受験生に大人気のMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)には、「データサイエンス学部」というストレートな名前の学部はほとんどない(立教大に2024年に設置された「人工知能科学研究科」などの大学院や、青山学院大が2027年に設置構想中の「統計データサイエンス学環」といった先進的な動きは一部ありますが、学部としての単体新設は非常に少ない)。
なぜ、あれだけ流行っているデータサイエンス系学部が、MARCHクラスに「意外に少ない」のか。そこにはMARCHブランドならではの余裕と、大学経営のリアルな裏事情がある。
1.看板学部(法・経済・商など)で十分に学生が集まるから
大学が新しい学部を作る最大の理由は、「定員割れを防ぎ、受験生を集めるための目玉が欲しいから」。
• 中堅以下の大学: 少子化の直撃を受けているため、「ただの経済学部」では受験生が集まりにくくなっている。そのため、時代のトレンドである「データサイエンス」という魅力的な看板を掲げて、必死に学生を集める必要がある。
• MARCHクラス: 既存の「明治の商学部」「青学の経営学部」「中央の法学部」といった伝統的な看板学部だけで、毎年全国から受験生が殺到する。わざわざ莫大な予算を投じて新しい大きな学部を作らなくても、ブランド力だけで優秀な学生が勝手に集まるため、新設への切迫感がそもそもない。
2.既存の学部の中に「データサイエンスコース」を作れば足りるから
MARCHは新しい学部を独立させる代わりに、「いまある文系学部の中で、データサイエンスも学べるようにする」という手法をとっている。
• 中央大学(商学部): ビジネス・データサイエンスコースを設置
• 法政大学(経済学部): データ分析や統計の専門カリキュラムを強化
• 青山学院大学(社会情報学部): もともと文理融合の先駆けとして、データ分析を先進的に教育
MARCHの文系学生は、就活において「学歴フィルター」で落とされることはまずない。そのため、大学側も「わざわざDS専門の学部を卒業させなくても、伝統的な『経済学部卒』の肩書のまま、ゼミやコースで統計やプログラミングを学ばせれば、大企業の総合職に十分トップ通過できる」と踏んでいるのだ。
3.「文科省の補助金」のターゲットが中堅以下だから
近年、大学でデータサイエンスや理系学部の新設が相次いでいる背景には、文部科学省が進めている「理系・デジタル人材育成のための巨額の補助金事業(基金)」がある。
国としては、日本全体のデジタル人材を底上げしたいため、地方の大学や中堅・定員割れに悩む私立大学が「理系やデータサイエンスにシフトするなら、国がお金を出して応援します」という政策をとっている。
• 中堅未満の大学はこの補助金を活用して、生き残りをかけて一気にDS系へ舵を切りった。
• 一方、MARCHのようなマンモス私立大学は、すでに国からの制約や定員管理が厳しく、学部の新設・改組には非常に慎重だ。
まとめ:学部の「名前」に騙されない視点が大切
受験市場を観察すると、以下のようなねじれ現象が起きている。
• 中堅未満: 生き残りのため、最先端の「データサイエンス学部」という独立した箱(学部)をどんどん作る。
• MARCHクラス: 伝統のブランドを守りつつ、既存の文系学部の中に「データサイエンスの授業(中身)」をスマートに溶け込ませる。
ようするに「MARCHにはデータサイエンス学部が少ないから、デジタル教育が遅れている」というわけでは決してないのだった。