最近ニュースで大きく取り上げられている次期大統領専用機の暫定機(通称「VC-25B Bridge(ブリッジ)」)は、。トランプ大統領が初搭乗した直後から、その安全性や導入経緯をめぐって米国内で激しい論争が巻き起こっている。
この機体がなぜ「暫定機」という位置づけなのか、そしてカタールからの寄贈理由やセキュリティ上の懸念について整理する。

1.なぜ「暫定機」なのか?
この機体が暫定(ブリッジ=橋渡し)機と呼ばれる理由は、「本命の遅延」と「現行機の限界」が同時に重なったためだ。
• 正式な次期機の深刻な遅れ: 米空軍はもともと、ボーイング社が開発を進める新しい大統領専用機「VC-25B」を2024年頃に導入する予定だった。しかし、改修作業の大幅な遅れにより、引き渡しは2028年半ばまでずれ込む見通しとなっている。
• 現行機(VC-25A)の老朽化: 一方で、現在使われているVC-25Aは導入から35年以上が経過しており、メンテナンス期間が長期化していた。さらに2026年1月には、トランプ氏を乗せて離陸した直後に電気系統の不具合を起こして基地に引き返すなど、運用の信頼性が限界に達していた。
この「2028年まで現行機が持たない」という危機的状況を乗り切るため、米空軍は2025年に急遽タスクフォースを立ち上げ、正式な機体が完成するまでの「つなぎ」として今回の暫定機を急ピッチで仕上げたのだった。
2.カタールから寄贈された理由と背景
暫定機のベースとなったボーイング747-8型機は、2025年5月ごろにカタール王室から「無償の贈り物」として提供されたものだ。
• なぜこの機体だったのか: この機体はもともとカタール政府専用機(VIP仕様)として運用されていたため、大統領専用機に不可欠な高級な内装や基礎的な設備があらかじめ整っていた。ゼロから大統領機を作るよりも、短期間で改造できる「極上の箱」として米空軍にとって好都合だったという実務的な理由がある。
• なぜ寄贈されたのか(物議を醸す背景): カタール側としては、トランプ大統領との良好な関係維持や外交的な思惑があったとみられる。しかし、約4億ドル(約650億円相当)という前例のない超高額な外国政府からの贈り物は、「安全保障上のリスク」や「外国からの影響力」という観点から、米国内の倫理専門家や議員の間で大きな批判と懸念を呼んだ。なお、退役後は政府の資産ではなく「トランプ大統領図書館」に移管され、個人利用されるのではないかという疑惑も報じられている。
4.指摘されているセキュリティの問題点
最も深刻視されているのが、この機体の「防御能力の不足」で、米メディア(ニューヨーク・タイムズなど)や防衛専門家から、以下の点が具体的に指摘されている。
• 改修期間の圧倒的な短さ: 通常、大統領専用機(空飛ぶホワイトハウス)としてのセキュリティ基準(ミサイル防御システム、電子戦能力、核爆発時の電磁パルス(EMP)対策、高度な暗号化通信など)を満たすには、3〜4年の改修期間が必要となる。しかし今回は、トランプ氏の「早く新しい機体に乗りたい」という強い意向もあり、専門業者のL3ハリス社によってわずか10か月という異例の短期間で改修が終えられた。
• 防衛システムの欠如: 期間が短すぎたため、従来のエアフォースワン(VC-25A)が備えているレベルの高度な軍用防衛システムが「すべては搭載されていない」とされている。そのため、実戦的な空中指揮所としての能力やセキュリティレベルが不十分なままだと批判されている。
• 実運用でのトラブル: 実際、7月上旬にトランプ氏がNATO首脳会議に出席するためトルコを訪問した際、往路はこの暫定機を使ったが、防衛体制の不備を懸念した安全保障当局やシークレットサービス(大統領警護隊)の要請により、復路は急遽従来のエアフォースワンに乗り換えるという事態が発生した。
また、安全確保のために飛行経路の変更を余儀なくされるなど、運用面での脆弱性が露呈している。 野党・民主党などはこの検証不足を厳しく追及しており、「大統領の安全を政治的・個人的な理由で危険にさらしている」として、今後も議論が尾を引きそうな状況となっている。
以上の内容を図にまとめると‥‥
