韓国はナフサの生産量が多い事で知られているが、一番の得意先の中国が自国生産に切り替え、しかもイラン戦争で原料となる原油の輸入にも支障をきたしている。ところが東南アジアではナフサを輸入して医療用樹脂製品を生産するのにナフサ不足という事で、これこそ高市首相の提唱するパワーアジア構想にピッタリと思える。
韓国のナフサ需給の歪みと東南アジアの樹脂不足、そして中東情勢の緊張(イラン戦争にともなうホルムズ海峡封鎖リスク)という現在のパズルを俯瞰すると、高市政権が4月に打ち出した「パワー・アジア(POWERR Asia)」構想の目的に極めて合致する。
この構想は、まさに中東情勢緊迫化によるエネルギー不安や信用力不足に直面するアジア諸国に対し、総額100億ドル(約1.6兆円)規模の金融支援などを行い、域内のサプライチェーンを強靱化(レジリエンス強化)することを狙いとしている。
では、この「韓国の余剰ナフサを、東南アジアの医療用樹脂生産へ融通する」という具体策が、パワー・アジアの枠組みで実際に実現可能なのか‥‥。
1.政治的・枠組みとしての実現可能性:◎(極めて高い)
このスキームは、外交・安全保障の観点から日本政府(高市政権)にとって願ってもないモデルケースになる。
• 日韓のエネルギー協力体制の強化:5月に行われた高市首相と韓国の李在明大統領による首脳会談では、まさにこの「パワー・アジア」の枠組みの下で、原油や石油製品、LNGの相互融通や石油備蓄を含むエネルギー供給の安定化、さらには「産業・通商政策対話」の新設に合意したばかりだ。韓国をこの構想に巻き込む下地はすでに完成している。
• 対中依存からの脱却とASEAN支援:最大の顧客だった中国がナフサの内製化(自国生産)へシフトしたことで、韓国の石油化学業界は構造的な販路喪失に苦しんでいる。これをパワー・アジアの金融・外交支援によって東南アジア(ASEAN)へ方向転換させることは、中国依存を減らしつつ同志国の絆を強めるという、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)の戦略に完全に合致 joint する。
2.経済・金融面での実現可能性:◯(パワー・アジアが機能する核心)
一見すると、「イラン戦争で原油が入らない韓国が、どうやって東南アジアにナフサを出すのか?」という矛盾が生じるように思えるが、ここにパワー・アジアの資金力が活きてくる。
• 調達リスクの分散と信用補完:韓国の石化学企業が苦しんでいるのは、中東依存度の高さと、原油価格高騰に伴う調達資金(信用力)の圧迫で、パワー・アジアによる100億ドル規模の金融支援枠を活用すれば、韓国企業が中東以外の地域(アメリカ、西アフリカ、あるいは日豪のルートなど)から代替原油やコンデンセート(軽質原油)を調達する際の資金調達(信用補完)をバックアップできる。
• 東南アジアの「医療樹脂不足」という大義名分:東南アジア側でも原油高でナフサの輸入が滞り、人道・医療に関わる重要な樹脂製品の生産が止まることは地域全体の安全保障リスクで、日本が資金の潤滑油となり、韓国の余剰ナフサをASEANの防護服や注射器などの医療ローカル生産の現場へ流す大義名分は十分に立つ。
3.技術的・ロジスティクス面の課題:△(最大のハードル)
最も現実的な障壁となるのが、「物流(ロジスティクス)」と「製品のミスマッチ」だ。
• シーレーンの物理的遮断と輸送コスト:いくら資金調達を支援しても、ホルムズ海峡の封鎖や周辺海域の緊張により、物理的にタンカーが動かせない、あるいは保険料が跳ね上がるという問題は残る。韓国のナフサを東南アジアへ運ぶ航路(南シナ海など)の安全確保が前提となる。
• ナフサの「質」の適合性:ナフサと一言で言っても、エチレンなどの基礎化学品を作るための「軽質ナフサ」と、芳香族(ベンゼン・トルエン等)を作る「重質ナフサ」がある。韓国が得意とする(そして中国向けに余っている)ナフサの成分構成が、東南アジアの医療用樹脂(ポリプロピレンやポリエチレン、あるいは特殊な塩ビなど)の原料としてすぐにそのまま転用・適合できるかという、技術的なマッチングの精査が必要だ。
結論として、「実現は十分に可能であり、まさにやるべき政策」と言える。
技術的なマッチングや代替原油ルートの確保という実務的ハードルはあるものの、「中国に販路を断たれた韓国の石化産業」と「原料不足に悩むASEANの医療福祉」を、日本の「パワー・アジア」の資金力と外交力で仲介するという構図は、安全保障・経済・人道すべての面で満点の外交カードになる。新設された日韓の「産業・通商政策対話」で、こうした具体的な物資の融通案がどこまで実務レベルに落とし込めるかが、今後の試金石となるだろう。
とはいうものの、非韓三原則に反するし‥‥
そもそも、韓国を信用して大丈夫か?