インドネシアへの「あさぎり型護衛艦」配備が決まった場合、中国の反発はフィリピンのケース(あぶくま型)よりもさらに「複雑で、一見すると控えめだが、裏で激しい外交圧力をかける」ものになると予想される。
フィリピンに対しては剥き出しの敵意を向ける中国だが、インドネシア相手には同じようにはいかない。これには、インドネシアが持つ独自の外交方針と、中国にとっての経済的な重要性が絡んでいるためだ。
中国の反発の度合いと、その「裏表」の動きとは‥‥
中国の反発が「複雑」になる理由
🔷表向きの批判は「日本」に集中する(新型軍国主義への批判)
中国はインドネシアを正面から激しく非難することは避ける可能性が高い。その代わり、矛先を100%日本に向けてくる。
中国外務省の定例記者会見などで、以下のようなトーンで猛烈な対日批判を展開するのがお決まりのパターンだ。
• 「日本は防衛装備移転のルールを歪め、地域の軍事化を煽っている」• 「かつての侵略の歴史を反省せず、東南アジアに武器をばら撒く『新型軍国主義』の企てだ」
インドネシアに対しては「外部の勢力(日本・米国の包囲網)に利用されないように」という、一段へりくだった形で釘を刺すに留める(=大人の対応を演じる)とみられる。
🔷インドネシアを「敵に回したくない」という本音
中国にとってインドネシアは、ASEAN(東南アジア諸国連合)のリーダーであり、巨大な市場でもある。また、ジャカルタ〜バンドン間の高速鉄道をはじめ、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の極めて重要なパートナーでもある。

もし中国がインドネシアを過度に脅迫したり、経済制裁をチラつかせたりすれば、インドネシア世論が一気に「反中・親日米」に傾いてしまう。中国としては、「あさぎり型を数隻買われたくらいで、インドネシアとの巨額の経済・外交関係をぶち壊したくない」というのが本音だ。
🔷裏では「中国製兵器の売り込み」や経済的揺さぶりをかける
表立った軍事挑発がしにくい分、中国は「裏での外交戦・経済戦」を仕掛けてくる。
インドネシアは伝統的に「全方位外交(特定の陣営に属さない)」を貫いており、プラボウォ大統領も「米国・日本とも仲良くするが、中国とも防衛協力を模索する」というスタンスを崩していない。
中国はこの隙を突き、あさぎり型の交渉が進む裏で
• 「我が国の最新鋭のミサイルやレーダーを、もっと格安(あるいは破格の融資条件)で提供できる」と持ちかける
• 経済投資の案件(ニッケル加工工場やインフラ開発など)を人質に、「安全保障でこれ以上日本や米国に深入りするな」と、水面下で強烈なプレッシャーをかける
といったアメとムチを使い分けた揺さぶりをかけてくるだろう。
現場(ナトゥナ諸島周辺)での実利的な反発
ただし、外交的に大人の対応を演じたとしても、あさぎり型が実際に配備される南シナ海(ナトゥナ諸島周辺のEEZ)の現場では、中国海警局の船が実力行使を見せるはずだ。

インドネシア海軍があさぎり型を配備してパトロールを強化すれば、中国側もあえて大型の海警船をその海域に居座らせ、「お前たちが日本から巡洋艦級の船を導入しようが、我が国の海洋権益(九段線)の主張は1ミリも変わらない」という姿勢を誇示(デモンストレーション)してくる。


船体サイズが大きく、ヘリコプターも積めるあさぎり型は、中国海警局にとっても「無視できない煙たい存在」になるため、洋上での緊張感は一時的に高まることになる。
総括:中国の反発度
• 対日本: 激しい(公式な非難、メディアを使った世論戦)
• 対インドネシア: 慎重(表向きは静か、水面下での経済・外交圧力は超強力)
中国にとって、フィリピンへの輸出は「不愉快極まりない敵対行為」だが、インドネシアへの輸出は「自国の影響力(経済の紐)でどこまで引き戻せるかの、ヒリヒリするような外交ゲーム」と捉えていると言える。