BWRX-300は、日立製作所と米GEの合弁会社であるGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)が2018年から本格的に共同開発を進めている、電気出力30万kW級(300MWe)の小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)だ。
大型沸騰水型原子炉(BWR)の技術をベースにしながら、徹底した構造の簡素化と工場生産化によって「建設コストの大幅削減」と「高い安全性」の両立を目指している。
1. 開発の背景と「日立×GE」の補完関係

BWRX-300の誕生背景には、大型原発の建設費高騰と、米国の製造・建設基盤の空洞化という深刻な課題があった。
• 米国の製造・施工能力の失効:米国では長年の原発新設途絶により、原子炉圧力容器などの大型重厚機器を国内で製造する設備や、現場で期日通りに施工・管理する能力(EPCノウハウ)がほぼ失われていた。GE単独では設計コンセプトを持てても、実機として高品質・低コストで製造・建設する手段がなかった。
• 日立の重工業・施工ノウハウの活用:一方の日立は、日本国内で大型炉(ABWRなど)を期日・予算通りに完成させてきた製造技術、重厚長大分野のサプライチェーン、現場建設力を保持していた。GEの設計基盤に日立の実製造・施工能力を組み合わせることで実用化の道筋が立てられた。
• 2018年からのSMR共同開発始動:2007年の両社事業統合時は大型炉が中心であったが、大型炉の経済的行き詰まりを受け、2018年に実効的なコストダウンを狙った30万kW級SMR「BWRX-300」の共同開発が正式スタートした。
2. BWRX-300の主な技術的特徴

① 構造の抜本的簡素化(Design to Cost)
原子炉容器に接続する大口径配管を排除・最適化する設計により、万が一の「冷却材喪失事故(LOCA)」のリスクを構造的に遮断している。これにより、従来の大型炉で必須だった複雑かつ高価な非常用炉心冷却装置(ECCS)や大量の補機類を削減し、建物全体の容積と建設費を大幅に圧縮している。
② ポンプ・電源に頼らない自然循環・静的安全
通常運転時の冷却水循環に機械式ポンプを使わず、熱の対流による「自然循環」を利用する。万が一の全交流電源喪失時(SBO)にも、重力と自然対流で動作する「非常用復水器システム(ICS)」により、外部電源や運転員の操作なしで長期間の自律的な炉心冷却が可能となる。
③ 工場モジュール製造と工期の劇的短縮
主要部材を工場で標準化された「モジュール」として製造し、現場に搬入して組み立てる工法を採用している。従来の大型炉で7〜10年かかっていた建設期間を大幅に短縮し、事業者の金利負担や資金調達リスクを低減させる。
④ 地下埋設によるセキュリティ強化
原子炉格納容器および主要構造を地中に埋設する設計としている。外部からの航空機突入やテロ攻撃、巨大地震・津波などの外的事象に対する物理的な防護性能を高めている。
3. 世界における導入検討の状況

BWRX-300は、実用化と商用展開に最も近いSMRの一つとしてグローバル市場で採用検討が進んでいる。
• カナダ:オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)がダーリントン原子力発電所敷地内への導入を決定。先進国におけるSMR商用化の第1号案件としてプロジェクトが進んでいる。
• 米国・欧州:米国のテネシー川流域開発公社(TVA)のほか、ポーランド(ORLEN Synthos Green Energy)、エストニア、チェコ、英国などで採用や建設に向けた評価・手続きが行われている。