米最高裁はトランプ関税を違法との判決を出したが、最高裁の判事は共和党系が過半数を占めているにも拘わらず、このような判決を出したのは何故だろうか。
現在の最高裁は9人中6人を保守系判事が占めているが、今回の判決は6対3で下された。トランプ氏が指名したゴーサッチ判事とバレット判事の2名、そしてロバーツ長官が、リベラル系の判事3名と共に「違法」側に回ったことが決定打となった。
保守系判事が過半数であるにもかかわらず、なぜこのような判決に至ったのか、主な理由は以下の3点に集約される。
1. 「議会の権限」を重視する保守本流の考え方
米憲法上、関税を課す(税を徴収する)権限は本来、連邦議会にある。
保守系の判事、特にゴーサッチ氏やバレット氏は「大統領が議会の承認なしに勝手に権限を拡大すること」を嫌う「テクスチュアリズム(条文主義)」や「メジャー・クエスチョン・ドクトリン(重大な問題の原則)」を重視している。
判断の根拠:今回トランプ氏が根拠とした「国際緊急経済権限法(IEEPA)」には、どこにも「関税(Tariff)」という言葉が含まれておらず、最高裁は「議会がこれほど強大な経済的権限を大統領に白紙委任したとは認められない」と結論付けた。
2. 「緊急事態」の乱用への制約
トランプ政権は、貿易赤字やフェンタニルの流入を「国家緊急事態」として関税を正当化した。しかし、最高裁は「IEEPAは資産凍結や制裁のためのものであり、平時に無期限・無制限に関税を課すための万能な道具ではない」と指摘した。
ロバーツ長官は意見書の中で、大統領側の主張通りに法を解釈すれば、大統領が「あらゆる国からのあらゆる製品に、いくらでも関税をかけられる」ことになり、独裁的な権限を認めることになると危惧を示した。
3. 法の支配と司法の独立
保守系判事であっても、彼らは「トランプ氏個人への忠誠」ではなく「憲法と法律」への忠誠を優先する。
判決後の反応:トランプ氏は自身が指名した判事たちが反対に回ったことに激怒し、彼らを「恥ずべきだ」と批判したが、これは逆に米国の司法が政治的任用を超えて独立して機能していることを示す結果となった。
今回の判決の影響と今後の動き
今回の判決で全ての関税が無効になったわけではない点に注意が必要だ。
関税の種類 現状のステータス
・IEEPAに基づく一括関税の違法・無効。 過去に徴収した1,000億ドル以上の還付が焦点に。
・通商拡大法232条(鉄鋼・アルミ等) 有効。 安全保障を理由とするもので、今回の判決の対象外。
・トランプ氏の代替策(10%追加関税) 2月24日発動予定。 1974年通商法122条などを根拠に再設定。
・トランプ氏は判決の数時間後、すぐに別の法律(1974年通商法122条)を根拠とした「全世界への10%関税」を24日から発動すると発表した。
司法と大統領の「権限争い」は第2ラウンドに入ったと言える。