2026年7月6日に掲載されたニューヨーク・タイムズ(The New York Times)の記事「China Test Fires Long-Range Ballistic Missile in the Pacific, Angering Neighbors」は、中国が太平洋に向けておこなった非常に異例なミサイル発射実験と、それに対する近隣諸国の激しい反発について報じている。
主要な内容は以下の通り。
🔷異例のミサイル発射実験
中国人民解放軍海軍の原子力潜水艦が、模擬弾頭(爆薬の入っていないテスト用弾頭)を搭載した長距離(戦略)弾道ミサイルを太平洋の公海に向けてテスト発射した。ミサイルは指定された海域に正確に着弾したとされている。 潜水艦からの太平洋への弾道ミサイル発射は1982年以来のことであり、原子力潜水艦からの発射としては初とみられる、極めて異例で重大な軍事行動だ。
🔷 中国側の主張
中国国防省や国営の新華社通信は、今回の発射について以下のように主張し、正当性を強調している。
• 「軍の年間訓練計画に組み込まれた、あくまで日常的(ルーティン)な定例訓練である」
• 「国際法や国際慣行に完全に準拠しており、特定の国や標的を狙ったものではない」
• 「関係する国々には、事前に発射の通知を行っていた」
🔷近隣諸国の強い反発と懸念
中国側は事前通知をしたとしているが、太平洋地域の近隣諸国(オーストラリア、日本、ニュージーランドなど)は一斉に不快感や強い懸念を示している。
• オーストラリア:マールズ国防相は「深く懸念される動きであり、地域を不安定化させる」と批判。ウォン外相も「太平洋諸国が一致団結して地域の未来を決めていく必要性が、今回の件でより浮き彫りになった」と言及した。
• 偶然のタイミング:奇しくもこの発射当日、オーストラリアとフィジーは相互防衛条項を含む新しい安全保障協定(Veitacini条約)に署名したばかりであり、地域の緊張感がより際立つ形となった。
• 日本・ニュージーランド:中国の急速な軍事力拡大や、不透明な核戦力の増強に対して、地域の安全保障を脅かすものとして警戒を強めている。
まとめ:この記事が示す背景
今回の実験は、中国が「潜水艦からいつでも長距離核ミサイルを撃ち込める能力(第2撃能力)」を着実に向上させていることを世界、特に米国やその同盟国に誇示する狙いがあるとみられている。しかしその結果として、平和を望む太平洋の近隣諸国をさらに刺激し、地域での「安全保障のジレンマ(お互いが軍備を増強し合って緊張が高まる状態)」を悪化させている現状を伝えている。
ところで、中国政府は軍事機密として、今回の具体的な発射座標や正確な着弾海域を公表していない。しかし、公式発表(海軍の声明)や周辺国への事前通告(日本の海上保安庁やパプアニューギニアへの連絡)の情報から、以下のような大まかな位置関係と飛行ルートが判明している。
・発射位置(出発点): 中国近海、または西太平洋の公海上に潜航していた戦略原子力潜水艦(SSBN)。
・着弾位置(ゴール): そこから数千〜1万キロメートル近く離れた南太平洋(オセアニア近海)の公海。
・部品の落下エリア: ミサイルの推進体(ブースター)などの切り離された部品は、フィリピンのルソン島沖などの海域に設定された落下区域に落ち、模擬弾頭だけが南太平洋まで飛んでいった。
このルートは、日本やフィリピンの目と鼻の先を通り抜け、オーストラリアやニュージーランドの「すぐ目の前」の海域に巨大な長距離ミサイルが撃ち込まれたことを意味する。これが、近隣諸国が一斉に猛反発している地理的な理由だ。
これらの情報を元に地図として視覚化したものを添付する。
