オマーンがイランのホルムズ海峡共同管理には乗らない事で焦る革命防衛隊


イランはホルムズ海峡の「共同管理」を持ちかけ、北岸のイランと南岸のオマーンによる支配体制(実質的な通行料・サービス料の徴収など)を敷こうとしているのに対し、オマーンが慎重に距離を置いている一連の流れは、「イラン側の囲い込み」と「オマーンの伝統的な中立外交」のせめぎ合いと言える。

この外交の動きとオマーン側が誘いに乗らない背景は‥‥

🔷イラン側の狙い:「米国の排除」と「共同管理の既成事実化」
米イ暫定合意(イスラマバード覚書)の後、イラン(アラーグチー外相ら)は2026年6月23日にオマーンを急遽訪問し、首脳会談を行った。

• 共同管理の提案: イランは、ホルムズ海峡の将来的な航行管理や海上サービス、それに伴う経費(通航税やサービス料)を両国で規定し、管理する枠組みを提案。

• 米国の完全排除: イランの狙いは、海峡の管理を「沿岸国(イランとオマーン)の主権のみ」に基づくものとし、米軍や国際社会の関与を完全に締め出すことにある。

🔷表向きの「共同声明」とオマーンの温度差
会談後に発表された共同声明では、一見すると協調しているように見えるが、オマーン側の強い意向によってイランの独走を阻む「釘」がいくつも刺されている。

• 「国際法」と「航行の自由」の強調: オマーンは声明の中で、あくまで「関連する国際法の規定に従うこと」「安全で国際的な船舶航行に開放された海上交通路として保持すること」を強く主張した。イランが求めるような、独自のルート制限や一方的な通行料徴収には同意していない。

• 「すべての当事者との協議」を条件化: イランとの二国間だけで勝手にルールを決めるのではなく、他の湾岸諸国(GCC加盟国)や「関係するあらゆる当事者(国際社会・米国など)」との協議を前提とする合同作業班の設置に留め、決定を先送りにした。

🔷なぜオマーンはイランの誘いに乗らないのか?
オマーンがイランの主導する共同管理(という名の支配権確立)に乗らないのには、決定的な理由がある。

① 「中東の平和の仲介者」としての立場
オマーンは長年、西側諸国(米英など)や湾岸アラブ諸国(サウジアラビア、UAEなど)と良好な関係を保ちつつ、イランとも太いパイプを持つ「中立的な調停国」として機能してきた。イラン側に完全に肩入れして海峡の利権を握ろうとすれば、これまでの外交的信用や、西側・GCC(湾岸協力会議)の同盟国としての確固たる立場を失ってしまう。

② 「航行の自由」という国際法秩序の維持
オマーンはホルムズ海峡の主要な当事国だが、国連海洋法条約に基づく「航行の自由」を守ることが、自国および世界経済の安定に不可欠であることを深く理解している。イランが主張するような独自の「未承認ルート排除」や臨検体制に加担すれば、国際社会からの猛反発を受けるリスクが確実だ。

③ 革命防衛隊の「暴走」への警戒
オマーンが外交的な対話を続けていた最中の6月25日、イラン革命防衛隊がオマーン沖(ダヒト沖)でシンガポール貨物船をドローンで攻撃する事件を起こした。オマーン側が平和的な国際航路として提示していたルート上での暴挙であり、「政府(外務省)が交渉している裏で、軍(革命防衛隊)が実力行使に走る」というイランの不安定さに対し、オマーン側はより警戒を強める結果となっている。

今後の見通し: イランは今後も「オマーンとの協議継続」をアピールして海峡管理の正当性を主張しようとするが、オマーンはこれを「国際法の枠内、かつ周辺国全体の合意が必要」という原則論で巧みにかわし、イランによる海峡の完全私物化に巻き込まれないよう立ち回る構えだ。