日本ではAI時代に対応すべく、大学の理系シフトや文理融合化などが進んでいるが、韓国ではどうなのだろうか。
実は韓国における「文系から理系へのシフト」は、日本よりもはるかに激烈かつシビアなスピードで進行しているのだった。
韓国では「文系を選ぶことは就職浪人を意味する」という意味の「文科(ムンカ)だから申し訳ありません(文送します:ムンソンハムニダ)」という自虐的な流行語が定着して久しく、現在の状況はそこからさらに一歩進んでいる。
1.韓国の大学入試:すでに「理系一択」へ完全移行
結論から言うと、韓国の大学受験における人気は完全に理系へと移行しており、文系は深刻な地盤沈下に直面している。
最上位層の受験生(日本でいう東大・京大や医学部を狙う層)の動向を見ると、その傾向は顕著だ。
• 「医・歯・薬・韓医」への超集中:
最優秀層の受験生は、文系・理系を問わず、まずは医学部、歯学部、薬学部、そして韓国の伝統医学である「韓医学部」を目指す。
• 財閥直結の「就職保障型」超人気学科:
仮に医学部に行かなくとも、ソウル大・高麗大・延世大(いわゆるSKY)などのトップ大学に新設された「契約学科」に人気が集中している。これは、サムスン電子やSKハイニックス、現代自動車などの超大企業が大学と提携し、「卒業後の入社を100%保障」して授業料も全額免除するシステムで、これらはすべて半導体、AI、次世代モビリティなどの理系学科だ。
• 文系の空洞化:
かつてはエリートの登竜門だった「法学(現在はロースクール化)」や「経営学・経済学」といったトップ大学の文系学科ですら、上記の理系学科に合格した受験生に辞退され、定員割れや追加合格を繰り返す事態が起きている。
2.韓国における「データサイエンス・文理融合」の現状
日本で近年、データサイエンス学部や文理融合を掲げる新学部(一橋大学のソーシャル・データサイエンス学部など)が急増しているのと同様、韓国でも「融合学科」の開設ブームが起きている。
しかし、その中身と学生たちの捉え方は日本よりも「リアルで冷徹」だ。
• 名ばかりの文理融合ではなく「ガチの理系化」:
韓国でも、人文・社会科学にAIやデータ分析を掛け合わせる「デジタル人文学」や「人工知能融合学科」などが多数作られた。しかし、学生たちの認識は「文系科目をブレンドした学科」ではなく、「文系出身者が生き残るために、必死でプログラミングや統計学(理系スキル)を身につけるための駆け込み寺」となっている。
• 「文系」の看板があると就職できない現実:
大企業の採用枠が「開発・技術職」に偏っているため、純粋な文理融合(半分ずつ学ぶ)では中途半端になり、就職競争で勝てない。そのため、文理融合学科に入った学生も、実質的には理系のカリキュラム(データ構造、機械学習、数理統計)に完全に軸足を移して勉強している。
3.政府による大学への「理系シフト」指導
日本政府(文部科学省)も基金を創設して大学の理系転換(データサイエンスやグリーン分野への改組)を財政支援しているが、韓国政府(教育省)の指導・介入は日本の比ではないほど直接的で、かつダイナミック(強硬)だ。
① 「産業連動型の定員調整(PRIME事業)」の強烈なインパクト
韓国政府は2010年代半ばから、「PRIME(Program for Industrial needs-Matched Education)事業」という巨大な国家プロジェクトを推進してきた。これは、社会の需要(理系)と大学の定員(文系過多)のギャップを埋めるため、「文系学科の定員を減らし、理系学科の定員を増やした大学に、巨額の政府補助金(年間数百億ウォン規模)を出す」という政策だ。
これにより、多くの私立大学が生き残りをかけて文学部や哲学者、芸術系などの定員を強制的に削減し、強引にコンピューター工学やロボット工学の定員を増やした。
② 半導体・AI人材の「定員規制緩和」
首都圏(ソウル近郊)への一極集中を防ぐため、韓国の大学には長年「首都圏の大学の総定員を増やしてはならない」という厳しい首都圏整備法の規制があた。
しかし、尹錫悦政権以降、政府は「国家の生き残りのために半導体やAIの人材が圧倒的に足りない」として、トップ大学の半導体・先端IT系学科に限って定員の増員を特例で認めた。 政府が自ら作った規制を曲げてまで、大学を理系(特に半導体)シフトさせている。
③ 「医学部定員の大幅増員」という最終手段
2024年から2026年にかけて韓国社会の最大の激震となっているのが、政府による医学部定員の2,000人増員方針で、医師会の猛烈なストライキなどの混乱が続いているが、これも「超高齢化社会と地方医療の崩壊、バイオ・ヘルスケア産業の育成には理系最高峰の人材(医師)の絶対数が必要」という政府の超強硬な姿勢の表れだ。
結論
日韓を比較すると、以下のような決定的な違いがある。

韓国の大学事情は、「ハイテク製造業とITでしか外貨を稼げない貿易立国」としての宿命が、そのまま入試制度や学部編成の歪みとなって、日本以上に剥き出しの形で現れていると言える。