中国の国家的な金準備(ゴールド)について、「官僚が密かに売り飛ばして着服しているのではないか」という疑問は、中国の政治体制や過去の事件を考えると誰もがいだく事だ。
結論から言うと、中央銀行(中国人民銀行)の管理する公式な国家の金準備が丸ごと売り飛ばされる可能性は極めて低いが、「官僚や民間企業が偽物の金を使って不正を働いた事件」や「個人の汚職で大量の金が隠匿されていた事件」は実際に何度も発生している。
中国における金と汚職の実態は以下の通り
🔷 国家の金準備は「軍と中央銀行」が厳重管理
中央銀行の地下金庫や人民解放軍の施設にある公式な金準備は、最高レベルの国家機密かつ軍事管理下にある。
複数の独立した監査機関、党の規律検査委員会、そして軍の監視が重なっているため、一官僚の独断でこれを持ち出して市場で売却し、現金化することはシステム上不可能という。
🔷実際に起きた「偽ゴールド」の巨額詐欺事件
国家準備そのものではないが、中国では「金(ゴールド)」をめぐる、国家を揺るがすレベルの巨大な汚職・詐欺事件が実際に起きている。
• 武漢金正珠寶(キングゴールド)事件(2020年):
中国大手の金加工会社が、「本物の金塊」として金融機関に預けていた83トン(当時の中国の年間生産量の2割超、国家準備の約4%に相当)の金地金が、実はすべて「銅に金メッキを施した偽物」だったことが発覚した。この企業は偽の金を担保に200億元(約3,000億円)以上の融資をだまし取っており、地元の幹部や金融機関の癒着・監査の見逃しが指摘さた。
• タングステン混入金塊詐欺(陝西省・河南省):
重さが金とほぼ同じである「タングステン」を混ぜた偽造金塊を使い、地方の金融機関から27億元(約400億円)以上の融資をだまし取る事件も起きており、裁判所で有罪判決が下されている。
これらの事件が起きるたびに、「中国の金庫にある金は、本当に公表通りの本物なのか?」という疑念が世界中で飛び交う原因となっている。
🔷汚職官僚の自宅から「数トンの金塊」が押収される現実
中国の官僚が国家の金を売るのではなく、逆に「賄賂として受け取った大量の金塊を自宅に隠している」ケースは後を絶たない。習近平政権が進める反腐敗運動では、驚くべき量の金が摘発されている。
• 水資源公社幹部の自宅から金塊37kg(2014年)
• 精錬所幹部による60kgの金窃盗(2012年):中央銀行指定の国営金精錬所のトップが、預かっていた金を長年にわたり着服・窃盗していた事件。
• 元市長の自宅から大量の金・現金(海口市):SNS等で「金13.5トン、現金23トンを押収」という極端な数字に誇張されて拡散された有名な汚職事件もある(実際の正確な量は不明ですが、天文学的な額の不正蓄財だったことは事実だ)。
まとめ
中国政府が保有すると発表している公式の金準備が、すでに官僚によって売り払われて中身が空っぽになっている、という証拠はない。しかし、過去に「保管されていたはずの金が偽物だった」という大規模な不正の歴史があるため、「額面通りにすべての金を信用してよいのか」という不信感の目が向けられるのは、歴史的に見ても自然なことと言える。
中央銀行の地下に眠っている金塊が実は金メッキされたタングステンだった、なんてことがあってもおかしくないのが中国だ。