PORSCHE Carrera S (2005/8/6)
※この試乗記は2005年8月現在の内容です。現在この車種は MCにより仕様が変更されています。

 




PORSCHE BOXSTER


CAYMAN


CAYMAN S


CARRERA


BMW M5


BMW 630i


先代996から一転して丸目に戻ったフロントは、より911らしくなった。試乗車はハイパワー版のカレラSだ。

リアから見たカレラとの違いは4本出しのマフラーとエンブレムくらいだ。今やリアエンジンという形式自体が他に例を見ないから、ライバル不在の状態だ。

B_Otaku がポルシェ911を始めて知ったのは中学生の時で、雑誌カーグラフィック(CG)のスポーツカー特集だった。初代911は開発コード901とも呼ばれている空冷、水平対向6気筒エンジンをリアに搭載するスポーツカーという当時としても少数派で、デビューは1964年、排気量は2ℓだから、フェラーリなどと比べれば、当時としても比較的小型軽量のスポーツカーだった。

この当時のポルシェのミッションは独自のサーボシンクロを搭載していて、ニッサンがこのサーボシンクロの特許をポルシェから買ってブルーバードSSS(510)に搭載していた。ポルシェタイプのミッションは極めて強力なシンクロを持つが、そのシフトフィーリングはバターにナイフと言われていたように、長いストロークとグニャグニャのシフトフィーリングは、幾ら強力なシンクロとはいえ決して評判は良くなかった。実は B_Otaku も当時510SSSに乗っていたので、ポルシェシンクロの強力さと共に、あのグニャグニャフィーリングには閉口したものだった。

ところで、輸入車の場合は歴代のモデルを表すのに開発コードで区別するのが一般的になっている。911の場合は特にこの傾向があり、実際に911とは言わずに、例えば先代なら996、新型なら997などと呼ばれる。以前、ヤ○ー掲示板の自動車カテゴリーで、有名なアラシが自分は現行911の4WDを持っていると自慢していたので、誰かが996の4Sかと聞いたら、わたしのクルマは996などではなく911です、なんて答えたから知っている人には一発でバレてしまったという笑い話があった。


1964年発売の初代911(901)
ナローと呼ばれて人気が高いが、今時レストアして維持するのは大変だろう。

901のエンジンは発売時の2ℓ、130psからその後、徐々に排気量を増大させて73年の最終型では2.3ℓ(実際には2341cc)、190ps(911S)まで拡大されていた。ベースグレードが911でハイパワー版を911Sと呼ぶ慣わしは既に67年から始まっていた。同じく67年にオープンモデルのタルガも追加された。また、911に4気筒、1.6ℓ、90psエンジン搭載の912も1965〜69年に発売されていた。

当時高校生だった B_Otaku は911が特に凄いクルマとは思えなかったが、各種雑誌での内外の有名ジャーナリストが挙ってベタ褒めするので、成る程、そんなに良いクルマなのかと思い始めた。とりわけ、あの有名なポール フレール氏が絶賛しているのを読むに従い、成る程、これは只者ではないと確信したのだった。
1969年の国内価格は911Sが550万円。当時国産スポーツカーの最高峰であるトヨタ2000GTが235万円だったから、その2倍以上!クルマ自体を持つことが庶民には大変なことだった時代だから、まあ、何れにしても別世界の話しで、どうせ別世界の夢ならば、ポルシェよりフェラーリの夢を見たほうが徳?という心理もあった。


1974年、北米の安全基準に合わせたビッグバンパーの930。写真はルーフを着脱可能なオープンモデルのタルガトップ。



930ターボ(1975)

901の後継は1974年にリリースされた930で、これは北米の安全基準を満たすために大幅に改良が必要となったためのモデルチェンジで、一番の特徴は時速5マイルでの衝突を吸収するバンパーを装着した外観で、930は通称ビッグバンパーとも呼ばれている。
930は当初の2.7ℓ、150psだったが、その後徐々に排気量の拡大とパワーアップが行われた。

930はターボモデルが設定された点も忘れてはならない。911の発売に1年遅れの1975年に発売された911ターボは3.0ℓ、260psを発生した。折りしも、当時の少年達の間でスーパーカーブームが真っ盛りだったこともあり、フェラーリ、ランボルギーニなどと並んで、911ターボも少年達の憧れであった。実は当時社会人1年生だった B_Otaku としては、本来シンプルな標準ボディの911に大げさなオーバーフェンダーを付けた911ターボというのは決して美しいとは思わなかったし、イタリア系のスーパースポーツであるフェラーリやランボルギーニの華やかさに比べ、速ければ何でもあり丸出しの思想も受け入れ難かった。
930は1989年まで生産され、最終型では911カレラが3.2ℓ、231psに、ターボは3.3ℓ、300psまでパワーアップされた。実は15年という長いモデルサイクルに当時のポルシェ社の苦悩があるのだが、これに付いては別の機会に譲ろう。


964ターボ(1991)
3.6ℓ、320ps。この964が、901の伝統を受け継いだ最後のクルマとなる。(次の993は85mmも全幅が拡大された)

そして、1989年に発売されたのは964と呼ばれる新型で、発売時点では4WDのカレラ4のみで、2WDのカレラ2は翌90年に発売され、この時ポルシェとしては初のトルコンATであるティプトロニック装着車も発売された。エンジンは何れも3.6ℓ、250psだったが、4WDとATの出現により、それまではとても一般人には乗りこなせない特殊なクルマでもあった911は、バブル真っ最中という時代背景も手伝って、チョッとクルマの好きな金持(成金)たちに大いに受けたのは言うまでも無い。

964ターボは91年発売時3.6ℓ、320psで、93年には360psとなる。
964は89年から94年とポルシェ911としては短命で、94年に次のモデル、993にバトンタッチする。



993ターボ(1995)

993は空冷エンジン最後のポルシェで、伝統的に立ち上がったカエルのような目玉は、ボティラインにそって寝かされ、ポルシェファンからは賛否両論だったが、同時に伝統的にナローな車幅も85mm拡大された。ある面、901からの伝統的な911は964までとも言える。
993のベースモデルは911カレラと呼ばれる3.6ℓ、272psのモデルで、翌年の95年には4WDのカレラ4も発売される。

同時にターボも発売され、同じく3.6ℓで408psを発生した。993は空冷ポルシェの最終型だから、最も完成したく空冷ポルシェとも言え、マニアの間では非常に人気が高い。しかし、993もモデルとしての寿命は短く、僅か4年で911初の水冷エンジン搭載の996にバトンタッチする。



996ターボ(2000)
初の水冷エンジンは3.6ℓ、420ps。

996は901以来数十年に渡って固執してきた空冷方式を捨てて遂に水冷となった点では、もはや911といっても全く別のクルマとも言える。さらに、ヘッドライトも伝統的な丸目を捨てて、通称涙目と言われるタイプになってしまった。
実は、996に先立って発売された全く新しいミッドエンジンスポーツであるボクスター(986)が水冷式の水平対向6気筒エンジンを搭載しており、新型911である996もボクスターとエンジンを基本的に共有(排気量は異なるが)するであろう事は、発売前から想像されたていた。

実際に996は986と多くの部品を共有しており、なんと初期型の998のライトは986と共有すしていた。流石にこれは評判が悪く、1年でマイナーチェンジされたが、911とボクスターは確実に共有部品を持つ、兄弟車であることには間違いない。

エンジンの水冷化によるメリットは、メンテナンスにおいて顕著で、今までは手に入れたとしても、とても普通の市民には維持できないとされていたポルシェが、何とか維持可能になったのだ。1998年の発売時点では2WDであるカレラ2が発売されたが、この年は空冷の993もモデルによっては併売されていた。カレラ2の新エンジンは3.4ℓ、300psで、翌99年には同じエンジンを搭載する4WDモデルのカレラ4が発売された。
4WDモデルであるカレラ4は既に964から設定されていたが、リアエンジンという限界を超えたときの挙動が並みのドライバーでは制御不能な危険を回避するという意味では、ユーザーの裾野を広げたとも言える。さらに、横滑り防止装置であるPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント・システム)の装着、ATによるイージードライブと水冷化によるメンテナンスの一般化などによって、911は益々敷居が低くなっていった。ただし、それは取り扱い上の事で、高価なことでは普通のサラリーマンは当然として、税務署にポルシェを経費として落とす事を認められない中小企業の経営者クラスでも、所有は叶わぬ夢には代わりはない。
996は1998年から2004年までの7年間生産された後、昨年、いよいよ新型の997にバトンタッチされた。

以上、駆け足で911の変遷を辿ったが、実際には上記の他に、それこそマニアがヨダレどころではない、レーシング用のべースなどが目的のハイチューンモデルが各種存在するが、この辺はまたの機会に紹介したいと思う。


カレラSの排気管は左右各2本の4本出し。
3.8ℓエンジンから355ps、400N・mを発生する。

カレラの排気管は左右各1本でディフューザーが付いている。3.6ℓエンジンは325ps、370N・mを発生する。
 

997は2004年に発表され、当初の設定はカレラ(3.6ℓ、325ps)とカレラS(3.8ℓ、355ps)という何れも2WDのモデルだった。ミッションは夫々に6速MTと5速ATが選べる。今回試乗する997は5ATのカレラSで、ベース価格が1311万円。これに、メタリック塗装、レザーインテリア、その他オプションが付いているから、総額は千数百万円也!となる。

カレラとカレラSの外観上の大きな違いは、カレラの排気管が左右各1本でディフューザーが付いているのに対して、カレラSは左右各2本の4本出しと、ホイールから除くキャリパーがカレラの黒色に対して、カレラSの赤という点だ。(勿論タイヤサイズとホイールも異なるが、これは後から取り替えられるので考えないことにする)
運転席からの最大の相違は、計器の盤面がカレラは黒地に白文字、カレラSが白地に黒文字となり、ステアリング・ホイールのデザインも異なる。


試乗したカレラS(AT)の運手席付近。基本的な雰囲気はボクスターと変わらないが、よく見ると金が掛かっている部分があり、キッチリと差別化はされている。

こちらはMT車の運転席。ブレーキとクラッチペダルは一般的な吊り下げ式。


サイドのガラスはドアを閉めると数ミリ持ち上がり、ボディに食い込んで密閉性を確保する。


リアシートのバックレストは上半分のみで、下半分はカーペットになっている。このバックレストを見てもリアは長時間の移動を考えてはいない。


ドアノブ、パワーウインドーのスイッチ、電動ミラーのスイッチ、それにライトスイッチなどはボクスターと全く同一部品を使っている。

いよいよドアを開けて乗り込むと、例によって硬い座面のシートに座り、ドアを閉めればこれまた独特の剛性感満点のズシンという音と共に車内は外界と遮断される。カレラのサイドウインドウはいわゆるサッシレスだが、ガラスはドアが閉じるとボディに数ミリ食い込む構造だから、サッシが無くとも十分な密閉性を確保できる。
室内はタイトだが、勿論狭いとは感じないし、何より憧れのカレラのドライビングシートに座っているという、夢のような現実から、欠点なんて探せるわけが無い。

ところで、リアエンジンの911は、そのメリットとして狭いながらもリアシートを持つことが、ミッドエンジンのボクスターとの大きな違いだが、さて、そのリアシートはと言えば大人が二人乗るのはチョッと無理がある。アクまで子供用と割り切るべきだが、何よりのメリットは車内に手荷物を置けることだ。このリアシートのバックレストは下半分がカーペットとなっていて、倒すとラッゲージルームとなる。二人で乗るときに、カバンやバック類を膝に置いたり、室内を諦めてトランクルームに入れないで済むのは、実用上で大きなメリットだ。

更に、室内を見回せば、ボクスターと可也雰囲気が似ているのに気が付く。特に、ドアノブや各種スイッチ類など、如何見てもボクスターと同一部品を共用しているようだ。それもその筈で997カレラと987ボクスターは部品点数で50%以上を共用していると言われている。リクライニングが電動で、前後と上下が手動というシートの調節方法もポルシェお馴染みで、これまたボクスターとも同じだ。

シートに座って正面の計器板を見れば5連のメーターが目に入る。試乗車は盤面が白で文字が黒で、これはカレラSの特徴だ。カレラの場合は盤面が黒となる。キーを差し込んでONの位置にすると、メーター下部のデジタル表示が現れて、中央左の速度計の下には、上段が積算距離、下段がトリップメーターとなっていて、試乗車の走行距離は1万キロ弱を示していたから、数ヶ月しか経過していない試乗車としては過走行気味だ。

試乗車はATだから、セレクターレバーがP位置にあることを確認してブレーキペダルを踏むが、この時ペダルは殆ど動かずに、まるで壁を踏んでいるような感覚に驚く。エンジンの音を聞きたいが為にサイドウインドを下ろしてキーを捻れば、短いクランキングの後に、行き成りヴォンッとエンジンが始動する。この瞬間、自分がポルシェカレラのエンジンを始動しのだという感動が訪れる。
アイドリングは意外とラフで、クルマ全体が多少長めの周期で揺れる。この揺れ方も独特な感覚で、それは走り出してから感じる何処から何処までもが剛性感の塊のような挙動を思い知らされる前兆でもある。
これまたボクスターで初体験した、ポルシェ独特の長いパーキングレバーをレリースして、ユックリとスロットルペダルに力を入れていくと、憧れのカレラSは静かに走り出した。


カレラSのメーターは白地の5連。真ん中が7000rpmからレッドゾーンの回転計、中央左が0〜330km/hの速度計、右が燃料と水温計。この3つはボクスターとほぼ同じだが、カレラは更に左端の水温計と、右端の油圧計が追加される。

カレラのメーターは基本的には同一だが、黒地に白文字と差別化されている。写真はATなので中央右のメーター内にシフトインジケータがある。
カレラSとはステアリングホイールのデザインが異なる。


左の速度計では目盛が細かすぎて日本の街中では事実上、使い物にならないが、中央の回転計の下部にデジタル表示されるので、全く不便はない。左の速度計の下はオドメーターとトリップメータ。勿論、切り替えることで各種デジタル表示が出来る。


Dレンジで走行中でも、即座にシフトダウン/アップが可能なステアリングスイッチ。身の程知らずの4トン車が煽ろうとした時などは指先一つでシフトダウンして、アッというまに引き離すことが出来る。
 

クルマを借用したデーラーはバイパス沿いにあるが、出口が一方通行のために一度狭い裏道を通る必要ある。この裏道で1810mmの車幅は流石に気を使うが、ATを装着した試乗車は静かにスロットルを踏むことさえすれば、普通のセダンのようにユックリと裏道を進むことが出来る。この点では以前乗ったアウディ・オールロードのように、少しスロットルを踏んだだけで飛び出すような特性に比べて、遥かに運転しやすい。

狭い裏道から左折して一般道路に出る時感じるのは、意外に小回りが効く事だ。切り込む従ってクイックになるバリアブルレシオの設定も上手くいっているのだろう。一般道で流れに乗っている分には実に普通のクルマだが、適度に聞こえるエンジンや走行音、ステアリングを始めとする各部の操作感など、全てが確実性と剛性感の塊のように感じ、その中で、このクルマを運転しているという感覚が、これこそカレラ運転しているという喜びにつながる。

一般道から片側2車線のバイパスに出る。5速ATを装着した試乗車は、通常は2速発進だから、普通に発進しているぶんには、355psもあるモンスターを運転しているという感覚は全く無い。巡航状態から少しスロットルを踏んだくらいでは、ATのキックダウンは起こらず、と言っても3.8ℓの排気量だから適度の加速で一般的な速めの流れには十分に対応できる。こんどは、前にクルマがいなくなったので、発進して10km/h程度の速度からフルスロットルでキックダウンを誘うと、一瞬のタイムラグの後に、メーター内のシフトインジケーターの赤い光がチラチラッと光った瞬間に、ATとは信じられないような背中を蹴飛ばされるようなショックと共に、クルマは加速状態に入り、遥か彼方と思っていた前車がどんどんと迫ってくる。あわててスロットルを緩めて、左のアナログ速度計をチラッと見れば、何やら針は10時の当たりまで迫っていた。
今度は、流れに乗った状態で、インジケータは3速を示している状態から、ステアリング上のスイッチの下(マイナス)側を一度押して見ると、これも多少のタイムラグの後2速にダウンされ、回転計の針は11時位置あたりを指す。この状態でスロットルを踏めば十分な加速を得られる。そこで、もう一回、ダウンスイッチを押したい衝動に駆られるが、前車の距離を考えて諦めることにする。
エンジン音は、むしろ静かな部類で、流れに沿って、スロットル開度も少ない時などは、十分静かだが、かと言って、高級乗用車の静けさではなく、少ないながらも適度のポルシェサウンドはドライバーの耳に入り、今運転しているは間違いなくポルシェであると認識されてくれる。
そして、フルスロットルを踏んだときは、これぞポルシェエンジンの真髄を聞かせるが、決してうるさくも、不快でもなく、実に心地よい。

ステアリングは中心付近の不感帯もなく、切れば切っただけの反応を示すが、ボクスターのように切った瞬間に車のノーズがピクッと反応するのに比べれば、かなりマイルドと言える。クルマの構成を考えれば、クルマの中心にエンジンを置いたボクスターに比べて、お尻に重いエンジンをぶら下げたカレラでは、幾ら数十年の熟成を経たとは言え、リアヘビーとZ軸回りの慣性モーメントの大きい事は隠せない。もちろんメーカーはそんな事は百も承知で、逆にその特性の違いを逆手にとって、カレラをグランドツアラーに仕立てたのだろう。勿論、普通の状況では弱アンダーの旋回性能は、並みのクルマに比べたら桁違いにレベルが高いから、常識では考えられない速度で、簡単に旋回してしまう事には変わりは無い。

今回の試乗コースは、何時もの手馴れた場所とは違い、普段はあまり馴染のない場所であることと、PSMが付いてるとは言え、イザとなると考えるのも恐ろしいリアエンジンの特性も考慮して、ワインディングで楽しむことは出来なかった。とは言え、マトモな神経と並みの腕前では、このクルマを一般道で限界近くに持っていく事は不可能だ。それをやりたければ、自分でカレラを購入して、毎週日曜日の早朝にでも、何処かの峠で練習する必要があるだろう。まあ、B_Otaku には、暇も金も根性も無いので、無理だが・・・・・。

乗り心地はと言えば、これがすこぶる良い。高級セダンである、BMW5シリーズと比べても勝ち目が有るといえば想像してもらえるだろうか。可変ダンパー(PASM)を標準装備したカレラSは、路面からの振動は常に完璧に吸収する。大き目の段差などを超えても、フロントは何も無かったように通過するし、リアは微かにタイヤが跳ね上がるようなショックと音を感じられるが、それも一瞬で、295/30ZR19という極太タイヤは見事に、カツッというだけで収まるのは驚異的だ。これには、市販車では比較の対象が無いほどの、ガッチガチの鬼のような剛性のボディも関係しているのだろう。どんな突き上げがあろうとも、クルマの下で、一瞬サスが動く感じが伝わるだけで、常に一発で収まるのを体験しながら、自分が今、カレラSのドライバーズシートで、本当にポルシェを操っているのだと実感する瞬間でもある。

ブレーキは此れがまた驚異的な剛性感だ。エンジンを始動する際に、ブレーキペダルに足を乗せて極端な遊びの無さを感じて、若しやと思ったのだが、実際に走行して減速するとそのフィーリングに驚かされる。まず、普通のクルマと違い遊びが殆どない。ペダルに足を乗せても、既にペダルは重く、その先は踏み込む力に比例して減速度が得られる。普通、こんなに遊びを少なくしたら、走行中にブレーキの引きずりを起し、最悪フェードしたり、加熱して火災になったりするのだが、カレラのブレーキは勿論、引きずりなどは起さない。これは、個々のブレーキコンポーネントの優秀さのみではなく、車両として、ブレーキシステムとしての設計が余程シッカリしているのと、各部品やボディの剛性や精度が、想像を絶するくらいに高いレベルで生産されているとしか考えられない。1千万を軽く超える価格は伊達ではないようだ。

と、ここまで、まさに感動の連続と、ベタ褒めのアラシとなってしまったが、冷静に考えれば、言いたいこともある。
何より言いたいのは、やはり試乗車に装着されていた5速ATミッションだ。確かにトルコンATとしての出来は最高の部類だが、残念ながら、トルコン独特のスリップがあるから、スロットルで姿勢をコンロトールしようなどと思うドライバーには、かなり使い難い。2ペダルならシーケンシャルタイプのセミオートを早急に発売してもらいたい。噂によれば、近い将来発表されるそうだから、まあ、時間の問題だろうが。
B_Otaku がカレラを注文するとしたら、間違いなくMTを選ぶ。と言っても現実には注文すること自体がありえないが・・・・。

それ以外には、大きな欠点は見当たらないし、ボクスターとの住み分けも十分に出来ている。カレラを買うような裕福な層は、ボクスターに比べて割高なんて文句は言わないし、MTで必死に走るような事は求めていないのだろう。普段はショーファーの運転するセンチュリーの白いカーテンで囲まれたリアーシートに収まっている財界人にとっては、偶に運転するのにはATでもヤットコだろうし、ハタマタ、撮影が終って高速を飛ばして自宅に帰る人気俳優(女優)にはMTなんて必要ないのだろう。

昔、911について良く言われていた、ポルシェは運転するのではなく、着るのだ。すなわちポルシェを着るという、人馬一体と言われる感覚は、現在では911よりもボクスター(987)に受け継がれたようだ。


カレラSに標準のフロント235/35ZR19タイヤと8JX19アルミホイール。Sのブレーキキャリパーは赤く塗装されている。

カレラSに標準のリア295/30ZR19タイヤと11JX19アルミホイール。

カレラに標準のフロント235/40ZR18タイヤと8JX18アルミホイール。ブレーキキャリパーは黒く塗装されている。

カレラにの標準リア265/40ZR18タイヤと10JX18アルミホイール。
 

カレラSの車両価格1311万円というのは、チョッとした郊外の中古3LDKマンションを買ってもお釣りすらきそうで、庶民は勿論、多少の小金持ちにも無縁の世界だ。同じ千数百万円でもメルセデスのSクラスなら結構街中で目に付くが、あれは中小企業の経営者が会社の経費で落として、事実上はプライベートカーにしているからこそ買える訳で、同一の価格帯とは言え、最近は税務署が経費として認めないポルシェ(当然フェラーリも)を買うのは自腹しかないから、911カレラの敷居は実際には遥かに高いことになる。
試乗車はATだったが、聞くところによれば、国内で販売される911の8割はATらしい。今や、普通の腕前でも金さえあれば911を転がすのは簡単な時代になってしまった。カレラSは、特に日本の交通事情では極端なオーバースペックだが、それは余裕ということで、高級クルーザーにとっては使わなくても備えていることに意義があるのだろう。
それでは、本当に911で運転を楽しみたい(しかも十分な資金のある)マニアはどうするのかと言えば、GT3あたりを買うらしい。また、来年発売のケイマンSあたりも良いかもしれないし、ボクスターに気に入った装備を目一杯付けるのもアリだろう。実際、ポルシェセンターの倉庫で、カレラが買えそうなくらいにオプションを満載したMTのボクスターが納車整備待ちなのを見たことがある。

廉価版のボクスターがオープンで、幾ら性能差があるといってもカレラの半値!オマケにボクスターは性能的に有利なミッドエンジンだったり、更にその中間価格帯にボクスターのクーペ版のケイマンを投入したり、世の中の常識で考えれば、こんなメチャクチャな価格体系は有り得ないが、ポルシェの経営内容はすこぶる良いようだ。こんな事が出来るのは、ポルシェしか有り得ないだろう。

最後に、このカレラSを欲しいかと聞かれたら、少なくともATはパスだし、1千万円以上の予算が有ればケイマンSのオプション満載のほうを選ぶだろう。勿論、これは個人的な感想だから、人によってはカレラのATがドンピシャかもしれない。このクラスになれば見栄や世間体は関係なく、自分で気に入った車種を買えばよい。最近のポルシェのワイドバリエーション化は、それだけ対象者が広がったという面では、ユーザーとしてはありがたいが・・・・・

オッと、その前に>>>>>資金が欲し〜いっ!!