中国の中華全国総工会が発表した「第9回全国労働者状況調査」によると、宅配・出前・配車などに従事する「新就業形態労働者(ギグワーカー)」は全国で8,400万人に達し、全労働者(約4億200万人)の約21%を占めている。プラットフォーム経済(インターネットを通じて売り手と買い手、またはサービス提供者と利用者などの複数の参加者をつなぎ、価値や取引を生み出す経済の仕組み )の急拡大と労働市場の構造変化を裏付ける公式データとして注目されている。
調査結果の主な数値データ
◦全労働者数:約4億200万人
◦新就業形態労働者数: 8,400万人(全労働者の約21%)
◦農民工(農村出身の出稼ぎ労働者):2億9,300万人
◦就業者の平均像:平均年齢38.3歳、平均就学年数13.8年
主な職種と属性
・対象職種:ネットデリバリー配達員(美団・餓了麼など)、宅配業者、オンライン配車運転手(滴滴など)、ライブコマース配信者(ライバー)など。
・労働者層:若年〜中年の男性が中心で、都市部に流入した農民工や、家計補填・柔軟な働き方を求める就業者が大きな割合を占めます。
総務省の労働力調査によると、2025年平均の日本の就業者数は過去最多となる6,828万人だから、日本人全員がギグワーカーになったよりも多いという事になり、いくら中国は人口が多いと言っても、これは異常だ。では、なぜこのような自体になったのだろうか。
ギグワーカーが急増した理由

• 不動産低迷と既存産業の失職:不動産不況の長期化や製造業の構造調整、企業の減給・リストラにより、行き場を失った労働者や農民工(出稼ぎ労働者)が大量に流入した。
• 若年失業率の高止まりと「35歳問題」:新規新卒者の就職難に加え、中国の労働市場で指摘される「35歳を過ぎると再就職が極めて難しくなる」現象により、再就職できない中年失業者の「最後の受け皿」となっている。
• 極めて低い参入障壁と即金性:特段のスキルや資格を必要とせず、スマートフォンと電動バイクや車さえあれば即日働け、日払い等で素早く現金を得られる点があげられる。
・収入減を補うための兼業(副業)需要:本業の給与カットや未払いに直面した会社員や公務員が、家計を維持するために終業後や週末に稼働するケースが増えている。
それにしてもこれほど大勢がこの仕事に殺到したら果たして十分な仕事があるのあろうか。
仕事の有無と現場の実態

• 需要を上回る供給過剰:フードデリバリーやネット配車は都市生活のインフラとして膨大な需要があるが、それ以上に労働者が流入したため注文の奪い合いが発生している。
• 注文数の激減と単価下落:配達員・ドライバー1人あたりの1日の受注数が減少し、プラットフォーム間の価格競合も相まって1件あたりの配達・乗車単価が低下している。
• 長時間労働化:以前と同等の収入を得るために1日10〜13時間以上稼働せざるを得ず、経費を引いた実質月収が地元の平均給与を下回るケースも相次いでいる。
• 自治体によるリスク警告:深圳、重慶、鄭州、海口などの主要都市では、交通当局が「市場は供給過剰・過飽和状態にある」として、安易な参入やローンでの車両購入を控えるよう異例の警告を出している。
プラットフォーム経済は雇用を吸収する重要な「安全弁」として機能する一方で、労働者の過剰流入によって過酷な消耗戦(過当競争)を引き起こすという構造的な問題を抱えている。