MERCEDES
BENZ SLK350 (2006/8/26) |
PORSCHE BOXSTER
PORSCHE CARRERA
BMW Z4 3.0
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SLRを彷彿させるフロントマスクとロングノーズショートデッキの典型的なフロントエンジン
スポーツカーのプロポーション。やはりメルセデスはシルバーが似合う。 |
1989年に発売されたマツダ(日本ではユーノス)ロードスターの成功により、世界中で絶滅寸前だった2シーターオープンスポーツという分野が復活した。
このブームを発端としてドイツのプレミアムブランドであるメルセデスからはSLKが、BMWからはZ3が、そしてスポーツカー専業のポルシェからはボクスターが新規に発売された。
SLKは1994年のトリノショーでコンセプトカーが発表され市販モデルが公開されたのは1996年、日本での発売は1997年初めでSLK230(490万円)のみの構成だった。
ほぼ同時期に発売されたポルシェボクスターは2.5ℓでMTが610万円、ATが670万円とSLKに比べて割り高で、しかも初期のボクスターは動力性能やボティ剛性に不満も出ていたことから、
圧倒的にSLKの人気が上回っていた。当時のSLKは納車まで1年どころか2年待ちと言われたものだった。しかし、ポルシェはその後毎年のようにボクスターを改良し、ポルシェ復活の礎となり、
さらに2005年にFMCした987の人気は圧倒的で、
今現在は納期が一年を越えている状況だから、初期のSLKと立場が逆転してしまったようだ。
メルセデスのライバルBMWはSLKやボクスターと同時期の1996年末にZ3の国内販売を開始した。Z3は当時としては旧型となるE30(3シリーズ)のシャーシーを流用したもので、初期はエンジンも1.9ℓだった。
その後は6気筒が搭載され2.8ℓ版やM3用エンジンを搭載したMロードスターなどのバリエーションも揃えたが、2003年に新型のZ4にモデルチェンジされた。
B_Otaku の試乗記ではZ4とボクスターについては、バリエーション違いも含めて過去に何回か取り上げたが、
ライバルのSLKについては一度も試乗したことがなかった。これはメルセデスファンにとっては片手落ちと思うのは当然だろうが、実際にSLKの試乗となるとデーラーに試乗車が殆ど無い事から、実現は
結構難しい。
実は今回の試乗車は個人の所有するクルマを提供してもらった事で実現したものだ。 |
初代SLK(1997〜2004)
発売当初は大変な人気で1年以上のバックオーダーを抱えていた。 |
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初代ユーノスロードスター(1989〜)
絶滅寸前のオープン2シータースポーツ復活の発端となった。
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BMW Z3(1993〜1999)
E30(3代前の3シリーズ)がベースの2シーターオープンスポーツのZ3は、その後Z4に進化した。
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ポルシェボクスター
発売当初はパワーとボディの剛性が不足していて人気もイマイチだったが、その後の改良により人気も上昇し、ポルシェの経営不振からの脱出の立役者となった。
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では例によって、SLKを中心に米国でのスポーツカーの販売状況を見てみよう。下の表は既にZ4試乗記で使用した内容の再掲、要するに使い回しだが別に手抜きをした訳ではないので念のため。
米国のスポーツカー販売台数
車種名 (販売価格) 2005年 2004年
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Mercedes-Benz SLK ($42,900 - 61,500) 12.9千台 7.4千台
Mercedes-Benz SL ($94,800 - 186,000) 10.1千台 12.9千台
BMW Z4 ($35,600 - 42,100) 10.0千台 13.7千台
Porsche Boxster ($45,000 - 54,700) 7.9千台 3.5千台
Porsche Carrera ($71,300 - 91,400) 8.9千台 4.9千台
NISSAN 350Z ($27,650 - 40,000) 27.3千台 30.7千台
Lexus SC430 ($65,355) 8.4千台 9.7千台
ACURA NSX ($ - ) 0.2千台 0.2千台
HONDA S2000 ($34,050) 7.8千台 7.3千台
Dodge Viper ($81,895 - 83,145) 1.7千台 1.8千台
Chevrolet Corvette ($43,690 - 64,890) 32.5千台 35.3千台
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Porsche CarreraGT ($ - ) 340台 190台
FERRARI ($168,000 - ) 1.4千台 1.3千台
LANBORGHINI ($175,000 - ) 0.7千台 0.7千台
MASERATI ($79,900 - 115,900) 0.2千台 0.1千台
Aston Martin ($110,000 - ) 0.5千台 0.6千台
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TOYOTA MR-2 Spyder ($ - ) 0.8千台 2.6千台
MAZDA MX-5 Miata ($20,435 - 26,700) 9.8千台 9.4千台
MAZDA RX-8 ($26,435) 14.7千台 23.7千台
HYUNDAI Tiburon ($16,095 - 20,955) 20.6千台 20.1千台
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数字を見ると、米国からみれば“国産車”のコルベットと、それに続く米国スポーツカー市場のベストセラーと誰もが認める350Z(フェ
アレディZ)を別格とすれば、SL、SLK、Z4が良い勝負で、それより多少は少ないがポルシェカレラとボクスターも健闘している。
レクサスSCが健闘している事実は、米国でのSCはプアーマンズSLとしての市場が確立しているという噂が本当であることを裏づけている。
ここで、米国内の価格という禁断の話題に触れてみると、ボクスターの
$45,000は日本円に換算すれば540万円で、国内価格579(消費税抜き552)万円は非常に良心的な価格設定になっている。
対して、SLK350は$47,400だが、これは国内向けの装備満載と異なり、ポルシェと同じようにMTでマニアルエアコンで、勿論ナビやステアリングスイッチでの
各種操作なんて付いていない。
これらの装備をザッと$5,000とすれば$53,400だから約628万円となり、国内価格の672(640)万円は決して高くない。何故かサルーンでは甚だしい米国との価格差は、SLKもボクスターも極めて少ない。
ところで、SLKもボクスターのように素の状態のモデルを設定してくれれば、なんて考えるマニアもいるだろう。SLK350のMTでナビなし、マニアルエアコンの質素なモデルが600万円くらいで買えれば、なんて考えれば結構選択肢も広がるかもしれない。
しかし、それは無いだろう。実は20年以上前に輸入元であるヤナセが、当時500万円近い190EのMTで贅沢装備一切無しの、いわば欧州で売られているようなモデルを400万円で発売したことがあったが、
結果は見事に売れなかったようだ。ボクスターのユーザー層は、意外に国産のハイパフォーマンスカーやオープンカーからの乗換えが多いので、それこそ走りが命で余計な装備はいらないという
人も結構多い。
それに比べてメルセデスオーナーならば、“たったの”60万円程度でチャチなモデルを買うなんてバカバカしいと思うだろうし、それより免許がAT限定かMTを運転したのは教習所以来なんていうのが現実だろう。
SLKとボクスターの国内価格が米国価格に対して良心的なのは判ったが、「それならBMW Z4は如何なんだ?」となる。Z4 3.0siの米国価格は$42,100(MT)で、これに6速ATやキセノンランプ、レザーシートなど約$5,000を加算してみれば約565万円となり、国内価格589(561)万円
は、これまた米国価格と、ほぼ同等となる。Z4の場合は米国生産だから、輸送費のハンディを考えれば、随分安目の設定なことが判る。
元々ポルシェが良心的な国内価格を設定したので、他社もそれに合わせる羽目になったのだろうか?
畜生、ポルシェの奴、余計な事をしやがって!でも、まあ良いか。その分は$36,600の330iを635万円で売って穴埋めするかな。
次にドイツに於ける国内販売状況を見てみよう。
ドイツ国内販売台数
車種名 2006年7月 2006年6月
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Mercedes-Benz SLK 1,283台 1,415台
Mercedes-Benz SL 258台 311台
BMW Z4 519台 567台
Porsche Boxster 572台 550台
Porsche Carrera 852台 948台
NISSAN 350Z 89台 101台
Lexus SC430 15台 10台
HONDA S2000 18台 22台
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MAZDA RX-8 92台 174台
MAZDA MX-5 Miata 276台 701台
HYUNDAI COUPE 69台 112台
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ドイツ国内販売台数では米国と異なりSLKは堂々の一位を獲得。二位は何とポルシェカレラで、こんなに高価なクルマが結構売れるのも流石は原産地だ。ドイツ勢以外で健闘しているのはマツダの2車で、中でもMX−5(ロードスター)の健闘ぶりが凄い。意外なのはヒュンダイクーペで、スポーツカーの本場であるドイツで350(フェアレディ)Zと良い勝負をしているのは、恐らく価格が激安なのが理由だろう。
それにしても、レスサスSCとホンダS2000は情けないもので、どちらも欧州ではベンツ・ビーエムより評価が高いなんて言っている掲示板アラシは、この現実を知っているのだろうか? |
SLKはオープンが似合う。しかも、都会が似合う。 |
日本国内で販売されている現行のSLKは、2004年から発売された2代目で、ラインナップは4気筒1.8ℓスーパーチャージャー163psのSLK200コンプレッサー(546万円)、V6、3ℓ 231psのSLK280(609万円)、
そして今回試乗したV6 3.5ℓ 272psのSLK350(672万円)の3グレード構成となる。
現行SLKのスタイルは、あの超怒級スポーツカーであるSLRマクラーレン(約6000万円)を髣髴させるフロントデザインが特徴で、ロングノーズの古典的なフロントエンジンのスポーツカールックはエンジンをドライバーより後方に搭載するポルシェの各車とは全く別の魅力がある。SLKの最大の特徴は言うまでも電動で開閉が可能なスチールルーフだが、そのデメリットである折り畳んだスチールルーフの収納のためにトランクルームが狭い事があ
り、実際にトランクを見てみれば、成る程高さ方向に狭いのは間違いない。リアトランクの狭さでは良いとこ勝負のボクスターはフロントに結構なスペースを持つので、SLKのトランクスペースはボクスターに大きく水を開けられているのは我慢するしか無い。 |
SLよりもSLR似のフロントマスクが最大の特徴だ。
ボクスターがカレラよりもカレラGTのイメージを持っているのと類似性がある。
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リアは他のメルセデスとの共通なイメージで、フロントの強烈なイメージに比べて大人しいデザインだ。
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乗り込んでシートに座った瞬間に感じるのは、流石にメルセデスのスポーツモデルだけあって座り心地はすこぶる良いということだ。座面はポルシェのシート程にはコチコチではなく多少沈むが、背中も尻も太ももの先までもが、適度にサポートされる。試乗車にはオポションのレザーシートが装着されていたが、
実際にこのクルマでファブリックシートなんてあるのかと思いたくなる。
着座位置はボクスターよりは高いので、普通のサルーンから乗り換えても大きな違和感はないが、それでもサルーンよりは低いから2シータースポーツの雰囲気は十分に堪能できる
。ただし、ポルシェのような緊張感が無いのは人によっては物足りないと感じるし、ある人は返って落ち着くだろう。まあ、世の中の大部分のドライバーは後者の方だと思うが。
シートの位置調整は前後、上下、背もたれ、それにステアリングの前後、上下と全て電動で調整できるから、それこそあらゆるドライバーにフィットするのは言うまでも無い。
内装の質感も高く、最近チャチになったという噂のEクラス等と違い、ちゃんとメルセデスのイメージどおりの内容だ。ダッシュボードの質感も本物のレザーに近い雰囲気のシボや質感だから、オーナーの満足
感は高いだろう。この質感は何処かで見たような覚えがあると思ったら、そうだ現行ポルシェ(987&997)とほぼ同じだ。
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インテリアの質感は中々良く、高級感がある。ポルシェに比べればシートの座面は柔らかいが座り
心地はとても良い。ポルシェとはまた違うメルセデスの世界も引かれるものがある。
う〜ん、ドッチも欲しい!
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SLKの電子キー。最近は国産の低価格車でも採用されているので、驚くものではない。
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電子キーを挿入したら、キー自体を捻るのは従来のシリンダーキーと同じ感覚だ。
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30年程前に乗ったメルセデス(W123)は当時初めて見るジグザクゲートだったが、セレクターを前後に動かすと、左右には勝手に吸い込まれるように動
くのに驚いたもだった。ところが最近のメルセデスは意識して左右にも動かさないとスムースに前後してくれない。
やはり“最善か無か”の時代のメルセデスは過去の話なのだと実感する瞬間でもある。その代償としては、過去のように定期点検で40万円、車検の整備は100万円などという恐ろしい維持費が掛からなくなったのだから、まあ良いかと納得する。
正面のメーターは左がフルスケール260km/hの速度計、右が同じく7000rpmの回転計が装着されている。速度計はフルスケールの角度が大きく、街中の低い速度で
も認識し辛い事はない。もしも、この速度計が見辛い場合は中央上部のデスプレィにデジタルで速度表示するように設定することも簡単に出来る。2つのメーター内にはそれぞれ、時計と燃料計が組み込まれているが、他社ならば水温計を装着するところにアナログ時計というのは、如何にもメルセデスらしい。
メーターの質感は国産車のようにハイテクっぽくはないが、良く見れば表示はクッキリと見易く、如何にも精密そうだ。この雰囲気は何処かで見たことがあると思ったら、ポルシェのメーターの質感にソックリだ。特に通常は黒いパネルに警告灯が点灯した時にはクッキリと鮮やかに表示する点など、国産車には無い精密感などを見ると、もしかしたらメルセデスもポルシェも同じ計器メーカーを採用しているのではないかと思っていしまう。SLKのキーも今時流行の電子式だが、エンジンの始動は差し込んだキーを捻る方式で、スターターボタンを押すタイプではない。 |
メーターの文字はクッキリと見易く、警告灯類も消灯時にはパネル面にインジケータがあるように見えないが、いざ点灯すると鮮やかな色で表示される。
この質感はポルシェと似ている。 |
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中央のディスプレイ上部にはデジタルで速度も表示できる。表示の切り替えは簡単。
左のメーター内にアナログ時計が組み込まれているのが如何にもメルセデスらしい。
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V6、3.5ℓから272psの最高出力と35.7kg・mの最大トルクを発生するエンジンは、
基本的にEやS等のサルーンと共通だ。 |
アイドリングはトヨタ車のようにエンジンが回っているのかどうかを回転計で確認するほどの静かではないが、排気量で100cc多いだけのポルシェカレラのようにブルブルと震える事もない。
SLK350のエンジンはV6、3.5ℓから272psの最高出力と35.7kg・mの最大トルクを発生する。走り出してみると、流石に3.5ℓエンジンのもたらす大
きなトルクは、必要ならば1490kgの車体をグイグイと引っ張っていく。
このエンジンはE350やS350などのサルーン用のエンジンだから良く言えば扱いやすく、広いトルクバンドを持つが、ポルシェのような高性能エンジンとは根本的に異なるから、特に5000rpm以上の高回転域の勢いでは敵わないし、何よりボクスターのレッドゾーンが7200rpmであり、
6000rpmからの最後の1000rpmくらいの凄まじさはマニア心を熱くするが、SLKの場合は6000rpmと言えば既にレッドゾーンに近付いている事になる。
こんな事を言うと、SLKのエンジンはトロイのかと思われそうだが、イエイエ、世間一般のエンジンとしては充分だし、同じV6、3.5ℓのフェアレディZよりは高回転域でも良く回るように感じる。
それに、エンジンの気持ち良さが評判のBMW製のZ4だって、Mロードスター等を除けばサルーンと共用のエンジンだから、市販車にドライサンプエンジンを採用しているポルシェが極端だというのが本当のところだ。
話の順序が前後するが、ドライバーズシートに座ってエンジンを始動するためにブレーキペダルを踏もうとして、あれっ、何か変だ。良く確認してみると、RHDとしてはペダル配置が右よりな事に気が付く。普通はRHDの場合はクルマの構造上から幾分左寄りのペダルレイアウトになるのが普通なのだが、SL
Kはチョっと違う。
ボクスター(MT)と比べるとペダル1個分は右に寄っている。どちらが正しいとは言えないが、どちらも夫々標準より寄っているような気がする。とは言っても慣れれば特に問題は無いし、
実際にSLKに乗った後にボクスターに乗っても特に違和感は無かった。ベダル位置を脳ミソに叩き込んでいよいよ発進となりパーキングブレーキを解除しようと思って探してみれば、センターコンソール上のレバーが目に入るが、何か形が変だ。詳細は写真を参照願うとして、実際に使ってみると意外に使い易いので
ホッとする。
特にスムースとは言えないエンジンを助けているのが7速のATで、6速でも充分なのに7速なんて必要なのかとも思えるが、お蔭でエンジンの丁度良い回転数を使える訳だから、特にベタ踏みしての加速をしない限りは、5000rpmなどは無縁の領域だし、もしもフル加速をしても決して不快な振動や音は発生しない。
このATはスポーツモードに切り替えることで、シフトスケジュールが変化して高回転側を使用するようになる。スポーツモードは他社でも備わっているが、トランスミッションを自社で内製しているメルセデスの場合はちょっと独特だ。
まず切り替えはコンソールのセレクトレバー根元付近にある単独のスイッチで行うのだが、このスイッチは小さく、しかもLHDを基準に作られているので、試乗車のようにRHDの場合は
レバーの陰で見難いこともあり、走行中に素早く安全に切り替えるのが難しい。さらにSとDのモード表示はメーターパネル中央下側のディスプレイに表示されるが、この字が小さくて見辛く、このクルマを楽に買える収入のオーナーの可也の割合
となるであろう、近くが見辛くなった年齢にはあまり嬉しくない。
このATをマニアルで操作するにはステアリングホイールのスポーク裏側にあるスイッチを使うが、このスイッチは小さなシーソースイッチで、このスイッチの右側を押すか左側を押すかでミッションのアップダウンを操作するが、
この方法は慣れないと非常に使い辛い。マニアル操作には外にセレクターレバーでも可能だが、メルセデスのマニアル操作は他社が前後に動かすのに対して左右に動かして(倒して)アップダウンを行う。
これも慣れないと使い難いし、ミッションに切り替えと言うのはイメージ的に前後にレバーを動かすという方が自然だと思うが。
こんな面でも、このクルマがマニアルでギンギンと攻めまくるオーナーを想定していないのが判る。
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写真上段:ATインジケータとモード表示は小さく見辛い。
写真下段:ATのモード切替スイッチも小さく見辛く操作フィーリングも悪い。
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ナビや周辺のコントロールボタンは複雑で小さく、走行中の切り替えは危険な程に認識し辛い。 |
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ATセレクターはジグザゲート式だがレバーの根元はブーツで囲まれているのでゲートが見えない。しかも表示はRHDではレバーの陰になる。 |
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奇妙な形状のパーキングブレーキレバーに一瞬ビビるが、操作性は悪くない。 |
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試乗コースは主としてポルシェの試乗に使っているコースを走ってみた。一般道としては流れの速い片側2車線の一級国道を走行していると、如何にもメルセデスらしい安定したステアリング特性を感じる。いつものコーナーに近付くと何やらクルマの流れがヤケに遅いのに気が付く。
良く見れば4台先に仮免許練習中の教習車がいるのが見える。あ〜あ、ついてないや。という訳で1回目の往路は今時有り得ない制限速度厳守の運転をSLKでやるとどうなるかを体験できた。
当日は土曜日の午後と言う余り有り難くない条件だったので、結局復路も遅いトラック軍団に阻まれたたために、2度目のトライをすることにした。
今回は個人オーナーの所有車なので、手に汗握るような走り方はしなかったが、それでもボクスターで冷や汗タラタラのコーナーリング速度よりは遅いが、一般的には充分速い速度でのコーナーリングでも、SLKは楽チンそのもの。
何しろ安定した挙動と、適度に感度の鈍いステアリングは全神経を集中する必要はないし、それでいて切れば切っただけの反応はチャンと示してくれるから、オープン2シーターらしいスポーツドライブだって
出来る。
今回感じたのは、一般のドライバーの場合だったら、同じコーナーをボクスター/ケイマンで走るよりもSLKで走ったほうが速い速度で通過できるだろうという事だった。確かにボクスター/ケイマンは上手いドライバーが乗れば恐ろしく速い。
だが、一般のドライバーの場合はクルマの能力が引き出せずに返って遅いとう結果に成りかねない。
乗り心地はこのクルマのコンセプトからも想像が付くように、しなやかで突き上げも上手く吸収し、それでいてロールも少ないし安定している。
最近の技術の進歩は例えスポーツタイプで走行性を重視したサスペンションでも乗り心地は非常に良いのが通例だ。SLK350は標準(PASMなし)ポルシェボクスターやカレラより乗り心地は良い。
しかし、PASM付きのポルシェとなると、乗り心地の良さは下手な高級セダン以上だからSLKといえども歩が悪くなるが、SLKの乗り心地で不満を漏らすユーザーは少ないだろう。
まあ、そういうユーザーはセルシオでも買ってもらうしかない・・・言ったところで、ハタと思い出したのは、既にセルシオは無く、近日レクサスLSとしてFMCされることだった。
レクサスブランドになったら、日本車の長所である日本の道路に適した究極の乗り心地をグローバルスタンダードの名の元に、アッサリと止めてしま
ったり・・・・は、無い事を祈るが。
SLKの最大の特徴でも有るバリオルーフという金属製の折り畳みの屋根は、今でこそ数社以上が市販車にラインナップしているが、初代SLKが発売された当時は可也の話題を呼んだものだった。
もっとも、完全なフルオープンの癖に普段は完全なクローズドボディという一台で二台分に使えるという発想は、何となくミミッちいというか庶民的発想でもある点が総額七百数十万円のクルマとしてはセコイという意見もある。
それなら、千数百万円のSLはもっとセコいという事になるが、これはメルセデス的とうか、ドイツ丸出しの合理性と考えよう。
いよいよオープン走行を始めると、流石にこのクラスのオープンらしく風の巻き込みも殆ど無く、外部からのプライバシーの問題も心配ない程に囲まれ感があるので、天候さえ良ければ常時オープンで走行していても全く不安はない。
試乗したクルマにはオプションであるアクリル製のデフューザーが左右シートのヘッドレストの隙間の部分に装着されていた。これはボクスターとほぼ同じ構造だったから、このデフューザーの効果は結構あったのだとは思うが、SLKのオープン時の快適性がトップクラスなのは間違いない。
噂によれば、メルセデスでもSLとか、価格的に更に上級のアストンマーチンなどのオープンの快適性は半端ではなく、あたかも空気の屋根の下の室内に居るが如くと言われている。
残念ながら、このクラスのオープンの経験がないので何とも言えないが、同じ3.5ℓエンジンを積んだSL350は1113万円と441万円も高い。この差額でC180を買っても未だお釣りが来る程の価格差なのだか
ら、その分良くて当たり前とも思うのだが。
走行中の剛性感も充分で、オープンとしてはダントツの剛性と言われるボクスターと比べても決して引けをとらない程で、走行中にルームミラーを見ても像が常に振れている、所謂スカットルシェイクの兆候は全くない。
ボディの出来の良さは流石にメルセデスで、最近チャチくなったと批判も多いブランドだが、少なくともSLKに関しては手を抜いた形跡はない。何しろライバルはポルシェなのだ
から半端なものでは
対抗できない事には間違いない。
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スチールルーフをトランクに収納中のところ。 |
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バリオルーフの最大の欠点は狭いトランクルーム。 |
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SLK350なら充分過ぎる動力性能と、安定して誰にでも安全に操舵できるにも関らず結構クイックなステアリング特性とくれば、残るはブレーキ性能が如何かということになる。
本来メルセデスのブレーキは前後とも対向ピストンキャリパーを使用していたが、先代Cクラス(W202)からフロントがフローティングタイプのキャリパーになってしまった。Eクラスも2世代前(W210)、即ち最善か無かという理想主義からコストダウンを意識した4つ目のEクラス
になった時からはCクラスとほぼ同等のキャリパーを装着してしまった。Eクラスは次のW211(現行)でフル電子制御ブレーキのSBCを採用したが、
これが大失敗でリコールを2度も出してしまい、100年以上に渡って築いたメルセデスの信頼性の貯金を僅か3年ほどで殆ど使ってしまい、遂には販売台数で倍以上の差を付けていた筈の二番手
、BMW5シリーズに追いつかれてしまった。それでも、天下のメルセデスの事だから、手をこまねいて見ているとも思えないので、これから安定首位を奪還すべく対策をしてくる
に違いない。
その第一弾かどうかは判らないが、昨年のマイナーチェンジを機にEクラスのフロントキャリパーがアルミ対向4ピストンとなっていた。
最近のCクラスのブレーキフィーリングは他社に比べて独特だった。普通は踏み初めに遊びがあり、それを過ぎると急に重くなって、そこからが本来のブレーキングとなるのだが、
Cクラスでは最初から遊びが殆どなく、少し踏んでも行き成りブレーキが効きだす。これはキャリパーによるパッドの隙間を非制動時に最小限にしているからで、走行中は常にパッドがローターを擦っている状態に
なっている。
これに対して、今回のSLKは世間一般のブレーキと同様に効き始めるまでに遊びがあった。実際にフィーリングとしては、SLKの方が操作し易いのは事実だから、これは改良と思っても良いだろう。
Eクラスは電子制御だから本来遊びはなく、この面ではCクラスの制動フィーリングはEクラスの電子制御に合わせたのかと思っていた。それが、今回のSLKで変わったのは、キャリパーがフローティングから対向ピストンになったからなのか、それとも電子制御を諦めたから同じフィーリングにする必要が無くなったからなのか?
では、実際の制動性能はと言えば、勿論適度な踏力で良く効くしストロークも適度だから、街中の普通の用途では全く不満はない。最近の2〜3年間で国産車も含めてブレーキ性能に関しては随分と良くなった。
試乗結果がボロクソのブレーキなんていうのはRHD化にあたって、マスターシリンダが左側にあるLHD用を流用したインチキな手抜きRHDの一部輸入車のみだ。 |
フロントは225/45R17タイヤを装着する。 |
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リアはフロントと異なり245/40R17タイヤを装着する。 |
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フロントのブレーキはアルミ製の対向4ピストンキャリパーとドリルドローターというボクスターと同等の立派なものを採用している。 |
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リアのブレーキは鋳鉄製の対向2ピストンキャリパーとソリッドロータで、メルセデスのサルーンで御馴染みのものを流用している。 |
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メルセデスというイメージは一般的に安定性重視で操舵性もトロイと思われがちだが、最近はライバルのBMWを意識してか、結構クイックになって来ている。
とは、言ってもメルセデスはメルセデスだから、基本路線はポルシェのボクスターやBMWのZ4とは多いに異なる。この辺の個性はサルーン以上に明確だから、ユーザーにとって見れば選び
易いこともある。 SLKは予想したとおりに良く出来たクルマだった。今回試乗したのは上級モデルの3.5ℓ(672万円)だったから、動力性能に対してはボクスター(2.7)に比べても十分太刀打ちできる程だった。SLKにはバリエーションとして
他にSLK280(3ℓ、231ps、609万円)とSLK200コンプレッサ(1.8ℓスーパーチャージャー、163ps、546万円)がある。
SLK280との差は63万円だから、この程度なら多くのメルセデスユーザーは350を選ぶのではないだろうか?SLK200Kの場合は、その差は126万円となり無視できない差ではある。
子育ても終わり、住宅ローンの完済にも目処が付き、定年まで残すところ10年を切ったオトウサンとしては、今まで我武者羅に働いた自分への労りとして、そろそろ人生を楽しんでみようかなんて考えてみたりする。
そこで、今まで走れば良いと思っていたクルマに、少し贅沢してみようなんて考えた時に思い浮かぶのはオープン2シーターだ。低い2シータースポーツをオープンにして颯爽と走る白髪の熟年夫婦というのは、イメージとして実にカッコが良い。
と、ここで思い浮かぶのはマツダロードスター。はい、勿論良いクルマですよ。否定はしません。でも、今までの苦労を労うのにはチョット寂しいような気もするなんて言ったら、マツダ
ロードスターのユーザーからヒンシュクを買いそうだが、
もしも、多少の無理をすれば600〜700万円程の予算を確保できるのなら、メルセデスSLKを候補とすることは実に自然だと思う。ボクスターに比べてマニアックな点では劣るとしても、大多数のドライバーには寧ろSLKの方が合っているのは間違いない。
予算があればSLK350が、パワーの余裕と言う面ではSLKのキャラクターに合ってはいるが、特に動力性能を気にしないのなら、SLK200Kでも十分だろうし、これなら600万円代の前半で何とかなる。
問題はBMWやポルシェのデーラーは試乗車が豊富に用意してあるので、Z4やボクスターの試乗は比較的容易だし、場合によっては排気量の違いを乗り比べて、Z3なら3.0と2.5の違いを自分で納得できるが、
メルセデスの場合はSLKの試乗車と言うのは滅多に無いようなので、自分で乗って確認したいという場合に困ることだ。とは言え、この辺の問題は担当セールスにヤル気があれば何とかクリアするだろう。
ここまでの話から、成る程とその気になった1950年代生まれのあなた。 どうです?オープン2シーター、欲しくなったでしょう。 後は予算を決めることです。それに当たっては奥さんと多少の外交交渉が必要だろうけど、
奥さんだって自分が助手席の住人になるのだから、この際予算を奮発したり、場合によっては長年貯め込んだヘソクリを放出してくれるかもしれない。
勿論、600万円も出すなんて不可能な場合の方が多いから、自分の予算内で決めれば良い。600万円とは言わずとも500万円ならBMW Z4 2.5辺りがあるし、400万円ならフェアレディZロードスターのベースグレードを目一杯叩けば何とかなる。
さて、如何なものでしょうか?
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