米中首脳会談に先駆た韓国での実務レベル秘密会談(前編)





2026年5月14日の米中首脳会談(北京)の直前、5月13日に韓国の仁川国際空港で非公開(実質的な秘密会談の形)で行われた、アメリカのスコット・ベッセント財務長官と中国の何立峰(か・りつほう)副首相による実務レベルの経済・通商協議が行われた。

会談の概要と目的
• 日時・場所:2026年5月13日午前、韓国・仁川国際空港内の施設

• 出席者:
◦ 米側:スコット・ベッセント財務長官
◦ 中側:何立峰副首相(経済・金融担当)

• 目的:翌日(5月14日)に控えたトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談を前に、関税、半導体、重要鉱物(レアアースなど)のサプライチェーンといった、最も対立の激しい経済・通商分野における最終的な「条件の詰め(事前調整)」を行うため。

なぜ「韓国(仁川空港)」だったのか?
この実務トップ同士の接触は、公式な外交日程の合間を縫うようにして、仁川空港の制限区域などの非公開スペースで急遽行われた。米中双方が利害の一致する「中立地」として、移動の動線上好都合だった韓国が実質的な舞台に選ばれた形だ。

韓国国内での「韓国パッシング」論争
この秘密会談の裏側で、開催地となった韓国国内では政治的な波紋が広がっている。

• 形式的な面談:ベッセント米財務長官は、韓国の李在明大統領とわずか30分ほど面談し、重要鉱物の連携などを表向きに話したのみだった。

• 本命は米中協議:その後、韓国政府高官らとの本格的な会合は省略され、訪韓した中国の何立峰副首相との「米中二国間協議」にそのまま突入た。

このため、自国が外交の舞台として使われながらも肝心の交渉からは完全に蚊帳の外に置かれたとして、韓国メディアや保守層の間では「韓国パッシング(排除)」として大きな衝撃を伴って報じられている。

この実務会談は、翌日の米中首脳会談(北京)に向けた「最終的な条件の擦り合わせ(地ならし)」が目的であり、ここでの合意内容がそのまま翌日の首脳共同声明の土台となった。

この実務会談および翌日の首脳会談を通じて明らかになった主な結果と合意内容は、以下の4つの柱に集約される。

1.「全面的な関税合戦」の回避と段階的措置
トランプ政権が掲げていた中国製品への一律60%の追加関税(いわゆる「トランプ・タリフ」)の即時全面発動は見送られ、段階的かつ条件付きの発動、あるいは一部猶予(適用除外)の枠組みを設ける方向で妥協が図られた。 これにより、世界経済に破滅的な影響を与える「全面的な貿易戦争」への発展をひとまず回避した。

2.中国による米産品の「大量買い付け」の約束
関税の猶予や緩和を勝ち取るための代償として、中国側はアメリカからの農産物(大豆やトウモロコシなど)やエネルギー(LNGなど)を大規模に買い付けることを約束した。これは、第1次トランプ政権時の「米中第一段階合意」に近い枠組みを再導入する形となった。

3.ハイテク分野(半導体・AI)における「ディール」
• 米側の規制維持:アメリカ側は、最先端半導体(AI半導体を含む)や製造装置の対中輸出規制、および対中投資規制といった「安全保障に直結する核心的技術」の規制については、一切妥協せず維持することで押し切った。

• 中側の巻き返し:一方で中国側は、レガシー半導体(汎用半導体)や、EV(電気自動車)・バッテリー関連の一部部材に対する関税や排除措置について、一定の緩和や激変緩和措置を勝ち取ったとされている。

4.サマーズ元財務長官の「批判」と市場の反応
この実務会談から首脳会談へと至る結果(関税を人質に取った買い付け交渉)に対し、アメリカ国内の有識者、特に民主党系の経済学者であるローレンス・サマーズ元財務長官らは強い懸念と批判を示している。

サマーズ氏は、「同盟国(韓国や日本、欧州など)を完全に排除した独断の二国間ディール(取引)であり、国際協調の枠組みやサプライチェーンの安定を破壊するものだ」と厳しく批判した。

総括
結果として、この秘密実務会談は「経済安全保障(ハイテク・安保)では一切妥協しないが、商業的な貿易(関税・買い付け)では柔軟にディール(取引)を行う」という、第2次トランプ政権の対中交渉パターンのひな型を決定づける結果となった。

以上の内容は表向きの経済協議(関税や買い付け) であり、その裏には中国側にとっての「本丸」であり、今回の外交戦における最大の勝負所 があった。これについては‥‥

後編につづく