結論から言うと、「将来的に医学部の人気が落ちる(特に中堅・私立大学や、単にステータス目的の層において)可能性は十分にあり得る」というのが、近年の医療AIの進化や人口動態から見た現実的な予測のようだ。
現在の歯学部が辿った「過当競争・高学費・コスパ悪化」のルートと重なる部分が、医学部でも形を変えて現れるのではないかと指摘されている。その主な理由は‥‥
🔷「診断」という医師最大の武器がAIに代替される

かつて医師の絶対的なステータスは、「膨大な医学知識を暗記し、病名を見抜いて処方を決める」という頭脳労働の独占にあった。 しかし、対話型診断AI(Googleの「AMIE」など)は、すでに一般的な医師を超える診断精度や患者への共感性を示し始めている。AIが問診から処方提案までを高い精度で行うようになると、医師の仕事は「AIの診断をチェックしてサインするだけ」の作業(コモディティ化)に変貌し、かつてほどの知的特権階級としての輝きを失う可能性がある。
🔷「2029年問題」とAIによる医師過剰の加速

厚生労働省の需給推計では、日本の人口減少と高齢化のピークアウトにより、2029年頃に医師の需要と供給が均衡する(その後は医師余りになる)と試算されている。 ここに、カルテ作成や画像診断、自動問診などの医療AIが本格導入されると、医師1人が診られる患者の数が数倍に跳ね上がる。その結果として「医師の絶対数が余る」時代が到来し、一般勤務医の給与引き下げやポスト不足が現実味を帯びてくる。
🔷 私立医学部から始まる「恐ろしいコスパの悪さ」

現在、私立大学の医学部に6年間通うと、学費だけで2000万〜4000万円の巨額の投資が必要だ。 もし医師余りによって若手・中堅医師の給与水準が下がれば、現在の私立歯学部と同じように「莫大な学費を払ったのに、一般の会社員と大差ない年収しか稼げない」という逆転現象が底辺私立医から起き始める。これにより、「実家の経済力」だけで入るような偏差値帯の医学部が生まれる土壌が整う。
🔷 最優秀層の「医学部離れ」とキャリアのシフト

現在、日本の理系最優秀層がこぞって医学部を目指すのは、日本国内で最も「確実かつ高収入なライセンス」だからだ。 しかしAI時代において、医師が「AIの指示に従って働き、責任だけを押し付けられる過酷な仕事」になれば、優秀な若者はリスクをとってでも「AIを開発する側」や「バイオテック、IT、グローバル金融、起業」へと流れるだろう。「頭が良いならとりあえず医学部」という昭和・平成の方程式は崩壊していくと見られている。
🔷それでも、歯学部のように「全入」にはならない最後の砦

医学部が歯学部と決定的に違うのは、「法律上の最終責任(医師免許)」と「物理的な手技(外科手術、救急、在宅での看取りなど)」の壁だ。
AIがどれだけ賢くなっても、医療ミスが起きたときの法律上の責任は取れない。そのため、医師免許という最強の参入障壁は守られるが、「誰もが憧れる最高峰の職業」から「責任が重く、そこそこ稼げる専門職」へと、マイルドに地位が低下していくシナリオは非常に現実的といえる。