トランプ政権がEUのデジタルサービス法に対抗する経済制裁や外交圧力とは





トランプ政権(第2次政権)は、EUによるX(旧Twitter)への制裁やデジタルサービス法(DSA)・デジタル市場法(DMA)などの一連のテック規制を、「米国のテクノロジー覇権を標的にした外国政府による攻撃」および「保守派の言論を弾圧する検閲行為」と完全に定義している。

これを阻止するため、政権は単なる抗議の枠を超え、経済・外交・法的なあらゆるカードを組み合わせたきわめて具体的な報復措置を検討、あるいはすでに発動し始めている。

主な対抗策は以下の4つの柱に集約される。

🔷「100%報復関税」による経済的威嚇
トランプ大統領が最も好む強力な武器である「関税」が、今回のデジタル紛争でも最大の切り札として使われている。

• 全輸出品への100%関税の警告: トランプ大統領はソーシャルメディア上で、「米国のデジタルサービス企業を差別・排除する法律や規制、デジタル税を課す国に対しては、その国からのすべての米国向け輸出品に即座に100%の追加関税を課す」と明言した。これにより、自動車や高級品、農産物など、テック以外の欧州の主要産業を人質に取っている。

• 「通商法301条」の拡大適用: 米国企業の利益を害する不公正な貿易慣行に対して報復を認める「通商法301条」を動員し、EUのDSA(デジタルサービス法:Digital Services Act)、EU域内で違法コンテンツや偽情報の拡散を防ぎ、ユーザーの安全と基本的人権を守るための包括的な規制)DMA(デジタル市場法(Digital Markets Act)は、巨大IT企業(ビッグテック)の市場独占を防ぎ、公正な競争を促進するためにEUが制定した新しいルール)、さらには各国独自のデジタルサービス税(DST)が米国企業を不当に狙い撃ちしていないかについての公式調査と、それに伴う法的な関税手続きを進めている。

🔷国務省を通じた「規制の骨抜き」外交ロビー
米国国務省は、欧州に駐在する外交官らに対し、EU当局や加盟国政府へ直接圧力をかけるよう指示する外交メモを送付している。その要求は、DSAという法律そのものを内部から機能不全にするための具体的なものだ。
• 「違法コンテンツ」定義の縮小: 欧州側が政治的に都合よく検閲を行えないよう、DSAにおける違法コンテンツの解釈を極限まで狭めるよう要求。

• 偽情報行動規範(Code of Conduct on Disinformation)の削除: プラットフォームに偽情報の取り締まりを義務付けるルールの撤廃または修正。

• 制裁金の上限引き下げ: 「世界売上高の最大6%」という、企業を破産させかねない巨額の罰金制度の緩和。

• 「信頼できる通報者(Trusted Flaggers)」の無力化: EU政府が指定した民間団体やNGOからの削除要請に対して、Xなどのプラットフォームが優先的に対応しなければならない義務の撤廃。

🔷規制を主導する「EU高官個人」へのサンクション(制裁)の検討
今回のトランプ政権の極めて異例なアプローチとして、組織ではなく「個人」を標的にする動きが報じられている。

• 入国制限や資産凍結のバイパス: XやMetaなどに対して強硬な取り締まりや巨額の制裁金を主導している、欧州委員会(欧州行政府)の規制担当高官や執行官個人に対し、米国への入国査証(ビザ)の発給停止や、米国内の資産凍結といった「個人制裁」を下すことが政権内部や共和党主導の連邦議会下院で議論されている。これは「アメリカ国民の言論の自由を脅かす外国の役人への制裁」という大義名分で検討されている。

🔷二国間交渉による「EU包囲網」とディール
トランプ政権は「EU」という一枚岩の組織と交渉するのを避け、加盟国個別のアキレス腱を突く戦略をとっている。

• 個別国へのディール(取引): 例えば、対米輸出への依存度が高いドイツ(自動車)やフランス(ワイン・ブランド品)などに対し、「お前たちの国がEUの暴走を止めないなら、お前たちの国の主要産業に個別に関税をかける」と脅しをかけている。これにより、EU内部から「米国との全面的な貿易戦争を避けるために、テック企業への締め付けを緩めるべきだ」という内紛・融和論を引き起こす狙いがある。

現状のインパクトと欧州側の反応
このトランプ政権のなりふり構わない強硬姿勢を受け、EU側には明らかな動揺と「引き際」を探る動きが見られ始めている。

欧州委員会(フォン・デア・ライエン委員長)は、トランプ政権との決定的な衝突を回避するため、AppleやMetaに対する別のデジタル規制(DMA)の適用方針を一部緩和したり、一部の調査を取り下げたりしている。さらに、これらのデジタル規制が「欧州自身の経済競争力を削いでいないか」を検証する名目の見直し(デジタル・フィットネス・チェック)を急遽導入するなど、トランプ氏の関税砲を前に、防戦一方の構えを見せ始めている。