日本が原油の約8割を依存する中東情勢、特にホルムズ海峡の封鎖リスクは、日本のエネルギー安全保障における最重要課題だ。とは言え、日本が輸入しているUAEもサウジもホルムズ海峡を通らずに可なりの量を出荷できるようにパイプラインがある。
結論から言えば、UAEとサウジアラビアのパイプラインがフル稼働すれば、日本への両国からの供給量は「理論上は」かなりの部分が維持可能となる。しかし、物理的な輸送能力や積み出し港の混雑、他国との競合という高いハードルもある。
ここで、2026年4月時点に基づき、具体的な数字で分析すると
1.両国のバイパス(迂回)パイプラインの能力
サウジアラビアとUAEは、ホルムズ海峡を通らずに原油を輸出できるルートを強化している。


2.日本の輸入はどの程度維持できるか?
日本の1日あたりの原油輸入量は約250万〜270万バレル(2025-2026年実績値)で、内訳は
• UAEからの輸入量: 約100万〜110万バレル
• サウジからの輸入量: 約100万〜110万バレル
理論上の維持可能性
両国のパイプライン合計能力(約850万バレル以上)は、日本が必要とする両国からの輸入量(約220万バレル)を大幅に上回っている。つまり、日本向けの原油をすべてパイプライン経由に切り替えるだけの物理的な「管」の容量は存在する。
3.直面する3つの現実的な壁
「管が空いている」からといって、すべてが日本に届くわけでは無く、以下の要因が供給を制限する。
• 世界規模の争奪戦 :ホルムズ海峡が封鎖された場合、日量約2,000万バレルの原油が行き場を失う。パイプラインで運べる量はその半分以下(約850万バレル強)しかないため、中国や韓国、欧州諸国との間で凄まじい「枠の奪い合い」が発生する。日本が優先的に割り当てを受けられる保証は無い。
• 積み出し港(ヤンブー、フジャイラ)のボトルネック:パイプラインの能力が上がっても、港のタンカー積み込み設備(ターミナル)には限界がある。特にサウジのヤンブー港は、現在フル稼働に近い状態であり、接岸待ちによる遅延が予想される。
• 油種の問題:日本の製油所は特定の油種(アラビアン・ライト等)に合わせて調整されている。パイプラインに流される油種が日本の設備に適合しない場合、精製効率が落ちるリスクがある。
まとめ
ホルムズ海峡が封鎖されても、両国のパイプラインがフル稼働していれば、日本は「最悪の事態(供給ゼロ)」は免れ、UAE・サウジからの輸入をある程度継続できる可能性が高い。
しかし、他国との争奪戦により価格は暴騰し、全量を確保することは極めて困難になると予想さる。そのため、政府は備蓄(国内消費の約200日分)の放出と並行して、これら迂回ルートの優先確保を外交交渉で進めることになる。