バイデン前大統領が退任前にファウチ氏に対して発行した包括的恩赦とは


2025年1月19日、ジョー・バイデン大統領(当時)は退任を翌日に控えた任期最終盤に、アンソニー・ファウチ氏に対して事前・包括的恩赦(Preemptive / Blanket Pardon)を発行した。

この恩赦の具体的な対象範囲と法的効力、およびその限界については以下の通り。

1. 恩赦の対象範囲

• 対象期間:2014年1月1日から2025年1月19日までの約11年間にわたる期間が指定されている。

• 対象行為:特定の罪名ではなく、期間中に発生したとされる「すべての連邦法上の潜在的違反行為(potential federal offenses)」を対象とした包括的なものだ。ファウチ氏がNIAID所長および大統領首席医療顧問として行った公衆衛生政策、研究助成、議会証言などに関するすべての公務がカバーされている。

• 政治的文脈:トランプ第2期政権下での「政治的報復」や司法の武器化による法外な法的費用負担から、ファウチ氏やマーク・ミリー元統合参謀本部議長らを事前保護する目的で発行されした。

2. 法的効力

• 連邦刑事訴追の完全免除:米司法省(DOJ)や連邦検察官は、指定期間内のファウチ氏の行為について起訴・捜査・処罰を行うことが法的に不可能になる。

• 罪の承認(Admission of Guilt)との関係:米最高裁の判例(Burdick v. United States)では「恩赦の受諾は罪の示唆を含み得る」とされが、バイデン大統領およびファウチ氏は声明で「いかなる不正行為の存在や有罪を認めるものではない」と明記し、無実を主張した上での予防的措置であることを強調している。

3. 恩赦の法的限界(効力が及ばない範囲)

• 恩赦「発行後」の行為(最大の争点):大統領恩赦は過去の行為にのみ有効であり、将来の行為には適用されない。そのため、2025年1月20日以降に行われた行為(2026年7月の議会公聴会での嘘=新たな偽証罪など)に対する起訴を免除することはできない。

• 州法違反(State Crimes):米大統領の恩赦権は「連邦犯罪(Federal Offenses)」にのみ及び、各州の検察官(地方検事など)が州法に基づいて起訴した場合、この恩赦で防ぐことはでない。

• 民事訴訟(Civil Lawsuits):刑事責任を免除するものであり、個人から提起される民事上の損害賠償請求などを遮断する効力はない。

4. 2026年現在の議会での論争

共和党側(下院監視委員会など)は、バイデン前大統領が自動署名ペン(Autopen)を用いて署名したプロセスの正当性に疑問を呈し「恩赦自体が無効(null and void)である可能性がある」と主張している。

一方、ファウチ氏側はこの恩赦が「過去の行為」には有効であるとしつつも、「公聴会で新たな発言をすれば、共和党から『恩赦後に新たに発生した偽証罪』としてハメ込まれるリスクがある」ことを理由に、憲法修正第5条(黙秘権)を行使する主要な根拠としている。