「全職児女(ぜんしょくじじょ)」とは、近年の中国で若者の間に広がっている社会現象で、英語では「Full-time Children(フルタイム・チルドレン)」や「専業の子供」などと訳されている。
一言で言えば、「定職に就かず、実家で親の家事や介護、雑務をこなす『労働』の対価として、親から給料(生活費やお小遣い)をもらって暮らす若者たち」のことだ。
単なる「引きこもり」や「ニート」とは少し異なり、一種の雇用関係のような割り切りや、一時的なキャリアの避難所としての側面を持っている。
主な特徴と「ニート」との違い
• 「労働」と「対価」の成立 ただ親に依存するのではなく、朝食の準備、部屋の掃除、日用品の買い物、高齢の祖父母の看病、親の送り迎えなどを「業務」としてこなしている。親側も「他人の家政婦を雇うより、信頼できる我が子に任せてお金を払う方がいい」と納得しているケースが多い。
• 期限付きの「準備期間」であることも多い:完全に就職を諦めたわけではなく、競争が激しい「公務員試験」や「大学院受験」のための勉強時間を確保するために、一時的にこの形態をとる若者も少なくない。
なぜ「全職児女」が増えているのか?
背景には、現在の中国の若者が直面している過酷な社会・経済状況がある。
🔷深刻な就職難と学歴のインフレ
大学を卒業しても希望する職に就けない若者が溢れている。経済の減速に加え、高学歴化(大卒者の急増)が進んだことで、せっかく努力して大学を出ても「条件に合う仕事がない」というミスマッチが起きている。
🔷労働環境への疲弊(「内巻」と「996」)
中国のビジネス界、特にIT業界などで悪名高い「996労働制」(朝9時から夜9時まで、週6日働く)に代表される、過酷な競争(内巻:ネイジュアン)に心身ともに疲れ果て、「そこまでして働く意味があるのか」と疑問を持つ若者が増えている。
🔷親世代の経済的余裕
現在の20代の親世代(50〜60代)は、中国の経済成長期の恩恵を受け、持ち家や十分な年金、貯蓄を持っているケースが多いため、子供を経済的に養う余力がる。
社会的な受け止められ方:中国国内では、「親孝行の新しい形」「厳しい社会からの一時避難として合理的」と肯定的に捉える声がある一方で、「結局は親のスネをかじっているだけ」「根本的な就職問題の解決になっていない」という批判的な視点もあり、議論が続いています。かつて流行した「躺平(タンピン、寝そべり族:過酷な競争や住宅価格の高騰に直面した中国の若者の間で広まる、あえて成功や消費を求めず最低限の生活で満足する生き方)」がさらに一歩進み、家族を巻き込んだ形で定着した現象と言える。