一部で囁かれている中国陣営は2030年までに破綻するという説は、確かに現在の米国の圧倒的な技術力、特にAI半導体(GPU)の独占状態や高度なソフトウェアの覇権、日米欧の同盟関係による対中包囲網を見れば強い説得力がある。
しかし、地政学や技術エコシステムの専門家の間では、「中国陣営はそう簡単には破綻せず、むしろ西側とは完全に独立した『もう一つのサイバー圏』として定着・存続する」という見方も根強く存在している。
1.「グローバル・サウス*」という巨大な受け皿
米国や日米欧の先進国市場から締め出されても、中国には巨大な新興国市場(グローバル・サウス)がある。
• 圧倒的なコストパフォーマンス: アフリカ、中東、中南米、東南アジアの一部などでは、高価な米国製の5G/6Gインフラやクラウドを採用する財政的余裕がない。中国製の安価で実用的な通信インフラは、これらの国々にとって「唯一無二の選択肢」となっている。
• デジタル権威主義の輸出: 自国民の世論や情報をコントロールしたいと考える開発途上国の政権にとって、中国の「サイバー主権(金盾などの監視・検閲技術)」のノウハウは、米国の「自由・オープン」な思想よりも魅力的に映るという現実がある。
*グローバルサウス:主にアジア、アフリカ、中南米に位置する新興国や発展途上国の総称。
2.「枯れた技術」と巨大市場による自己完結
最先端(数ナノメートル以下)の半導体製造は米国の規制で足止めを食らっているが、通信インフラや自動車、多くのIoT機器に必要なのは最先端チップだけではない。
• レガシー半導体の武器化: 中国は、数世代前の「レガシー半導体(14nm〜28nm以降など)」の量産工場を爆発的な勢いで建設している。最先端のAI処理は難しくとも、日常的な5G/6G通信や社会インフラ、EV(電気自動車)を動かすには十分な性能であり、これを自国および同盟圏に供給し続けることで経済圏を維持できる。
• 14億人のデータ量: AIの進化には「データの質と量」が不可欠で、中国は14億人の人口から吸い上げる膨大なデータを国内で一元管理しており、この「データの自給自足」によって西側に頼らない独自のAI進化を遂げる可能性がある。
3.イノベーションの「ガラパゴス的進化」
西側から完全にデカップリング(切り離し)された結果、中国国内で独自の進化が加速する現象(インポート・サブスティテューション=輸入代替)が起きている。
• 米国のOS(Windows、Android、iOS)や半導体(NVIDIAなど)が使えないからこそ、Huaweiの「HarmonyOS」や自国製のAIチップ(Ascendシリーズなど)への移行が国策で強制され、急速に実用レベルへと叩き上げられている。
• 2030年時点では「西側基準で見れば性能は劣る」かもしれないが、「中国陣営の中だけであれば問題なく社会が回る」システムが完成している可能性が高い。
4.破綻の定義:ソ連崩壊のようにはならない理由
かつての冷戦期にソ連が経済的に破綻したため「中国も同じ道を辿る」という見方があるが、当時と現在では条件が大きく異なる。
• ソ連は西側経済とほぼ断絶していたが、中国は世界の製造業のサプライチェーンに深く組み込まれており、西側諸国も「中国との完全なデカップリング」は経済的自殺行為になるため不可能な状況だ。
• 結果として、中国陣営が「干上がって破綻する」のではなく、「西側からは見えない(アクセスできない)が、独自の経済・サイバー空間として冷戦期のソ連以上に強固に存続する」というシナリオの方が現実味を帯びてくる。

結論として
米国の優位性は揺がないが、中国が2030年に「破綻」するかと言えば、その可能性は低いという見方が有力だ。むしろ、私たちが知る「1つのインターネット」が完全に消滅し、「高度で自由だがコストの高い米国圏」と、「監視付きで技術的には一歩譲るが安価な中国圏」という、完全に分断された2つの世界が並立する未来(これこそが真のスプリンターネット)に向かっていると考えるのが自然かもしれない。
実は米国の本音としては、「米国は 価値の低い、リスクだらけの市場を中国に押し付け、独自の閉じた世界で生きていかせる」という事のような気がする。