アウディ オールロードクワトロ (2004/02/21) | ||
試乗車一覧
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オールロードはA6アバント(ワゴン)をベースにオーバーフェンダーや大径タイヤ、車高調整式のエアサスなどを備えた、言わばアウディ版のレガシィ・アウトバックと言ったところで、ボルボのXC70も同様なコンセプトのクルマだ。グレードは3種類あり、今回試乗したのは2.7Tで、車両価格699万、オプションのサンルーフを加えて720万という高価格となる。装備は3ピース鍛造のホイール(チタンボルトで結合されている)や極めて質の良い本皮シートと磨きこまれたウォルナットのトリム(勿論本物のムク)など、高級装備に溢れている。この下に高級装備を省いた2.7T SVというモデルがあり、何と100万安い599万!エンジンや駆動系、足回りに至るまで同一なので、実にお買い得だが、聞くところでは数量的には1:1で半数のユーザーは100万円高いほうを選ぶらしい。最上級モデルは4.2で、これはV8搭載で820万円也。しかし、最初にクルマの概要を説明しなければならないのが辛い!(Eや5なら説明は要らないのに) ところで、599万だの699万という値段は、どう考えても原価計算して出したとは思えないのだが・・・・。
乗りこんでシートに座ると、ライトグリーンを基調にしたツートンの内装は極めてセンスが良く、仕上げも非常に良い。よく雑誌で、アウディの内装は同クラスのMBやBMWよりも上だと書かれているが全く同感。シートの形も、硬さも、革の表面の質感など、どれをとっても文句なし。これに比べると新5シリーズはチャチい(質感がプラスチッキーだ)し、Eクラスはさらに出来が悪い(初期型は内装パネルのチリが出てなかったり、曲がっていたり、いまは少しはマシになったかな?)。 走り出して最初に感じるのは、アクセルベダルが異様に敏感と言うか、踏力が軽く最初にチョッと踏んだだけでも、グオッと飛び出す。まるで、国産車のようだ。ただし、それ以上踏んでも、そこからは大した事はない国産と違うのは、更に踏むと、踏んだだけ、グングンと加速して行く点だ。ターボ車にも係わらず、低回転からレスポンスも良く、4000回転過ぎてからの加速感は、この手のフルザイズワゴンとしては信じられないくらいに凄まじい。もちろんAMGやアルピナ、同じアウディのS6等には劣るだろうが、この価格帯としては最も良い部類だろう。SVなら同価格帯のE240や525iに比べて、動力性能は遥かに良いことになる。 操舵感はBMWのようにクイックでは無いが、正確でフィーリングも良い。何よりスゴイのはクワトロシステムによる4WDの安定性だ。1年程前に乗ったセダン(A6 2.7T)も良かったが、エアサスを装備しているオールロードは、更に乗り心地が良い。その割にはピッチングは少なく(E320より少ない)結構フラットだ。この乗り心地と抜群の直進性により、スピード感が完全に麻痺する。途中、路面の荒れた狭い道を通ったが、極力慎重に走っている(720万のクルマ擦っては、御免で済まないので)つもりでも、メーターを見ると制限速度30km/hの倍以上を指している。同じ道をボルボV70で走ったことがあるが、40km/hでは乗員が上下左右に振りまわされたし、マトモな神経では、それ以上速度を上げるのは不可能だった。 幹線道路に出たところで、前後が空いたのを見はからい、フルスロットルを踏むと、体はシートバックに押しつけられ、あっ言う間に、とても口に出せない速度に到達した。この速度では安定性も更に増し、文字どうり矢のように直進し、多分同じ道を60km/hで走るカローラより遥かに安定して、緊張感も少ないだろう。途中、多少のコーナーでは、RWDのBMWとは全く異なる、極めて安定したコーナリングも少しは体験出来た。 と、ここまではベタ誉めになってしまったが、勿論問題もある。まず気になるのは、ブレーキペダルのストロークがやたら長いこと。と言っても、先週乗ったクラウンアスリートのように剛性感がないと言う訳ではないのだけれど、とに角、ストロークが長く、ショートストロークでハイミューのBMWに慣れていると、かなり違和感がある。 さらに、安定性とスピード感の無さは、逆に言えば面白くないクルマとも言え、どちらかというと、セルシオに一脈通じるところがある。自分のクルマで帰る際に、ロードノイズもエンジン音(あえてノイズとは言わない)も大きいし、路面の突き上げもあるが、そのフラット感と運転する楽しさは、圧倒的に自分向きとも感じた訳で、これはもう本人の好み次第だろう。 最後に、このオールロード2.7Tが欲しいかと聞かれたら?はて、非常に良いクルマではあるけれど、自分のフィーリングにはチョット合わない。いづれにしても、5シリーズのツーリングが発表されるのを楽しみに待つか。 世界中のステーションワゴンの中でも、アウディ オールロードは性能と高級感でトップクラスなのは間違いない。Eクラスワゴンと、5シリーズツーリングとともに、所有する価値は十分にあるし、伊達に高価な訳では無い。このクラスのワゴンを買える人は、その幸せを十分噛み締めるべきだが・・・・・。実際のユーザーは単なる金持ちの気まぐれだったりして。 |