ホルムズ海峡における英仏主導の多国籍任務に対し、日本が自衛隊を派遣、あるいは何らかの形で協力する可能性を検討する場合、国内の法的枠組み(自衛隊法や安全保障関連法)と、イランとの伝統的な友好関係などの外交的配慮の双方が極めて高いハードルとなる。
日本が関与を検討する際の具体的な法的選択肢、実効的な可能性、そして直面する課題について検討した。
🔷想定される法的枠組みと限界
自衛隊を海外に派遣、あるいは他国軍を後方支援する際には、事態の性質(戦闘が継続しているか、終結しているか)や、日本への影響度に応じて以下の法的根拠が検討される。
① 海賊対処法に基づく「海賊対処行動」
過去にソマリア沖・アデン湾で適用された実績がある。
• 可能性:極めて低い
• 法的限界::賊対処法が定義する「海賊」とは、私的な利益のために行われる暴力的行為(民間武装グループなど)を指す。今回のようにイランという「国家(またはその正規軍・革命防衛隊)」による臨検や拿捕、攻撃は国家主権に基づく行為(またはその延長)とみなされるため、同法の対象外となる。
② 自衛隊法第84条の4「在外邦人等の輸送」
危険にさらされている日本国民を退避させるための枠組。
• 可能性:限定的(一時的な措置)
• 法的限界:日本人乗組員が乗船する商船の救援などに適用できる可能性はあるが、これはあくまで「輸送・退避」が目的で、英仏主導の多国籍任務のように、長期間にわたって海域にとどまり、商船全般を日常的に「護衛(防衛)」する任務の根拠にはできない。
③ 自衛隊法第82条「海上警備行動」
日本に関係のある船舶の安全を確保するため、防衛大臣の命令で実施される行動で、2020年から中東地域(オマーン湾やアラビア海北部など)に派遣された自衛隊(護衛艦・P-3C哨戒機)も、この「調査・研究」目的から必要に応じて海上警備行動へ切り替える想定だった。
• 可能性:日本独自の活動としてなら有り得る(多国籍軍への組み込みは不可)
• 法的限界:
◦ 防衛対象の制限:護衛できるのは「日本籍船」や「日本人が乗船する外国籍船」「日本の運航会社が使う外国籍船」など、日本に直接関係のある船舶に限られる。多国籍任務のように、他国の商船を無差別に護衛することはできない。
◦ 武器使用の制限:武器の使用は、正当防衛または緊急避難の範囲(警察比例の原則)に厳格に制限される。他国軍や他国商船が攻撃されているのを見つけても、自衛隊が身代わりとなって反撃するような武力行使は認められない。
④ 重要影響事態法・国際平和共同対処法(安保法制)
米軍や多国籍軍への「後方支援(補給や輸送など)」を行うための枠組みとなる。
• 可能性:法理上は議論されるが、ハードルは最高水準
• 法的限界:
◦ 重要影響事態:「放置すれば日本への直接の武力攻撃に至るおそれがある事態」と認定する必要がある。海峡封鎖による経済的打撃(原油途絶など)だけでは、この「武力攻撃に至るおそれ」という要件を満たすのは極めて困難という見方が多い。
◦ 国際平和共同対処法:国際社会の平和と安全を脅かす事態に対し、「国連決議」がある場合などに他国軍を後方支援できる。もし今回の英仏主導の任務が国連決議に基づかない有志連合の性質が強い場合、この法律の適用はでない。また、戦闘行為が行われている現場(実施区域)での支援は法律上禁止されている。
🔷日本がとり得る現実的な関与のシナリオ
法的制約を踏まえると、自衛隊が英仏の「艦隊」の一部として完全に組み込まれ、一体となって警備を行う可能性は極めて低いと言える。現実的には以下の2つのシナリオが限界とされている。
【シナリオA:自主派遣の継続・延長】
中東(オマーン湾等)の情報収集・調査研究枠組みを維持・強化
⇒ 英仏の多国籍任務とは「情報共有」の連携に留め、一線を画す。
【シナリオB:非軍事分野・資金面での貢献】
自衛隊の直接派遣は見送り
⇒ 停戦後の機雷除去費用への資金拠出、または周辺国への湾岸警備支援。
・「情報共有」での連携(現実的路線):自衛隊法上の「調査・研究」目的、あるいは日本独自のアセット(資産)として護衛艦をペルシャ湾外(オマーン湾など)に配備し、そこで得た不審船情報を英仏の司令部と共有する手法で、これであれば、他国軍との武力行使の一体化を避けつつ、国際的な任務に貢献している姿勢を示すことができる。
🔷外交上のジレンマ:対イラン関係
日本が慎重にならざるを得ない最大の理由は、イランとの伝統的な友好関係を主張する勢力が、左派のみならず自民党内にも存在する事だ。
実際には現在イランからの原油輸入はされていないが、これをあたかもイランとの関係が悪くなると原油輸入とだえるようなフェイクニュースが氾濫しているが、このマスコミを含めた左派の動きは、イランへの自衛隊派遣を阻止する大きな勢力となっている。
結局根本的な解決は憲法改正しかないのだが、すぐには間に合わず、ではどういう解釈で乗り切るか、この辺は政府の実力が問われるところだ。