アルミダイキャストボディによる車体骨格の一体成形(ギガプレス等)は強度が強いというが逆に、薄板プレス・溶接構造が持つ「適度な歪みやしなり」を失わせるため、限界領域や緊急回避(パニック)時における走行安定性やコントロール性に悪影響を及ぼす大きなリスクを抱えている。
単に骨格全体をガチガチに固めるだけでは、自動車としての優れた走行安定性は成立しない。
1. 「適度なしなり(剛性のメリハリ)」が不可欠な理由

メルセデス・ベンツをはじめとする欧州の老舗メーカーは、長年のレース活動や官能評価の蓄積により、「どこを固め、どこを意図的にしならせるか」というコンプライアンス(弾性・逃げ)設計のノウハウを構築している。
• 挙動の過渡特性を穏やかにする
急ハンドルやパニックブレーキなどの極限状態において、サスペンションアームやマウント、ブッシュ類、および車体の一部の微小な「しなり」が横Gの急激な立ち上がりを逃がす。これにより、タイヤの限界性能に達した際にもグリップが突然抜けるのを防ぎ、アンダーステア方向へ穏やかに挙動を移行させることで、ドライバーが姿勢を立て直す余裕を生み出す。
• 接地感の維持
適切な「逃げ」があることで、路面の突起やうねりを乗り越える際にもタイヤが路面を追従し続け、接地感が唐突に途切れるのを防ぐ。
2. ダイキャスト一体成形ボディが抱える運動性能上の課題

骨格を一体のアルミダイキャスト(鋳物)で固めた場合、構造的に以下のデメリットが生じます。
• 限界域でのピーキー(唐突)な挙動
骨格全体に柔軟な歪みがなくなるため、横Gの入力に対して「逃げ」が効かず、グリップの限界を超えた瞬間に唐突に姿勢が破綻しやすくなる。
• 入力衝撃の直接伝播
路面や足回りからの突き上げ衝撃を車体の歪みで分散・減衰できず、乗り心地の悪化やサスペンション取り付け部への局所的な負担増につながる。
3. 新興EVメーカーにおける調律(チューニング)ノウハウの限界
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モジュール調達やギガプレスの導入により、「カタログスペック上の静的ボディ剛性」を短期間で向上させることは可能になった。しかし、それを実際の安全な走りに昇華させるには以下の要素が不可欠となる。
• サスペンション・ブッシュの動的過渡特性設計
固い土台に対し、ダンパーの伸び・縮み側の減衰力やゴムブッシュの変形方向・硬度をミリ単位で調律する技術。
• 操舵系(ステアリング)のフィードバック
路面からの接地情報を的確にドライバーの手元へ伝え、自然な修正舵を可能にする電子制御パワーステアリング(EPS)の緻密なチューニング。
サスペンションや操舵系の調律ノウハウが不十分なまま骨格だけを過剰に固めた車は、路面の凹凸で不快な跳ねが生じるだけでなく、緊急回避時にドライバーの意図に反した危険で不自然な挙動を引き起こすことになる。
現在、テスラを除けばギガプレスを積極的に採用しているのは中国車であり、当然ながら日米欧に対して車両のチューニングノウハウは無く、ギガプレス云々の前に操舵性や旋回特性などは大きく劣っているようだ。そこにギガプレスのデメリットが加われば、実は結構ヤバい特性になっている筈だ。