中国には韓国のFA-50と「生い立ち」「性能」「用途」のすべてにおいて真っ向から競合する、超音速の高等練習機/軽戦闘機が存在する。
中国は現在、設計思想の異なる2つのラインナップを並行して運用・輸出しており、世界の軽戦闘機市場で韓国(KAI)や欧州メーカーと激しいシェア争いを繰り広げている。
1.本命の最高級モデル:「JL-10 / L-15 猟鷹(リャオイン)」
FA-50に最も近い、あるいは一部のスペックでは凌駕している中国空軍の最新鋭モデルが「JL-10(輸出名:L-15)」だ。

• 開発の生い立ち: ロシアの名門「ヤコブレフ設計局」から技術協力を受けて開発された。そのため、欧州のベストセラー練習機「M-346」やロシアの「Yak-130」と見た目や基本設計がそっくりな双子機となっている。
• 性能と特徴:
◦ FA-50と同じく、最高速度はマッハ1.4の超音速が出せる。
◦ 最大の特徴は、最新の「フライ・バイ・ワイヤ(電子制御操縦システム)」を搭載し、中国の最新鋭ステルス戦闘機「J-20」や「J-16」とほぼ同じ感覚で操縦できる点で、中国空軍では、第5世代機パイロットの育成を早めるための主軸として大量導入されている。

• 戦闘機としての実力: 最新の戦闘攻撃型(L-15B)は、機首に高性能なPESAまたはAESAレーダーを搭載可能で、中国版AMRAAMとも言われる中距離空対空ミサイル「SD-10(PL-12)」や、衛星誘導爆弾を運用できる。
海外への輸出実績: アフリカのザンビアのほか、近年では親米国家でもあるアラブ首長国連邦(UAE)が中国からこのL-15を公式に購入・配備したことが世界中で大きな話題となった。
2.格安のハイコスパモデル:「JL-9 / FTC-2000 山鷹(シャンイン)」
もう一つ、中国が「徹底的な低価格」を武器に市場へ投入しているのが「JL-9(輸出名:FTC-2000)」だ。

• 開発の生い立ち: 旧ソ連の名機「MiG-21」を中国が独自に進化させ続けた「J-7」という戦闘機をベースに、さらにコックピットや主翼を現代風に大改造した機体で、中身は実績のある「枯れた技術」の塊となっている。

• 性能と特徴:
◦ 最高速度はマッハ1.2〜1.5。
◦ 最新仕様の「FTC-2000G」は、機首のレーダーを強化し、7箇所のハードポイント(兵器搭載用の懸架装置)を備え、約3トンの武装を搭載できます。もちろん中距離ミサイルも運用可能となっている。
• 最大の武器は「価格」: FA-50が1機約4,000万ドル(約60億円)するのに対し、FTC-2000Gは1機あたり約850万ドル(約13億円前後)という、現代の超音速ジェット機としてはあり得ないほどの「激安価格」で売られている。
海外への輸出実績: 「戦闘機を揃えたいが、お金が本当にない」という発展途上国のニーズに完璧に合致しており、スーダンやミャンマーなどが導入し、実際に国内の反政府勢力に対する対地攻撃(実戦)に投入されている。
中国製軽戦闘機と、韓国「FA-50」の決定的な違い
性能だけを見れば中国のL-15やFTC-2000も非常に強力だが、なぜポーランドやマレーシアはこれらを買わずに韓国のFA-50を選んだのだろうか。そこには「政治的な制約」と「信頼性」の壁がある。
① 「アメリカ製部品」を使えるかという壁
FA-50は、エンジン(GE製)もレーダー(レイセオン製など)もアメリカ製、あるいは西側規格で作られている。そのため、すでにF-16などを運用している国(ポーランドやマレーシア、フィリピンなど)からすれば、今ある西側諸国のインフラやデータリンク(Link 16)をそのまま使えるというメリットがある。
一方、中国製はすべて中国独自の規格(またはロシア系)であるため、西側の防衛ネットワークに組み込むことができない。
② 国際政治のポジショニング
当然ながら、NATO加盟国であるポーランドや、南シナ海で中国と対峙するフィリピンが、中国製の戦闘機を導入することは政治的に100%不可能で、中国製軽戦闘機は、主に「欧米から武器を買えない(あるいは買いたくない)中東・アフリカ・東南アジアの一部の国々」にとっての救世主となっている。
まとめ
中国には、FA-50のライバルとなるL-15(高性能・最新鋭)と、FTC-2000(超格安・実用本位)という強力な2つの選択肢が存在する。
これらは中国国内のパイロット大量育成を支えるだけでなく、西側諸国から戦闘機を買えない国々に向けて、FA-50のシェアを奪うための強力な輸出兵器として機能している。
それにしても、低価格で有名なFA-50の約5分の1という驚くべき価格は、まるで中国製のパワードモニタースピーカーと同じ状況だ。スピーカーは充分に使い物になったが、さて、戦闘機はどうだろうか?