BMW 325i (2005/10/9)

 




アウディ A4


BMW 320i


BMW 330i

 

 

     
      今回試乗した325iはダイナミックパッケージ装着車だが、外観上はノーマルとの違いはホイール&タイヤのみ。

BMWの新型3シリーズ(E90)については、既に4気筒2ℓの320iと6気筒3ℓの330iに試乗している。その中間グレードである325iについては、身近に試乗車が無かったこともあり、後回しとなってしまったが、その背景には他のクルマに乗るのが忙しかったことと、BMWに詳しい(経験のある)人ならは、320iと330iの結果から325iがどんなクルマかは想像できるとも思っていたからだ。
ところが、只今話題独占中のLEXUS各車に試乗した際に、特にBMW3シリーズのライバルと言われているIS250とIS350に試乗した際に、そのフィーリングを忘れないうちにと思い、偶々試乗車が身近にあったこともあり急遽325iに試乗となった。実は、最初はスペック上のライバルであるIS250との比較版を創る予定だったのだが、結論を言ってしまえば、IS250ではとてもではないが325iのライバルには成り得なかった。と、言っても折角だから、なるべくIS250を引き合いに出すことにするが、もしも、レクサスにISを注文したか、既に納車済みのユーザーがいたらば、この先は読まない事を進める。幾らクルマは人それぞれのフィーリングだから、色々な意見があるとは言っても、やはり、自分で数百万の投資をしたクルマをボロクソ言われるのは耐えられないだろうから・・・・。

既に320iと330iに試乗していることから、今回は主として、それらとの違いについて延べることにする。E90の詳細については、これらの試乗記を参照されたい。


うしろから見てもノーマルのE90とほぼ同じ。
320iとは片側2本出しの排気管で区別できるのはE46と同じ。

試乗車にはサンルーフが装着されていた。構造的にはE46と同じで、サンシェードは手で引いて開ける。閉まっているサンシェードをガラスと一緒に開けることも出来るが、これをやるとE46は確実にガイドのプラスチック部品がぶっ壊れた。E90は改良されたか?

試乗車は325iダイナミックパッケージで標準の325i(525万円)に対して、26.2万円アップとなる。ノーマルとの主な相違点は、スポーツサス、マルチファンクション・スポーツレザー・ステアリングホイール、17インチホイール+225/45タイヤ、スポーツシート(レザー&クロスコンビ)&ドア内張りといったところだ。試乗車には他にサンルーフ(13.65万円)が装備されていたから、これで総額は約565万円也となる。

BMWの場合、スポーツ系に振ったモデルはMスポーツと呼ばれるが、これは基本イメージがM3、M5などになる。新型発売当初はMは旧型のままなので、ダイナミックパッケージという、外観はそのままで、タイヤとサスと内装をスポーツ系としたパッケージオプションが用意されている。だが、しかし、極最近発表されたワゴン(325iツーリング)のカタログには、大型のフロント・エア・ダムと装着したM-sportパッケージが設定されている。E90のM3は未だ発表されていないが、それまで待っていられないという事か?

試乗車にはオプションのサンルーフが装着されていた。何故か、メルセデスやBMWはサンルーフ付きが人気で、メルセデスなどはEクラス以上はサンルーフ定番だし、とりわけ、危ない筋の車には必ずサンルーフが着いているようだ。
E46のサンルーフは本体のガラスの開閉機構は実に精密に出来ているのに、手動サンシェードのガイドが信じられないくらいにチャチなプラスチック部品なので、ガラスを開ける前に必ず手動でサンシェードを開けておかないと、直ぐにぶっ壊れる!走行性能や安全性能に関係ない、便利機能に対するイイカゲンな設計には唖然とする。ところで、この問題はE90では改善されたのだろうか?


E46に比べて十分に広くなったリアスペース。レクサスISよりも確実に広い。ダイナミックパッケージ装着車のために、シートはレザーとクロスのコンピ。

フロントシートはE46時代のM-sport,よりも座り心地が向上している。それ以外は見慣れたE90の風景だが、レクサスと比較すれば、これはもうISなど敵ではない・・・というのは個人的見解だが。でも3シリーズよりもISの方が良いと思う人はいるのだろうか?

ドアを開けて乗り込むと、オプションのレザー/クロスコンビのシートは実に座り心地が良い。E46はシートが小ぶりで、この辺が数少ない欠点だったが、E90のシートはシッカリと改善されていた。その中でも、今回のスポーツシートは左右のホールドも実に良いし、E90の中でも最良だと思う。もっとも、チョッと前に乗った自称ライバルのレクサスISのシートが見掛け倒しでガッカリした後なので、より良く感じたという点を差し引いても、このシートの座り心地は良かった。
室内のトリムは標準の325iと同じウッド(ポプラ)パネルで、M-sportや本物のMによくあるアルミパネルではない。あのアルミのパネルというのはドイツ人の感覚では高級でスポーティなのだろうか?数年前にメルセデスのC200スポーツクーペに乗った際に、殆どパチンコ屋の内装みたいなアルミのキサゲ模様のトリムが張ってあった。この時は廉価版(400万円代)のメルセデススポーツだから、手を抜いて安物使ったんだろうと思っていたが、後で見たSL(当然1千万円超)も同じようなパネルが貼ってあった。BMWもM5を筆頭に高価なスポーツモデルには定番のように、このアルミパネルが貼ってある。
最近は大分慣れたが、B_Otaku は血中ドイツ人濃度が低いので、未だにあれが高級でスポーティという考えにはシックリいかないところがある。

本題に戻って、このシートに座って、このダッシュボートを見つめて、ドアを軽く引けばズンッという音と共に、確実のドアがロックされる雰囲気を味わえば、レスサスISが3シリーズの敵では無いことに気が付くだろう。


325iに共通なポプラウッドのトリムが貼られたダッシュボードやセンターコンソール。個人的にはメルセデスやBMWの高級スポーツモデルに定番のアルミトリムよりは、この方が好ましいと思うのだが?ウッドが好きなのはオヤジの証拠か?
それにしても、これを見た時点でレクサスISが候補から外れてしまう人が少なくないのではないか?

BMWの新型6気筒エンジンN52は既に330iと630iに乗っているが、これらは旧M54エンジンに比べて、滑らかさや高回転まで回した時のフィーリングの良さと言う点では一歩後退していた。勿論、他社のエンジンに比べれば圧倒的にスムースで、今や事実上唯一の量産型直列6気筒であることを再認識させられるのだけれど、何しろM54の4000rpmから6000rpm超えに至る音と振動、それにトルクの出方が余りにも官能的だったために、これと比較したN52の評価が、フィーリング面では如何しても劣ってしまう。

それでは、今回の2.5ℓはと言えば、排気量が小さいこともあり、スポーティなフィーリングと言う面では3ℓよりも上だった。先代(E46)330iは硬いサスと力強い排気音でスポーツ指向に振っていたのに比べて、E90−330iでは高級車としての位置づけになっていた。今回の2.5ℓで意外だったのは、エンジンの回転と共にヒューンというメカニカル音が聞こえることで、この音は新型のポルシェボクスター(987)に似ている。ボクスターは水冷エンジンなのに何故か旧世代の空冷ポルシェを彷彿させるような、吸気音のような、ファンのような独特の音がするが、何故か325iも似たような音がする。この音が、旧型とは違う意味で何やらマニアックだ。
では、レクサスIS250と比べて如何かといえば、あちらはマークXと共用の大衆エンジンだから、バルブトロニックやら、マグネシュウム合金製エンジンブロックなどと、これでもかの先進技術と高価なパーツを満載のBMW製N52と比べるのは、近海本マグロと冷凍キハダマグロを、どちらもマグロとして比べるようなものだ。でも、本マグなんて高いだけで、どこが旨いんだという階層もいるし、それは比べても味の違いが判らないか、本マグロを食べたことが無いかのどちらかが原因だ。あれっ、これって、何やら国産車と輸入車論議に似ていないかな!

動力性能は当然ながら、320i以上で330i以下だから、普通の用途には十分だし、その気になればワインディングを攻めてもパワー不足に泣くこともない。ただし、圧倒的なパワーでグイグイと引っ張るわけでもない。レクサスIS350と加速感を比べれば当然ながらレクサスの勝ちだが、それだけを求めるのなら”ランエボ”や”インプSTi”の手を選べば、更に速いし、安い。
現在1シリーズから5シリーズまで全てのATは6速となったが、ZF製のATは相変わらずダイレクト感があり、トルコンATとしては最高の出来だ。しかし、最近は国産車、特にトヨタ系の採用するアイシン製の6ATも中々良くなったので、ミッションという面ではBMWが大きくリードしているとは言えなくなってしまった。すこし前までの国産車は動力性能云々の前に、トロい4速ATが全てを台無しにしていて、その代表例がスカイライン250GTだった。トヨタでもマークX以降の新型車、それもマークX以上の車格には6ATが採用されているが、それ以下になると途端に旧式な4ATとなってしまう。鳴り物入りで日本に凱旋帰国したアヴェンシスも、古い設計の4ATを装着していた時点で商品として問題だったが、結局鳴かず飛ばずの結果となってしまった。

3シリーズのステアリングはMY(モデルイヤー)によって軽かったり、重かったりと、何やら常に迷いがあるようなところがあって、ユーザーからみれば結構迷惑なのだが、今回試乗した325iは重くてドッシリとしていた。新型のE90で感じるのは、320iから330iまで、どれもがE46に比べて良く言えば高級感が増し、悪く言えば軽快感で劣ることで、車格としては旧5シリーズ(E39)に近づいた感じだ。
IS250と比べると、一見ISの方がクイックに感じるが、冷静に見ればヤタラにゲインが高くチョロチョロと向きを変え、それでいて楽しくはない。マークXユーザーが乗り比べれば、流石にスポーツセダンと納得するだろうが、本物を知っていれば、あんな小細工に騙されることはないだろう。これに比べて325iは格が違う。IS250だって、400万も取るのだから、もう少し洗練された操舵感を実現するべきだと思うが。

中速コーナーを回ってみると、お馴染みのBMW独特のニュートラルな特性は健在だけれども、これまたE46のオンザレールな、コーナーに沿って自然に回って行くような、究極のニュートラルステアに比べれば、重いステアリングを僅かとは言えコーナーに合わせて多少の力で保持することが必要となる。
試乗コースには大型車の付けた大きな轍がアスファルトに出来ている道があったが、このときの挙動が何やら独特だった。すなわち、挙動はマイルドなのだが、ステアリングをグニューッと取られるので、一瞬、何だこれゃと思いながら、反対側に力を入れて修正するという感じで、E46のように適度に速くステアリングを取られそうになるが、咄嗟の修正は難しくない程度の挙動という、ある面、クルマ好きのドライバーを想定したような、実に上手い味付けとは異なる。試乗車がダイナミックパッケージの装着により、タイヤが標準グレードの225/50R16に対して225/45R17を装着している事と、スポーツサスを装着しているので、これが、標準グレードやハイラインパッケージなら、また異なったと思う。


ATのセレクターは上からP-R-N-DでDから左に倒してS、上で-、下で+のMTモードとなる。MTモードは-、+が他社と逆になっている。この辺は今更言う事でもないが。

レクサスのオプティトロンなどと比べて、オーソドックスで見やすいメーター。速度計の目盛は260km/hまで刻まれているのが、レクサスとの大きな違い。実際に出す出さないよりも、レクサスの180km/hフルスケールを見ただけで国産車であることを再認識させられる。

実は今回の試乗車は走行距離が5000kmと、試乗車としては乗っているほうだった。BMWの場合は、新車に比べて1万km程度まではドンドン良くなっていくので、普通の降ろしたての試乗車では本当の良さは判らないのだけど、その面では今回のクルマは条件がかなり良い筈だ。

以前試乗した320iも330iもマッサラな新車にも拘わらず、乗り心地が良かったが、今回数千キロ走行した325iは当然ながら乗り心地と安定性を両立している。オプションのスポーツサスと45タイヤを装着しているにもかかわらず、乗り心地が良いのは旧5シリーズ(E39)に似ている。
5シリーズと同様にサスをダブルジョイント化した事による最大のメリットは乗り心地の良さだが、そのトレードとして微妙な路面と状況、すなわち同じアスファルトでも柔らかいのかツルツルとしているのか、ザラザラなのかという情報が、これまた多少減ってしまったような気がする。E46だと、走行中に左に寄せるときに、左端の白線のペンキを微妙に踏んでいるのが伝わってくるのだが、これが、試乗車の場合は伝わり難いようだ。最近のBMW各車は標準でランフラットタイヤ(RFT)を装着している点でも、フィーリングに対してはマイナスだろう。勿論、RFTも良くは成ってきているが、走りを考えたらば、パイロットスポーツ2(PS2)あたりに履き替えれば、劇的に良くなるかもしれない。

325iのブレーキはフロントがアルミボディのキャリパーを装着しており、これは形状からして330iと同一のようだ。フィーリングは他の3シリーズと同じで、これは今や世界のスタンダードと成りつつある、ハイμパッドによる喰いつくような効きで、今更何もいう事が無いほどに完成されている。ただし、この点ではレクサスも可也良くなっている。IS250は3シリーズと同じバキュームサーボによるオーソドックスなシステムだが、フィーリングは3シリーズに似ている。それも、その筈で、レクサスIS、GSとも全グレードでフロントパッドはBMWと同じ独テキスター社製を使用している。この材質は、フェアレディZも使用するなど、最近の国産スポーツ車ではメジャーに成りつつあるが、最大の問題点はパッドの磨耗が早い事と、ローターの磨耗も早いので、メンテに金が掛かること。それに、ブレーキダストが甚だしく、1週間も乗れば、自慢のアルミホイールは真っ黒けになる。BMWオーナーなら当然のこととして受け入れるだろうから問題はないが、レクサスの場合は如何なのだろうか?

この欧州製と日本製パッドの違いは、材質そのものの違いによるところが大きい。パッドにはローターを引掻いて摩擦力を発生させるための繊維質が配合されている。昔はこれに石綿が使われていたが、ご承知のように環境問題で使えなくなった。その代替材として欧州材はスチール繊維、要するにスチールタワシを細かく切ったような、細い鉄の切れ端のようなものを使用する。このタイプはセミメタリック、通称セミメタと呼ばれている。これに対して、国産材はアラミド繊維を使用する。代表的商標名はデュポン社のケブラーで、防弾チョッキなどに使われるので有名だ。このタイプのパッドをノンアスと呼んでいる。
すなわち、欧州製のセミメタパッドはスチールタワシでローターを擦るから、食いつきの良い、高μを発生するが、鉄のローターを鉄の繊維で擦れば、両方共よく減るし、鉄の粉がでて、これがホイールを真っ黒、場合によっては赤っ茶けて、放っておくと取れなくなる。錆びた鉄の粉がアルミホイールに付くから当たり前だが。
これに対して国産のノンアスパッドは寿命やローター攻撃性では遥かに優れているし、ノイズでも有利になる。ところが、鉄の粉で擦るのと違って、どうしても効きがマイルドで、μ(摩擦係数)も低めとなる。おまけに原価が高い。何しろスチールタワシと防弾チョッキだから・・・。

と、まあ、この手の話は奥が深すぎて、あまり追求されるとボロが出そうだが、基本としてはこんなところか。


試乗車はオプションのダイナミックパッケージ装着のため、前後とも8J17ホイールと225/45R17タイヤを装着する。225iの標準グレードは7J16ホイールと225/50R16タイヤとなる。

225iのフロントは330iと同じアルミボディのキャリパーが装着されていた。320iはE46と同じ鋳鉄製のボディとなる。

今回は寧ろ325iのネガティブな部分を強調するような内容になってしまったが、他のクルマ、例えばマークXは勿論、例のレクサスだってマトモに比較したら、325iは賛辞のアラシとなってしまうだろう。だから、今回はチョッと厳しく、旧型E46に対して失ってしまった部分を穿るような事になってしまったが、325iがこのクラスのお手本である事に変わりはない。最近の国産車、特にレクサスクラスになると、ATやブレーキなどのコンポーネントの一つ一つは結構良い線を行っているのだが、クルマとしてまとめると大きな差がついてしまうのは何故なのか?
E90は大きくなったとは言っても、取り回しからくる使い良さや、ワインディング路で遊ぶには今だに適度な大きさなど、クルマ好きがオールマイティなファミリーカーとして所有するには、3シリーズほどピッタリなクルマは他に類を見ないのも事実で、伊達に登録台数でスカイラインより勝っているわけではないのだ。
まあ、これが逆に希少性という面ではマイナス要因になるのだけれど・・・・。

これで、320i、325i、330iと一通りの3シリーズに乗ったが、どれが良いかと言われれば、予算があって気に入れば330iも良いが、ハンドリングとエンジンの軽快さという面では325iも捨てがたい。それに330iは価格的にみて525iが買えるから、余程3シリーズに思い入れがあるとか、家の周りの道が狭い(東京の古い町並みは、山の手でも結構狭い路地があったりする)とかの事情がないと勧めるのは辛い。325iと320iは、予算が許せば325iだけど、なにしろ125万円の違いがある。
これは人それぞれで、4気筒の320iを否定する訳ではないが、BMWは6気筒という考えを持つB_Otaku としては今年(05年)末に発売される323iまで待つことを勧めたい。価格は480万円だから、325iより45万円安いことになる。それでも未だ高いがレクサスIS350のベースグレードと同価格だから、買う価値は十分にある(と思う)。といっても諸経費を含めれば550万円コースとなるから、プレミオ1.8を叩いて総額200万円の新車を10年振りに買った人からみれば、信じられない世界だろう。

BMW(勿論メルセデスも)の常として、毎年改良されることで、数年後には全ての点でE46に勝るクルマに進化しているだろう。それでは、初期型を買うのは損かと言えば、そんな事は無い。早く買えばそれだけ新しい世界に触れられるのだから、BMWの場合はパソコンと同じで欲しい時が買うべき時。そのうちモット良くなるなんて待っていたら一生買えなくなる。
ただし、余裕があれば、FMC後の初期型を買ったら、3〜4年後に後期型に買い換えるのが理想なのだけれど、この場合、最大の問題は予算の確保よりも、理解ある配偶者に恵まれることだろう。