2026年11月の米中間選挙で民主党が下院の過半数を奪還した場合、議会の「召喚権(Subpoena power)」を行使してイーロン・マスク氏を公聴会へ証人喚問し、同氏の政府内での活動や企業契約をめぐる大規模な議会調査を開始する計画がある。

この計画は2026年10月20日に米政治メディア『Politico』などが報じたことで表面化し、中間選挙直前の大きな政治的争点となっている。
なぜ「中間選挙での勝利」が条件なのか

アメリカの連邦議会では、各委員会の委員長ポストを多数党(過半数を占める政党)が独占する仕組みになっている
• 少数党の限界:現在、下院で少数派の民主党は、独自に公聴会を開いたり、法的拘束力のある召喚状(証言や内部文書の提出を強制する命令)を発行したりする権限を持っていない。
• 過半数奪還による権限移行:中間選挙で民主党が下院の過半数を握れば、行政監視委員会などの委員長に民主党議員が就任し、マスク氏本人への証人喚問や、政府機関・関連企業への記録提出命令を単独で強行できるようになる。
民主党が計画している主な調査・追及テーマ

複数の下院委員会の民主党幹部が、それぞれの管轄分野からマスク氏を追及する構えを見せている。
・DOGE(政府効率化省)の活動:ロバート・ガルシア議員(下院監視・政府改革委員会)
トランプ政権下でマスク氏が主導した「政府効率化省(DOGE)」による連邦職員の大量削減、政府機関(USAIDやFEMAなど)の予算カット、機密データへのアクセス、および削減効果の誇張疑惑。
・ 巨額の政府契約と利益相反:ゾーイ・ロフグレン議員ほか(下院科学・宇宙・技術委員会など)
政権中枢での政治的影響力と、SpaceX(NASAや国防総省の契約)やTeslaが受け取る数十億ドル規模の連邦政府契約・補助金との間に利益相反(Conflicts of Interest)がなかったかの検証。
・ 外交・安全保障への介入:プラミラ・ジャヤパル議員、グレゴリー・ミークス議員(下院外交委員会)
ウクライナにおける衛星通信網「Starlink」のアクセス制限に関する意思決定や、防衛用衛星網「Starshield」をめぐる問題、外国首脳との独自の接触に関する調査。
背景にある「巨額献金」とマスク氏の猛反発

この動きの背景には、マスク氏が中間選挙で共和党の議会多数派を維持するために投じている記録的な政治資金がある。
• 3億ドル超の選挙資金投入: マスク氏は2026年の中間選挙サイクルにおいて、共和党候補の支援や政治活動委員会(America PACなど)を通じて約3億3,600万〜3億6,600万ドル(約500億円規模)を拠出しており、2024年大統領選時の約2億9,000万ドルを上回る最大の献金者となっている。特に2026年7月以降だけで2億7,600万ドル以上を集中的に投じている。
• マスク氏の警告:民主党による議会調査計画の報道を受け、マスク氏は10月21日に自身のX(旧Twitter)上で「I will come for them(彼らを標的にする/徹底的にやり返す)」と投稿し、調査に動く民主党議員らに対して強い言葉で牽制している。
マスク氏にとって今回の米中間選挙は、単なる応援政党の勝敗にとどまらず、「自身が議会の追及対象になるか否か」が直接かかった選挙戦となっている。
中間選挙まであと一週間程になった。さて、結果は如何に。