LUUPの死亡事故を報道した「乗りものニュース」は記者クラブに入っていないが


電動キックボード「LUUP」の死亡事故をいち早く詳細に報じた『乗りものニュース』(中島みなみ記者による署名記事など)が、記者クラブに所属していないにもかかわらず、なぜ正確な一次情報を掴めたのかという点は、ネット上やメディア関係者の間でも非常に注目された。

直前の警察OB天下り発表や、大手メディアの初動の鈍さといった不自然な状況があった事から、現場警察官によるリーク(告発)」を想像する声が上がるのも当然だ。

実際の情報ルートについては明確な証拠はないが、ジャーナリズムの観点や現場の状況から、主に以下の3つの可能性が指摘されている。

1.現場警察官による「義憤」や不満からの情報提供
まさに「上層部への反感や現場の危機感」に起因するルートで、 現場の交通捜査員や管轄署(今回は現場近くの王子署)の人間からすれば、電動キックボードのルール無視や危険な走行、それに伴う事故処理の負担は日々の頭痛の種となっている。それにもかかわらず、「上層部の天下りや利権絡みで規制緩和が進み、事故の扱いまで慎重(実質的な隠蔽・忖度)にされているのではないか」という不満や義憤を抱く現場の人間がいても不思議ではない。

記者クラブという公式ルートが機能しない(あるいはあえて機能させていない)状況下で、新産業の闇や交通安全の危機を訴えたい現場の人間が、交通問題に強い外部の専門記者に直接情報を流したというストーリーは、十分に現実味を持って語られている。

2.記者個人の「独自の人脈」と取材力
『乗りものニュース』でこの記事を執筆した中島みなみ記者は、長年にわたり自動車行政、ITS(高度道路交通システム)、交通事故、警察の動向などを専門に追い続けているベテランのジャーナリストだ。

• 記者クラブ外からのアプローチ: 記者クラブに所属していなくても、長年の専門取材を通じて警察幹部、官僚、事故調査の専門家、あるいは地方組織に独自の太いパイプ(人脈)を築いているジャーナリストは存在する。

• 現場での直接取材: 記事を見ると、現場の交差点(王子3丁目交差点)の構造や、周囲の道路標識、さらには事故車両の動きの矛盾点まで、地上や地図を交えて非常に緻密に検証されている。公式発表を待つだけでなく、現場に急行して目撃者を探す、あるいは事故処理の様子を直接取材するといった「足で稼ぐ」取材によって、警察が隠していた(あるいは公表していなかった)ディテールを掴んだ可能性は極めて高い。

3.当事者・関係者(目撃者やレッカー業者など)からの端緒
警察以外のルートから事故を察知し、そこから警察に裏付け(事実確認)を取ったというパターンで、大きめの交差点で発生した死亡事故であれば、当然多くの目撃者がいる。また、事故車両を撤去するレッカー業者や、救急搬送の現場に居合わせた人々から「緑色の目立つキックボード(LUUP)が事故を起こして人が亡くなった」という情報がSNSや特定の情報筋を通じて記者に伝わることはよくある。

こうした確実な端緒(きっかけ)を掴んだ記者が、警察に対して「北区の交差点で特定小型原付の死亡事故があったはずだが、事実はどうなのか」とピンポイントで確認を迫れば、警察側も虚偽の答弁はできないため、事実を認めざるを得なくなる。

いずれにせよ、今回のケースは「記者クラブが機能せず、大手マスコミが沈黙または一般名詞(特定小型原付)でお茶を濁していた」中で、専門メディアと独自の人脈・取材力が、隠されかけた不都合な真実をこじ開けた好例と言える。こうした動きが呼び水となり、最終的に運営会社の公表や大手マスコミの追随報道へと繋がっていったのだった。

今の時代は、隠そうとしてもSNSなどであっという間に拡散されてしまう。この時代の変化を認識出来ていない官僚やオールドメディアは、今後増々痛い目にあうだろう。