BMW 116@ (2005/3/6)

 

 


BMW 120i


トヨタ マークX 250G


ホンダ オデッセイ


外観上一目でベースグレードと判ることはない。
グリルのメッキも120iと同じだし、ミラーや取っ手もボディ同色で、ホイールもアルミが標準装着されている。



リアのエンブレムを見れば116iと書いてあるから、これでグレードは判る。

昨年9月より日本国内でも発売が開始されたBMW1シリーズだが、9月の時点では120iのみで、118iと116iは’05年の春より入荷となっていが、その116iが遂に入荷したので早速試乗した。

1シリーズの価格(消費税含む)は116iが288.8万円、118iが324.5万円、120iが366.5万円となる。116iはドイツ本国ではベースグレードが17,000ユーロで、これにATなどのオプション(日本仕様では標準)分を2,000ユーロとすれば19,000ユーロで、1ユーロを135円とすれば256.5万円となり、国内価格(消費税別)275万円は妥当なところだ。その代わり、1シリーズはワンプライス制で値引きは一切無しとなる。

試乗車は赤の116iで特にオプションは付いていなかった。赤の1シリーズというのは現物を見ると可也イケル。それに赤はソリッドカラーだからメタリックのようにオプション価格(今時メタリックは7万円アップ)を取られない点でも買い得だ。BMW(メルセデスも)は廉価版と上位グレードでは外観に差を付けるのが従来までの定番で、例えばグリルのメッキが無いとか、ドアハンドルが素材色とか、今時スチールホイールにキャップが付いていたりする。ところが116iは120iと比べて概観上の大きな違いは見当たらない。強いて探せばホイールのデザインが異なりタイヤの幅が狭いことだが、殆ど誰も気が付かないだろうし、どうしても気になるならばオプションで簡単に変えられる。


元々全長の短い4気筒エンジンは、前後バランス命とばかりにコレデモかと出来うる限りに後方に載せられている。

リアハッチはBMWエンブレムを引くことでのオープンする。

タイヤハウスの張り出しがあるため、幅が狭いラッゲージルーム。このクルマはゴルフに行くには適さない!

運転席に座ってドアを閉めると、その音とフィーリングはBMWそのものだ。このドアを閉めたフィーリングはボディ剛性の副産物なのか、それとも意識的にやっているのか?何れにしても国産車が及ばない点でもある。

前回の120iのシートはオプションのレザーパッケージ装着だったこともあるが、座った感じは現行3シリーズ(E46)を完全に上回っており、設計時点の違いで流石に改良されていると感心したが、今回の116iのシートはE46と大して変らない。やはり価格差は伊達ではなかった。

内装は安っぽくはないが質素と言う言葉がピッタリで、よく見れば丁寧な造りと、素材だって悪くはないのだが、普通の日本人が見ればティーダの方が豪華と感じるだろう。ステアリングホイールがウレタン製であることも、ダッシュボード周りが一見してチャチに感じる原因だろう。この点でも120iの大げさに言えば5シリーズ的な雰囲気とは大いに異なる。


内装も基本的には120iと変らないが、昨年輸入された120iはオプションのレザーシートが装着されていたため、それに比べると質素だ。ステアリングホイールもウレタンが標準になる。

シート位置を合わせて、見かけはイマイチのウレタン製ステアリングを調整すると、廉価版とは言えチルトのみならず前後(テレスコピック)にも調整が効き、その範囲も大きい。こういう走りに関する部分には手を抜かないのは流石にBMWだ。
センタークラスタに目を移せば、エアコンの温度調整も左右席で別々に調整できる等、これも上級グレードと同じであることが判る。


エアコンも上級グレードと同一で左右別々に調整できる。勿論オートエアコン。

パワーウインドウやミラーのスイッチはドア側面のアームレスト上にある。
 

このクルマのキーはインテリジェントキーと呼ばれる、いわゆる電子キーで、エンジンの始動にあたっては、このキーをスロットに差込み、ブレーキペダルを踏んでスタート/ストップボタンを押す。

116iのエンジンはダブルバノス(可変バルブタイミング)を搭載するが、120iのようにバルブトロニック(吸気調整をスロットルではなくバルブのリフト量で行う)、可変吸気システムとバランサーシャフトは装備されていない。120iの150ps、20.4kgmに対して115ps、15.3kgmとなる。
いよいよ走り出すと、1.6ℓエンジンは普通に走る分には十分だが、チョッと加速したい場面ではイライラが募る。そこでスロットルペダルを踏み込んでキックダウンを誘うと、モワ〜ッとエンジンが回転をあげてから変速されるので、感覚的には可也トロイ。これは変速に必要な回転まで上昇させようとコントローラが指令を出しているが、エンジン自体の回転上昇がトロイために時間が掛かってしまうからだ。シフトダウンの後もトルク不足から、回転の上昇は遅い。ただし、不快な振動は無く、BMWらしいヴォーっというエンジン音もそれ程大きくなく、ストレスなしに6000rpmまで回るのは流石にBMWだ。しかし、遅い!10年前の318iと同程度と思えば間違いないし、ティーダの1.5あたりとなら同等なのだが、200万円代の後半という価格やBMWイコールスポーティと考えると、寂しいものがある。


旧3シリーズ(E36)の318i。当時は最高のハンドリングと言われた。性能的には116iに近い。すなわち遅い!

旧3シリーズ(E36)の318tiで、コンパクトと呼ばれていた。セダンより強力な1.9ℓエンジンを搭載していたが、それでも大して速くは無い。

左の写真のインテリジェントキーをスロットに差込み、ブレーキべダルを踏んでからスタートボタンを押すとエンジンが始動する。

リアーの室内は現行3シリーズより狭い。

120iと違うのは操舵力が軽いことだ。120iはここまでする必要があるのかと思いたくなるくらいに重たく、女性ドライバー(非力な男性も)には特に車庫入れなどで不評を買うであろう事は明白だったが、その点では116iは喜ばれるだろう。
もう一つ感じるのは中央付近でのステアリングの復元性が悪いことだ。中心から外周で5cm程度は、切ったらそのままでセンターには戻らないから、キチンと自分で戻す必要がある。
その代わり挙動はクイックで、力不足のエンジンに対する不満も一気に吹き飛んでしまう。
軽いフロントから想像が付くとおりに、クルマ全体が手首の操作でヒラヒラと頭を振るのは、これぞBMWという感じだ。フロントの軽さと共にタイヤが細い(195)ことも良い結果の原因だろう。お陰で、ダンパーの当たりが付いていない新車にも拘わらず乗り心地も良い。
コーナーリング性能も当然ニュートラルに近く、旋回中にスロットルを如何しようと、挙動が変るほどのトルクはないから、平和そのものだ。
ブレーキは以前乗った120iが多少ストロークが長めだったのに比べて、今回の116iは短いストロークと軽い踏力、それでいて踏み始めの微妙な調整もやり易い等、良いブレーキの見本のようだった。前回の120iとの差は何なのか?120iは走行距離25kmで、全く当たりがついていなかったのに対して、今回は200km程走行していたから、その違いか?それとも半年の間に改良されたのか?
何れにしてもこのブレーキは良い。また、旋回中に制動したりしても、実に安定しているから、安全性としては抜群と言える。近日中には3ℓを載せた130iが出るらしいが、3ℓを載せられるプラットフォームに非力な1.6ℓを載せているのだからオーバースペックも良いところだ。この辺りは格下のBプラットフォームで誤魔化しているティーダとは根本的に異なる。

これで十分なパワーが有れば言うことないのだが・・・・。残念!!

 

116iに標準装備の195/55R16タイヤ
外観上
120iと大きく異なる点だ。しかし、E46のようにスチールホイールでは無いから、特に詳しい人でなければ判別はできないだろう。

こちらは120iに標準の205/55R16タイヤ
同じ55扁平でも幅の違いから外形も大きい。
 

このクルマの素直な操舵性や軽快な回頭性は、確かに他車では得られないものがある。だからと言ってクルマ好きが無理して買っても、その動力性能には耐えられるだろうか。「曲がる」と「止まる」は申し分ないが、「走る」がショボすぎる。このクルマに興味があるなら、取り合えず試乗してみて、本当にこれで良いのかをよく確認する必要がある。それで良ければ買えば良いだろう。せめてMTを、しかもRHD(右ハン)でも入れてくれれば、まだ薦められるのに。

それでは、このクルマ、116iの本来のターゲットユーザーはといえば、ズバリ金に余裕のある独身女性や、小金持ちのマダム達で、単なるBMWというブランドに憧れている連中だろう。それとも今まで318が買えなかったが、これなら買えるとばかりに一家に1台のファミリーカーとして購入する中産階級か。
3シリーズ等に比べてグレード間に外観の差を付けないのは、何より廉価版と判らないことが重要だと、売るほうも知っているからだ。本気でマニア向けを狙うならMTを輸入するだろう。FRの小型ハッチバックで上級車と同等の安全性というコンセプトが本当に気に入って、1シリーズを買おうと思うなら120iにレザーパッケージを付けて買えばあらゆる面での満足度は116iとは比較にならない。本物のキャリアーウーマンには120iを薦めよう。でも高い!
他にも例えば、金持ちのお嬢様が免許を取ったら、父親が可愛い娘のために買ってやるクルマは、どうせ初心者だから擦ったりしても惜しげが無いように何か安いクルマは無いかと探したら、あった、あった。と、選んだのが116iだったというのは有りそうな話ではないか。

アメリカ式グローバリゼーションとやらで、日本も勝ち組と負け組みが出来るような政策をとり、その結果はブランドものの欧州車がゴロゴロ走っているかと思えば、以前は絶滅した原付きバイクが、フリーターらしき運転者とともに増え始めている今日この頃。
しかし、バブル時代には勝ち組の代表で世界金持ちランキングにも入っていた西武グループのドンは今や拘置所の中だ。超勝ち組は一歩間違えば超負け組みになってしまう。
何とも生き難い世の中になったものだが、自動車屋は、そんなことにはメゲずに勝ち組相手の新ブランドで欧州車にアブラゲをさらわれまいと、夏にはレクサス旋風で大騒ぎになるだろう。

この1年、目が離せない。