアスポーツで997はクランドツーリングという世間の評判は正しい。カレラSの時も感じたが、
リアアクスルの更に後方に重いエンジンをぶら下げているという感覚を消し去ることは不可能なようだ。 |
||||
カレラのリヤに標準の10J×18ホイールと265/40ZR18タイヤ。 |
カレラのフロントに標準の10J×18ホイールと235/40ZR18タイヤ。 |
|||
ケイマンの発売により、その地位が怪しくなりつつある911系だが、今回乗ってみて確認出来たのは、やはりカレラはグランドツーリングカーであり、
ハイウェーを使った長距離の移動なら此れに勝るものは無いという事実だ。価格を考えればボクスターやケイマンに比べて割り高だが、それでも誰もボッタクリだ等と言わないのが流石はポルシェ!
考え方によっては、カレラが適正価格で、ボクスターは政策的なダンピングとも言えるから、買い得なボクスターを選ぶか、高くともカレラを選ぶかはオーナーの考え次第だ。
まあ、そういっても、ある階層の人たちの間では、ボクスターやケイマンなんて乗ったら、金持ち仲間にバカにされると思っている輩も居ることは事実だ。
実際に日本でのカレラ/カレラSのAT/MT比率は80%以上がAT(Tip)という事実はカレラの客層を物語っている。 |