医学部に次ぐ難関だった歯学部が、全入直前の大学もあるくらい不人気の理由は


かつて昭和の時代には「お医者さんの次にステータスが高い」と言われ、医学部に次ぐ難関だった歯学部だが、ここ20〜30年でその立ち位置はガラリと変わった。現在、国公立や一部の名門私立は高い難易度を保っているものの、地方や中堅の私立大学では定員割れが常態化し、実質「全入(誰でも入れる)」に近い状態になっているところもある。

この劇的な人気の低下には、「イメージの悪化」「国家試験の罠」「恐ろしいコスパの悪さ」という3つの理由が絡み合っている。

1.「歯医者はコンビニより多い」という強烈なイメージ

長年メディアでも報道されてきた通り、日本全国の歯科医院の数は約6万7000軒で、これは全国のコンビニの数(約5万5000軒)を大きく上回っている。

これにより、受験生や保護者の間に「資格を取っても過当競争で稼げない」「下手に開業すると借金まみれになってワーキングプアになる」という将来への強い不安が定着してしまった。かつてのような「開業すればビルが建つ」という華やかなイメージは完全に崩壊している。

2.国家試験の「ふるい落とし化」と大学の「闇の留年」

国は歯科医師の増えすぎを抑えるため、歯科医師国家試験の合格難易度を意図的に引き上げた。

• 昔: 合格率80〜90%台が当たり前の「確認試験」だった
• 現在: 合格率が60%台にまで落とされ、毎年「合格者を2000人前後」に絞り込む選抜試験へと変貌

これに焦ったのが、国試の合格率が下がると来年の受験生が集まらなくなる私立大学で、大学側はブランドを守るため、「合格しそうにない学生」を卒業させずに手前で留年(あるいは退学)させるという力技に出るようになった。

結果として、「誰でも入れるようなラクな気持ちで入学したものの、進級すらできずに何年も留年し、何千万円もドブに捨てて結局国試にも受からない」という過酷な現実が広く知れ渡り、受験生から敬遠される原因になっている。

3.天文学的な学費と、悪すぎる「投資対効果(コスパ)」

私立大学の歯学部に6年間通うと、学費だけで約1500万〜3200万円かかる。

これだけ巨額の投資をしても、前述の通り「留年リスク」と「国試浪人リスク」がつきまとう。さらに、苦労して歯科医師になれたとしても、若手の勤務医としてのスタート年収は一般的な会社員とさほど変わらない(年収400万〜500万円スタートも珍しくない)のが現実だ。

「それなら普通の4年制大学に行って大企業を狙うか、本当に優秀なら必死に勉強して医学部を目指す」となるのは自然な流れだ。その結果、学力よりも「実家の経済力」だけで入れるような偏差値帯の大学が生まれてしまった。

4.そもそも「虫歯」が激減した

予防歯科の普及やフッ素入り歯磨き粉の進化、さらに少子化も相まって、現代の日本人の虫歯は劇的に減っている。かつてのように「虫歯を削って詰める」だけで自動的に儲かるビジネスモデルは通用しなくなり、現在は審美歯科、インプラント、訪問歯科など、高い技術と経営努力が求められる高度な時代になっている。

現在の歯学部のリアル

歯科医師という職業自体は、超高齢社会における「訪問歯科(誤嚥性肺炎の予防)」や「口腔ケア」の観点から、今でも非常に社会的意義が高く、優秀な人材が必要とされている。しかし、大学ごとの「教育力の格差」と「国試合格率の二極化」があまりにも激しいため、入りやすいからといって安易に飛び込むと抜け出せない足枷になってしまう事が、現在の歯学部不人気の背景にある。

では医学部はどうなのだろうか?

これについては続編にて