尖閣諸島周辺海域において、中国海警局(海警船)の大型化・武装化や領海侵入の常態化が進むなか、日本政府は海上保安庁(海保)と自衛隊(海上自衛隊等)の連携強化を急速に進めている。
主な取り組みと背景・課題について、以下の項目にまとめる。
1. 連携強化の背景と目的

• 中国海警局の武装化・軍との一体化:中国海警局は人民解放軍(海軍)の指揮系統や支援体制と緊密に連携しており、機関砲を搭載した大型船の派遣や長時間にわたる領海侵入を繰り返している。
• グレーゾーン事態への対応:「武力攻撃」には至らないものの、単なる治安維持の枠組みを超えるような「グレーゾーン事態」(例:武装漁民の上陸、多数の船艇による威圧など)に対し、法執行機関(海保)から防衛組織(自衛隊)へと切れ目なく(シームレスに)移行・連携する体制が不可欠となった。
2. 制度・法制面の整備

2022年末の「国家安全保障戦略」や「海上保安能力強化に関する方針」の策定を受け、制度的な枠組みが明確化された。
• 「統制要領」の策定(2023年4月):武力攻撃事態等が発生した際、自衛隊法第80条に基づき、防衛大臣が海上保安庁を統制下(指揮下)に置く具体的な手続きや役割分担を策定した。
• 明確な役割分担
◦海上保安庁: 海上保安庁法第25条に定められた「非軍事原則」を維持しつつ、有事の際も住民避難の支援・捜索救助・海上交通の安全確保・海洋監視に専念する。
◦海上自衛隊: 海保が非軍事任務を果たすことで、防衛作戦や戦闘行動に専念・集中できるようにする。
3.現場・運用レベルでの具体的連携

制度面だけでなく、日常的な運用や監視態勢における実動的連携も深化している。
• 段階に応じた共同訓練の実施:平時の領海警備から「海上警備行動」、さらには「防衛出動」へと移行するプロセスを想定し、海保の巡視船と海自の護衛艦・航空機による共同通信訓練、情報共有訓練、実動演習を定期的・継続的に実施している。
• 海洋状況把握(MDA)の強化:大型無人機(シーガーディアンなど)や人工衛星、AI解析などの新技術を活用し、東シナ海全体のリスクや船艇の動向をリアルタイムで把握・共有する体制(共通状況図の形成)を進めている。
4. 今後の主な課題・焦点

• 移行・判断の迅速化:グレーゾーン事態から防衛出動が必要な状況への移行において、現場の状況を正しく認識し政治判断を下すまでのスピードと判断基準の整理が求められる。
• 有事下における海保の安全確保:非軍事機関である海保の巡視船や職員が、戦闘領域付近で活動する際の護衛や安全管理をどのように担保するかが重要視されている。
• 日米同盟・米沿岸警備隊との多角的連携:日米安全保障条約第5条(尖閣諸島への適用)を踏まえ、自衛隊・海保だけでなく、米軍や米沿岸警備隊(USCG)を含めた多角的な協力枠組みの強化も焦点となっている。