このレベルの法的なデメリット(偽証罪の不適用や裁判への影響、社会的制裁による量刑への配慮など)を緻密に計算し、与野党の合意を裏でコントロールするような立ち回りは、一議員、それも政調や国対(国会対策委員会)のトップではない筆頭理事の個人プレーだけで主導するのは現実的に極めて困難だ、という見方は永田町や政治解説の間でも極めて自然な推測とされる。
特定の「誰が黒幕か」という個人名が公式に表に出ることは稀だが、国会の委員会運営や議事整理の裏側を考えると、以下のような「組織的な意思決定のメカニズム」と「糸を引くキーパーソン」の存在が浮かび上るという。
1.司令塔としての「国会対策委員会(国対)」
国会におけるあらゆる委員会のバッティング、参考人招致、法案提出のタイミングを裏で一手にコントロールしているのが、党の国会対策委員会(国対)だ。
• 役割:国対は、野党との水面下の交渉(国対委員長会談など)を行い、どの法案を通し、どの参考人を呼ぶ(または潰す)かのグランドデザインを描く「与党の司令塔」といえる。
• 今井氏との関係:委員会独自の動きに見えても、実質的には国対の幹部(国対委員長や国対副委員長など)からの「今回は参考人招致を見送る方向で話をまとめろ」「こういう理屈で野党を説得しろ」という具体的な指示(差配)が、筆頭理事である今井氏に下りていたと考えるのが最も自然だ。今井氏はその指示を実行する「現場責任者」として動いていた可能性が高い。
2.官邸・法務官僚(内閣法制局など)の知恵
「裁判への影響」や「社会的制裁による量刑の減刑リスク」という論点は、多分に高度な刑事訴訟法や司法実務の知識に基づいている。これを政治家がゼロから思いつくのは難しく、通常は法務省の官僚や内閣法制局、あるいは官邸の参事官(法曹資格を持つ出向組)などが関与しているケースが定番だ。
• シナリオ:「国会で中途半端に突っついて会議録に残ると、のちの刑事裁判や民事裁判で検察側が不利になる(あるいは被告側に有利な弁護材料を与えてしまう)」という危機感を抱いた法務・警察ルート、あるいは官邸サイドが、自民党国対幹部に「参考人招致は司法の観点から非常にリスクが高い。見送るように」と進言・ブリーフィング(事前説明)を行ったという構図だ。
3.沖縄・北方問題を取り仕切る「党内重鎮・閣僚」
沖縄の基地問題や周辺の反対運動を巡る国会対応は、政府・自民党にとっても極めてセンシティブで、一歩間違えれば、地元の世論をさらに刺激したり、法廷闘争に悪影響を及ぼしたりするため、委員会独自の判断は許されず、沖縄北方担当大臣や、党内の沖縄対策本部の重鎮、さらには内閣官房長官といったトップマネジメント層の意向が働く。
結論として誰が動かしているのか
特定の「一人のフィクサー」がいるというよりは、「① 法務官僚・官邸がリーガルリスクを察知」→「② 自民党国対幹部(国対委員長ら)へ方針を伝達」→「③ 現場の筆頭理事(今井氏)へ指示が下り、野党との調整が行われた」という、政権の防衛システムが組織的に機能した結果と見るのが最も実態に近いと考えられる。
今井氏自身は、党や官邸の決定した「裁判への悪影響を避ける」という大方針に沿って、前線の交渉役(盾)として動かされていた(あるいはその役割を忠実に演じた)とみるのが、国会運営のセオリーから見ても合致する構造だ。