2026年10月の大統領選挙で敗れたフラビオ・ボルソナロ氏は決選投票においてに「投票時間の2時間延長措置をめぐる不正主張」を主張している。
2026年大統領選 フラビオ・ボルソナロ候補による指摘
2026年10月25日に行われた決選投票では、左派で現職のルラ大統領(得票率約51.8%)が、前大統領の長男である右派のフラビオ・ボルソナロ上院議員(同約48.2%)を破り、通算4期目の当選を決めた。フラビオ氏は敗北を認めず、以下の点から選挙の無効を主張している。

• 投票時間の直前延長に対する批判:投票当日、各地の豪雨や公共交通機関(バスの運行削減など)の乱れによって有権者の移動に支障が出たとして、連邦最高裁判所が締め切り直前に全国の投票時間を2時間(午後5時から午後7時まで)延長する決定を下した。フラビオ氏はこれを「ルラ陣営に有利な汚い手口であり、容認できない」と非難している。
・現場の運用と開票作業の混乱
延長命令が当初の締め切り時刻の直前に出されたため、通知が届く前に電子投票機の運用を締め切ってしまった投票所と、延長して投票を受け付けた投票所が混在した。また、全国の開票集計も一時中断・再開されるなど不均一な対応が生じたことを問題視している。
保守・右派陣営および批判的視点から見た「逆転」の5つの要因
1. 司法機関(最高裁・選管)による異例の介入と「不公正な競技場」
右派陣営が最も強く問題視しているのが、連邦最高裁判所(STF)および高等選挙裁判所(TSE)による選挙プロセスへの介入だ。
• 父ジャイル氏の立候補排除と自宅軟禁:本来であれば右派の最大候補であったジャイル・ボルソナロ前大統領が司法判断によって被選挙権を剥奪され、自宅軟禁下に置かれたこと自体が「政敵の排除」であると支持層は捉えている。
• 投票当日のルール変更:決選投票の締め切り直前に最高裁が命じた「全国での投票時間2時間延長」は、ルラ氏の票田である北東部などの投票率を底上げするための恣意的な措置であったとフラビオ氏側は主張している。また、選挙期間中から司法による右派アカウントのSNS規制や捜査圧力(選挙直後のモラエス判事によるフラビオ氏の旅券没収・出国禁止命令など)が相次ぎ、最初から対等な選挙戦ではなかったという指摘がなされている。
2. 現職による「バラマキ福祉」と選挙目当ての政策前倒し
ルラ氏が棄権層を掘り起こせた最大の理由は、理想への共感ではなく「国家予算を使った現職の利益誘導(バラマキ)」にあるというのが保守派および市場関係者の見方だ。
• 給付金打ち切りへの恐怖:低所得者層向け現金給付「ボルサ・ファミリア」を受給する層に対し、「ボルソナロ氏が勝てば給付が打ち切られる」というネガティブキャンペーンが集中的に展開された。
• ポピュリズム法案の強行:決選投票の直前、ルラ政権は法定労働時間を短縮する憲法改正案を前倒しで可決させるなど、財政規律を犠牲にして有権者の歓心を買う現職ならではの強権的手法を用いた。
3. 治安対策など右派の公約の「丸呑み」による争点潰し
第1回投票でフラビオ氏が首位に立った原動力は、高金利・インフレによる生活苦(「冷蔵庫の中身まで分割払い」と批判される状況)と、悪化する治安への強い不満だった。
これに対しルラ氏は決選投票までの3週間で、これまで左派として一貫して反対してきた「刑事責任年齢の引き下げ」について、凶悪犯罪に限り賛成へ転じるなど、フラビオ氏の目玉公約を突如として取り込んだ。右派からは「理念なき選挙目当ての変節」と批判されたが、結果として治安問題を重視する中間層の票がフラビオ氏へ流れるのを食い止める効果を持った。
4. 巨大メディアと左派組織による「反ボルソナロ」キャンペーン
主要メディアが発表した第1回投票前の世論調査の多くはルラ氏優位を伝えていたが、実際の開票ではフラビオ氏が約2ポイント上回り首位となった。右派支持層は、既存メディアの世論調査や報道姿勢そのものがルラ氏側に偏向していると強く批判している。決選投票に向けても、政策の是非ではなく「ボルソナロ家の復権=民主主義の危機」というレッテル貼りがメディアや左派インフルエンサーを通じて大々的に行われ、恐怖心に訴える動員が図られたと指摘されている。
5. 議会選挙では右派が勝利しているという「ねじれ」の現実
大統領選の決選投票ではルラ氏が51.79%対48.21%で勝利したものの、同時期に確定した連邦議会選挙では、フラビオ氏が所属する右派・自由党(PL)が上下両院で最大勢力となっている。
つまり、ブラジル国民の多数が左派の政策を全面的に支持したわけではなく、地方や議会では保守・右派路線が明確に選ばれている。