CROWN 3.5 ATHLETE (2005/10/30)
※この試乗記は2005年10月現在の内容です。現在この車種は新型にFMCされています。

 




クラウン2.5アスリート


FUGA 350


BMW 320i


BMW 325i


欧州車のパクリだのナンだのと言われているが、こうして見れば誰が何と言ってもクラウンだ。
レクサスISは勿論、GSだって敵わない、ジャパニーズオリジナルの高級感がある。しかも、レクサスより安い!

初代クラウンは1955年発売のRS型で、1.5ℓ、48psのエンジンを搭載していた。当時、ニッサンはオースチンを、いすゞがヒルマンを、そして日野はルノーをノックダウン生産していたが、トヨタは海外メーカーの力を借りずに独自にクラウンを開発した点は実にリッパと言うしかない。
この初代クラウンは何度かのビッグマイナーチェンジを受けて、最終的には1.9ℓ 90psのRS31型まで進化していった。RS型のデラックスタイプ(フロント1枚曲面ガラス、ラジオとヒーターを標準装備)であるRSD型の価格は当時110万円。100万円でチョッとした庭付き一戸建てが買えたそうだから、今で言えば、MBのS600Lどころか、ロールスやベントレー級の高価格車だったのだろう。

だから、当時、クラウンを買うのは中堅企業の社長さん。それにしても、当時の社長さんは家一件分でカローラ級のクルマを買い、これに運転手を付けて乗っていたのだから、時代の進歩には驚かされる。

そして2代目は1962年発売のRS40で、見た目には幅は広く、高さは低く見えて近代的なルックスになった。実際は初代最終型のRS31に比べて幅は変わりないのだが、高さが1530⇒1460と低くなったために、相対的に幅広でカッコ良く見えるようになった。
エンジンは初期のRS40型が直列4気筒OHV1.9ℓ 90psエンジンを搭載していたが、3年後の1965年には直列6気筒SOHC2ℓ 105psのMS41型が発売された。さらにクラウンSというモデルではSU型ツインキャブにより125psを発生した。
このRS40型はB_Otaku にとっては特別な思い入れがある。なぜなら、運転免許を取ったときに通った教習所がこのRS40を使用していたからだ。当時、クラウンは既に3代目のMS50型に移行していたのだが、当時高校生だった事もあり、学校の帰りに寄れるとうい条件で、あまり人気の無い教習所へ行ったために、旧型の車両しか無かったのだ。この教習車は走らない、曲がらない、止まらないの如何しようもない代物だった。RS40に比べたら、免許取得直後に乗ったベレットの何と安定していたこと。しかし、そのいすゞは既に乗用車から手を引き、トヨタは世界一に王手は掛けようとしている。企業の発展は技術より経営だとう見本を見るようだ。


初代クラウンRSD型(1955)。スタンダードのRD型に対してデラックスのRSD型はフロントが1枚の曲面ガラスで、他にラジオとヒーターが標準装備されていた。
ヒーターが標準でデラックスというのが時代を感じさせる。
1.5ℓ 58psのOHVエンジンを搭載していた。

2代目クラウンRS40型(1962)。初代に比べて見た目に広く低く、近代的になった。と、言っても5ナンバーサイズだから全幅1695mmは先代の最終型であるSD31と変らないが。1.9ℓ 90psの4気筒OHVエンジン搭載だが、その後6気筒2ℓのSOHC、105psのMS41型が1965年に発売された。

クラウンはその後も代を重ねて、2003年12月に12代目が発売された。この12代目は今までとチョット違い、クラウン=年寄りクルマで乗り心地はフワフワ、ステアリングはグラグラ、室内は演歌調の豪華ケバケバというイメージを一新するべく、メーカー自らゼロクラウンと呼んで、そのコンセプトの路線変更をアピールしたのは記憶に新しい。

この、初期のゼロクラウンを買ったユーザーは、結構初期トラブルにあったという話を聞くが、皮肉にも、それは12代目が本当に全てを一新した証拠に他ならない。欧州車は6〜8年でのフルモデルチェンジをした場合、少なくとも最初の1年は手を出さないほうが無難だというのは有名な話だが、これを聞いた一般ユーザーは国産車の方が技術が上だから初期トラブルがないと思っている。確かに生産技術や品質管理に対する日本のレベルは高いが、実は国産車というのはフルモデルチェンジといっても中身は変わらず。見掛けだけ何ていうのが多いし、プラットフォームを代えたといっても、重要部分は旧型からの使いまわし、何ていうのが結構多い。ところが、ゼロクラウンはプラッオフォームもエンジンも、それどころかサスやダンパーやブレーキキャリパー等の主要部品も全て一新した。欧州車だってエンジンだけは旧型と同じで立ち上げてから2年程度後に新型を積むのが通例だから、ゼロクラウンの初期トラブルが多いのは当然だし、要するに欧州車以上の本格的なフルチェンジだった訳だ。

当時、早速2.5アスリートに試乗をしてみたが、成るほどクラウンのイメージを一新するかの如く、従来に比べてクラウンという名前が信じられないくらいに(だからゼロクラウン?)シッカリした足回りだった。その後、3ℓのロイヤルサルーンにも乗ったが、こちらは従来のクラウンの延長上にあるものの、先代のように危険な程にフラフラと不安定で、乗り心地に徹した乗り味に比べれば、これまた遥かにシッカリしていて、十分に許容範囲だった。また、新開発のV6エンジンは、2.5ℓ版でも十分な動力性能を発生していたし、3ℓに至ってはBMW530iと比べても遜色ない程の加速性能を見せてくれた。と、言っても残念ながら加速時のフィーリングは圧倒的に530iの勝ちだったが・・・・。

そのゼロクラウンが発売後約2年でのマイナーチェンジを受けたが、その目玉はなんと言ってもアスリートに3.5ℓが設定されたということだ。V6 3.5ℓは話題のレクサス車用として新規に開発されたもので、トヨタブランド車には当分は搭載されないであろう、との憶測を見事に崩して、GS350発売から僅か2ヶ月後に、同じエンジンをクラウンアスリートに積んでしまった。もしかしてトヨタの本音は、海外から帰ってきた生意気な妾の子(レクサス)より、長年同居している長男(クラウン)の方が可愛いのだろうか?なんて思いたくもなるというものだ。
こうなると、50万円余計に払ってGS350を買ったユーザーは如何思うのだろ。クラウンなんかとは違う、Eクラスや5シリーズのライバルを買ったのだと満足できるのだろうか?

と、言うわけで、急遽3.5アスリートに試乗と相成った。


後ろから見ても安定したデザインで、何やらホッとする。
エンブレム類でこのクルマが3.5である事を示すものは何もない。

レクサス専用と思っていた3.5ℓ V6エンジンを何の躊躇も無くクラウンに載せてしまった。
グリルがボンネットと一緒に開くのは、何やら高級感がある。富裕層向けのGSはこうは成らないが??

試乗車の3.5アスリートは467.2万円で、この上にレザーシートやナビがG-BOOK対応なるなどの”Gパッケージ”という上級グレードがあり、こちらは540.75万円となる。

最初にショールームに展示されていたアスリートを見て思ったのは、ISは勿論、GSも全く敵わない程の独特の高級感を感じる事だった。今まで、気が付かなかったが、鳴り物入りのレクサスが何やら無個性で、特徴が無く、これを所有しても殆ど喜びを感じないのではないかと思ったのに比べ、流石にクラウン!一部ではボンネットのラインがドイツの某車のパクリだのなんだの陰口を叩かれているが、どうして、レクサスには無いオーラを放っているではないか!
伊達に40年、12代に渡って国産車のトップに君臨してきた(最近はセルシオに王位を譲ったが)実績を持っている訳じゃない。ほんの2ヶ月前に国内展開したレクサスとは訳が違う、と言う処だろうか。


リアシートはレクサスGSに比べても十分な広さがある。特に天井が低いGSに比べて、居住性には圧倒的な優位がある。クラウンはオーナードライバーのみならず、ショーファードリブンでも使われるからか?こういう点でもGSではクラウンの代わりにはならない。

アスリートの内装色は標準がグレーとなる。写真はオプションのブラック。これだと、部屋中が真っ黒けとなる。

ドアを開けて乗り込んで、これぞクラウンというモケットシートに腰を下ろせば、その座り心地は、これまた国産高級車の定番で、柔らかく腰がないが、良く言えばシットリとしている。実は外観同様に、少し前に乗ってガッカリした、レクサス各車の妙に欧州車を意識した、それでいて、見かけの割には座り心地の悪いシートと比較をすれば、短距離で渋滞の中を走る日本の高級車であるクラウンのシートとしては、此れは此れで良いのかも知れないと思ったりもする。しかし、基本的にクラウンのコンセプトが嫌いなB_Otaku に、クラウンを納得させる原因となったのがレクサスとの比較だとすれば、トヨタとしては成功だったのかもしれない。なにせ、世界一が視野に入ってきたトヨタの事だから、こんな事までお見通しの確信犯的な戦略だとしてもオカシクはない、と言ったら勘ぐりすぎだろうか?

アスリートの内装はモケットシートの場合はダークグレーが標準だが、試乗車はオプションのブラックの内装だった。確かに日本で販売されている欧州車の多くがブラックの内装だが、しかし、アスリートのブラックは、どちらかといえば艶消しの真っ黒だから、車内は何やら薄っ暗い。以前乗ったマークUのiR-Vも真っ黒だったから、トヨタのスポーティ感覚は真っ黒の内装なのだろうか?

車内にはトヨタ得意の木目風パネル(トリム)が張ってあるが、この木目もブルーイッシュダーググレーというグレー系のニスを使って仕上げたウッドパネルを模して創られたプラスチックだ。(何やらややこしいが)
これが、またレクサスの本木目よりも本木っぽいという皮肉な結果になった。やはり、トヨタ車はフェイクウッドを貼らしたら世界一だ!


ブルーグレーの木目風トリムが貼られたダッシュボードやグレーを基調としたアスリートの内装
はロイヤル系とは異なる雰囲気がある。レクサスGSの本木目よりもアスリートの木目風の方が
高級感があるのは何故だろうか?

エンジンを始動するにはスマートキーと呼ばれる電子キーを持って(またはその辺に転がしといて)ブレーキペダルに足を乗せながらスタートボタンを押すとエンジンは始動する。それと共にメーター類に明かりが灯り、青み掛かった白で透過されたメーターが浮き上がる、トヨタ式に言えばオプティトロンメータと言う奴だ。レクサスの時は、欧州車を気取っているのに、この国産車丸出しのメーターに違和感があったが、クラウンとなれば話は別で、好き嫌いは別にして、このクルマの内装を始めとした雰囲気に実に合っている。
メーターは中央に大きな速度計があり、左には殆ど見る人も居ない回転計があり、右には回転計と同程度の指針を持つ大きな燃料計がある。このメーター配置は実にクラウンらしく、例えばポルシェのメーターが正面に大径の回転計を置き、左に小さな速度計があるのと同じくらいに、クルマのコンセプトを主張している。

スタートに先立って駐車ブレーキを解除しようと思って、左足元のべダルを踏んだがリリースしない?良く見たらダッシュボード上にリリースレバーがあり、此れを引くと駐車ブレーキが解除された。あれっ?そう言えば、富裕層向けのレクサスは押すたびにオン/オフを繰り返す、言ってみればマークXと同じ廉価版だった筈。しかし、クラウンにはレバーでリリースする、メルセデスなどでお馴染みの機構が備わっていた。

3.5ℓになったことで最高出力は315ps!この数字を見れば、ポルシェカレラの325psと10psしか違わないのだから、どんなに凄いかと期待に胸を膨らませて走り出したが、どうもそれ程でもない。勿論、踏めばグングン加速はするが、3ℓのロイヤルだって凄く速いことに変わりない。これに比べればマジェスタの低速からのトルクは、これぞ高級車の余裕というほどに気持ち良く、大トルクを生かして寧ろ安全に走れる。
レクサスGS350の時にも書いたが、この3.5ℓは無理してパワーを絞り出したために低速トルクが痩せてしまい、何とも高級セダンには似つかわしくない特性になってしまった。こんな特性はホンダにでも任しておけば良いのに!
これに比べると、同じ3.5ℓでもフーガの場合は、低速からの大トルクでグイグイと引っ張る、なんともアメリカンで気持ちが良い。結局3ℓで十分なのに3.5ℓにしたことで価格も上昇したのだから、ユーザーにとっては有りがたくは無い結果と成ってしまった。

駐車場から表通りに出る時に、まず感じるのは、細くて径の大きなステアリングホイールの違和感だ。最近のクルマは小径で太目が流行っているから、細身で大径というのは久しぶりだ。これは10分も乗れば慣れるから、実際に、このクルマのオーナーになれば問題は無いだろう。
そして、もう一つ、即座に感じるのはステアリングの軽さだ。レクサスも軽かったが、軽いだけでなく変にゲインが高くて不安定だったのに比べると、こちらは正統的なオヤジ高級車の軽さで、軽いと共に適度にトロイ。この点では2年前に乗った2.5アスリートはもう少しシッカリしていたような気がするが。
トロイといっても、ステアリング外周で指3本分も切れば、チャンと曲がり始めるから、その気になれば適度にスポーティーな運転も出来る。

試乗コースは狭くてクネクネとしたワインディングだらけだったので、3.5アスリートのコーナリング特性はタップリと試せた。実はこのコースは2年程前に2.5アスリートに乗ったときと同じコースだった。
3.5アスリートのコーナーリングは2.5と同様にスポーティでもワクワクもしないが、アンダーも弱く安定してコーナーをクリアーしていくし、ロールだって少ないから、普通のドライバーが乗るには実に適している。旧型のロイヤルのように、危険とも言える程にフワフワした特性こそがクラウンだと思っている人が現行アスリートに乗れば、見事に裏切られる。ただし、気のせいか以前乗った2.5の方がシッカリしていた。言い換えれば新しい3.5は少しロイヤルの方向へ、すなわち旧来のクラウンらしさの方に少しだが、方向修正したような気がする。


これぞクラウン!と言いたくなるデザインと質感は、無理に欧州車の真似をしているレクサスに比べて、実に旨くまとめている。

トヨタのフェイクウッド技術は世界一!レクサスの”本木目”よりも高級感で遥かに勝る。ATセレクターのゲートのメッキ仕上げや、ポジションの表示なども日本的高級感と作りの良さで、改めてトヨタの真髄を見た気がする。

欧州車がライバルというレクサスでは違和感のあるオプティトロンメーターもクラウンとなると実にシックリする。
180km/hまでの速度計も返ってクラウンらしく見えるから不思議だ。

写真のグリーンの縦線がある(実はビニールのカバーが外してないだけ)レバーを引けば、駐車ブレーキは解除される。

ここまで読んでいただけたなら、当然想像できるだろうが、乗り心地はすこぶる良い。それだけでは無く、クルマ全体の雰囲気が柔らかい。シートも走りも、操作も全てが、なにやら柔らかい。とに角、これはこれで、心地良い。ただし、最近流行の”剛性感”という面ではドイツ車とは可也感覚が違うから、ガッチガチの欧州系で、硬いが不快ではない、要するにBMWに代表される乗り味が一番と思っている人から見れば、アスリートとは言え、クラウンはクラウンだから、これにはチョット満足出来ないだろう。
そういう人には寧ろフーガが勧められる。フーガはBMWの旧5シリーズ(E39)を目標に開発されたと公言しているだけあって、本当に乗り味が似ている。フーガがBMW5erなら、クラウンはメルセデスEクラスというところか?そういう意味では日本の2大メーカーの上級セダンのコンセプトが全く違うのは、選択肢という点ではユーザーにとって有りがたい。が、実際にどちらを選ぶかとなると、仕事上の付き合いで、どちらかに決めたりする例が多いのだろうが。

2年前に2.5アスリートに乗った時、クラウンとしては実にシッカリした車に進化したのは良かったが、ブレーキに関しては旧来のクラウン丸出しで、とに角効かないしストロークは長く、フィーリングもグニャっとしていた。ところが、今回の3.5のブレーキは十分な剛性感と効きを達成していた。

乗り出す前にショールームにある3.5アスリートのフロントホイールから覗くキャリパーはと見れば、何とレクサスGSなどに採用されていて、元は現行セルシオから採用されているアルミ製の4ポットオポーズド(対向ピストン)が装着されているではないか!エンジンのみならず、ブレーキキャリパーまでがGSと同じ。このキャリパーはISの場合は350のみで、IS250には搭載されていない。

もっとも一概にオポーズドだから良いとは言えないし、何よりトヨタのオポーズドは決してカッコ良くない。ブレンボーのように如何にもメカメカしい雰囲気の溢れているカッコ良さが無い。何かノペーッとしていて、色もアルマイト処理か何かなのだろうが、実に冴えないし、華がない。せめて黒光りとか、真っ赤とか、派手な黄色とかのピカピカ塗装にトヨタのロゴが輝く、などとすれば更に映えるのにねぇ。

試乗後にボンネットを開けて、ブレーキのマスターシリンダーらしき部分を見れば、恐らくバキュームブースターと思えるドラムが見えたから、これはレクサスGSやマジェスタのように、フルエレキ制御では無さそうだ。これはコストダウンということもあるだろうが、メルセデスEクラスで失敗したことで、信頼性に不安があるブレーキバイワイヤシステムをあえて使わなかったような気がする。伝統のクラウンは変なトラブルで名声に傷を付けたく無かったのではないか?この点、新興勢力というか、所詮成り上がりのレクサスとは訳が違う、なんて言ったら、レクサスオーナーが怒るだろうなぁ。


アスリートは全グレードとも前後共通で8J18ホイールと225/45R18タイヤを装着する。なぜかGS350の225/50R17よりも1サイズ上となる。

フロントキャリパーを見れば、何とレクサスと同じアルミの4ポット対向ピストンを装着している。エンジンのみならず、ブレーキまでレクサス並みだ。しかし、折角のアルミオポーズドなんだから、もう少しカッコ良くならないなだろうか?

ブレーキマスターシリンダはバキュームサーボのようだ。
GSのようなブレーキバイワイヤを使わなかったのは信頼性の問題か?それともコストダウン?

リアキャリパーはレクサスIS250と同じで、GSやIS350よりワンランク落ちる。レクサスとの多少の差別化を考えたのか?

アスリートは3.5ℓの発売とともに従来の3ℓが廃止された。3ℓは441万円だったから3.5ℓ化により26万円の値上がりということになる。これを安いと見るか、高いと見るかはユーザー次第だが、少なくともレクサスIS350の480万と比較したときに、3.5アスリートの467.2万円は安いと感じるだろう。車格的にはISよりもGSに近い訳だから、GS350(520万円)と比べれば約50万円安い。それに、アスリートとレクサスの値段を比べてみると、レクサスは消費税込みで端数の無い値段なのに比べて、アスリートは端数がでている。これはアスリートが綿密なマーケッティングと原価計算の結果として得られた価格なのに対して、レクサスは適当にぶっ掛けてキリの良い数字にしている証拠じゃないかな?

レクサス専用と思われていた3.5ℓエンジンを、突然クラウンシリーズに載せて、しかも、これまた流石レクサスだと思わせたアルミ対向4ピストンのフロントブレーキまでも載せてしまった。さらには、実用的にはルーフが低くてリアシートが事実上使い物にならないGSに比べて、アスリートはショーファードリブンで使うことも出来るくらいに広い後席スペースを持つ。もしかすると、レクサスは単なる当て馬で、トヨタ自身、売る気なんてないのではないか?レクサス騒ぎで、本来のトヨタブランドの高級車を、より高い値段でスンナリ売れれば、レクサスの目的は達成されると思っているのではと勘ぐりたくなってしまう。

実は、今回のMCで2.5アスリートは待望の6速ATが搭載された。今までマークXの2.5でさえ載せていた6ATがクラウンにやっと載ったことになる。2.5アスリートはナビがオプションであることもあり、371.7万円だから、ナビなんてガキの玩具はいらねぇという昔かたぎのオーナー(本当はナビの使い方が判らないだけだが)ならば、実にコストパフォーマンスが良い。390万円(しかも値引きは一切なし)のレクサスIS250と2.5アスリートを並べたら、世間様はドッチが高級車と思うかは言うまでもないだろう。
と、言う訳で、B_Otaku 個人としては、2.5アスリートがお勧めだ。グイグイと加速するトルク感が大好きな土建屋の社長タイプは別として、極大人しい紳士的な走りをするユーザーなら2.5で十分だし、外観上での違いは殆ど無い。

それでは、この価格帯での定番である、BMW3シリーズやメルセデス(MB)のCクラスと比べて如何かと言えば、これはもう比較するのが不可能という程にコンセプトが違う。どちらが良いかではなく、どちらが好きかで選ぶしかない。ただし、最近はMBもBMWもトヨタ的豪華さを良く研究して、以前のように400万以上も出して、このチャチな内装はナンじゃコレャ!という事はなくなった。また、クラウンもチャンと”真っ直ぐ走る”ようになったので、その差は縮まってはいる。とは言っても、未だに両者には歴然とした違いがある。特に感じるのは、欧州車が運転中のドライバーに対してステアリングやボディ全体から路面情報を伝える点において、国産車は未だに敵わない点だ。良く出来た欧州車は、国産車に比べてマルでスピード感が異なり、安全運転をしているつもりが、速度計を見たらアッと驚くほどのスピードが出ていたなんていうことがある。最近はクラウンにしてもフーガにしても以前に比べれば、このスピード感の無さをも持ち合わせてきたが、特にクラウンの場合は、ただスピード感が無いだけというか、欧州車のように本当に危険なときには、その状況が手に取るように判るし、例えば雨で濡れた路面を走れば、タイヤのグリップが落ちているのが手に取るように判り、それどころか、狭くて歩行者が多いなどの危険な状況ではクルマの視界や運転姿勢など全てが手伝って、これまた危険を察知できるということが、国産車には欠けている。この運転中のインフォメーションを大切にするなら、総額450万以上出して、4気筒のC180Kや320iを買うしかないし、欲を言えば325iなどの550万円級という投資が必要になる。

では、見方を変えて、世間の”目”から言えば、クラウンは正統派の日本人のための、冠婚葬祭何でもありのフォーマルウェアーだから、中小企業の経営者がクラウンに乗っていれば、健全経営の社長さん、開業医ならば良心的な先生と世間は見る。これが、小さくても”ベンツ”になんて乗ったらば、あの会社は何か悪い事をやっているんじゃないか?とか、”医は算術”の銭ゲバ医者だなんて陰口を叩かれたりする。

クラウンの販売台数は05年上四半期で月平均6000台弱と、発売後1年以上経過して、新車効果もないのに、しかもセダン冬の時代と言われる昨今でさえ、総額400万のクルマがコンナに売れるている事実は反論の余地は無い。恐れ入りました!