最近文系大学でもデーターサイエンスや統計分析の講座を取れる例が増えているが、いわゆるド文系と言われる数学の才能が全く無い学生はこれに耐えられるのだろうか。
結論から言うと、「どのレベルのデータサイエンスを教えるか」によるという。
最近、文系学部で増えているデータサイエンス教育は、多くの場合、
• 統計学の考え方
• データの読み方
• グラフの作成
• Excelや簡単なPython利用
• アンケート分析
• 回帰分析の結果の解釈
といった内容が中心となっている。
これは理工系の数学科や工学部で学ぶような
• 微積分
• 線形代数
• 確率過程
• 数理統計学
• 機械学習理論
とはかなり異なる。
例えば、 「平均年収と学歴に相関があるか」 という分析を行う場合、
文系向け講座なら
• データを集める
• ソフトに入力する
• 相関係数を出す
• 結果を解釈する
ところまでが中心となる。
一方、理系向けなら
• 相関係数の導出
• 最小二乗法の証明
• 推定量の性質
• 誤差分布の仮定
まで扱う。
この差はかなり大きい。
すなわち、数学が苦手な学生でも前者なら十分についていける。
ただし、「ド文系」の中にも段階がある。
十分対応できる層
例えば
• MARCH文系
• 関関同立文系
• 地方国立文系
あたりの学生なら、高校数学で苦手意識があっても、
• 表計算
• 基本統計
• データの可視化
程度なら普通に習得できる。
実際、多くの企業が求めているのもこのレベルだ。
では 苦戦する層は
• 分数計算が怪しい
• 割合が理解できない
• グラフの読み取りが苦手
という学生になると話は別だ。
平均値と中央値の違いすら理解できないと、統計学以前の問題になる。 そのため一部の大学ではリメディアル教育(補習数学)を併設している。
AI時代との関係
興味深いのは、AIの普及で求められる数学レベルがむしろ二極化していることだ。
企業の大多数の文系職種では
• AIに分析させる
• 結果を解釈する
• 意思決定に使う
能力が重要になりつつある。
この場合、 「回帰分析を自力で導出できる」 必要はない。
しかし、「AIが出した分析結果が怪しい」 と気付くためには、
• 統計的有意性
• サンプル数
• 相関と因果の違い
くらいは理解している必要がある。
もう一つの問題
実は多くの文系学生が苦労するのは数学そのものよりも、「論理的な記号処理」だ。
例えば、 「AならばBである」と「 BならばAである」 が違うという感覚は、統計やプログラミングでは非常に重要だ。
データサイエンス教育で脱落する学生を見ると、微積分ができないというより、この種の論理操作に慣れていないケースが少なくないという。
その意味では、「数学の才能がないから無理」というより、 高校までに数的・論理的思考をどの程度身につけているかが成否を左右すると言った方が実態に近いようだ。
そして現在の文系向けデータサイエンス教育は、多くの場合、数学者やAI研究者を育てるためではなく、「データを読めるビジネスパーソン」を育てることを目的としているため、数学が得意でなくても履修可能な水準に設計されているのが大部分だという事だ。
まあ、ザックリ言って、高校入試偏差値で言えば55以上なら、数学が苦手と言っても数Ⅰの基本や数ⅡBの概要程度は理解しているだろうから、それでも基礎学力として問題ないだろうが、50未満となるとチョッと怪しいかな。