台湾で実施されている「都市強靭性演習(城鎮靱性演習)」および関連する住民避難・防空訓練は、従来の形式的な防災訓練から脱却し、軍事侵攻や海上封鎖などの有事事態を直接念頭に置いた「全社会防衛体制(軍民一体のレジリエンス)」を検証する実戦的プログラムへと進化している。
従来は個別に行われていた防空演習「萬安演習」と災害対応訓練「民安演習」を統合し、台湾軍の定例大規模演習「漢光演習」とリアルタイムで完全連動させて全国各地で順次実施されている。
主な訓練内容と具体的取り組み

1. 全市民対象の防空避難と移動制限
• 緊急警報と車両停止:演習開始のサイレンとともに、スマートフォンへ緊急携帯警報(CBS)が一斉送信される。走行中の自動車やバスは路肩に停車してエンジンを切り、乗客・歩行者はその場で誘導に従う。
• 地下施設への退避:市民は近隣の防空避難所(地下鉄駅、カルフールなどの大型スーパー地下駐車場、行政機関の地下室等)へ避難する。
• 身の安全を守る姿勢:避難所内では、ミサイル着弾時の爆風や飛散物から身を守るため、「膝をつき、胸を床から浮かせ、目・耳・口を覆う」基本的な防御姿勢が指導される。
2. 重要インフラ防護と「通信制限」実証
• 拠点防護:港湾、空港、鉄道駅、発電所、通信局舎など、敵のサイバー攻撃や特殊部隊の侵入標的となりやすい重要施設において、軍・警察・民間防衛隊が合同で即応警備と防衛手順を確認する。
• 通信遮断(速度制限)テスト:一部地域では、戦時に敵のサイバー攻撃やインフラ破壊で通信網が障害を受けた状態を想定し、「30分間の携帯データ通信の意図的な速度低下」を実施。通信が制約された状況下での有線・無線・衛星を用いた代替連絡ルートの機能検証が行われた。
3. 戦場医療・ドローン物資補給
• 民間病院と軍医療チームの統合:大量の傷病者が発生した状況をシミュレートし、軍の前進外科チームと公営・民営病院が連携。トリアージ(災害や事故などで多くのけが人が同時に出たとき、できるだけ多くの命を救うために、治療や搬送の優先順位を決めること)から緊急手術、傷病者の後送状況をデジタルシステムで一元管理する訓練が組まれた。
• 無人機(ドローン)による緊急空輸:爆撃や道路寸断により孤立した地域に対し、ドローンを用いて医薬品や血液パック、緊急資材を空輸・補給する実証演習(嘉義県や屏東県など)が初めて導入された。
4. 戦時生産転換と「反資敵(インフラ無効化)」
• 民間工場の軍需転換:民間製造業の生産ラインを速やかに軍需補給や装備修理体制へ移行させる疎開・動員演習を実施。
• 反資敵(ハンシテキ)措置:万が一、港湾や主要交通要衝が敵に占領・奪取されそうになった際、設備を敵の物流に利用させないよう迅速に機能を停止・無力化(破壊・離脱)させる運用の確認も盛り込まれている。
従来との大きな変化点


台湾当局の方針:行政院(内閣)は「見栄えの良いパフォーマンスではなく、演習を通じて現場の課題や不足している部分を即座にあぶり出し、社会全体の耐久力(レジリエンス)を維持すること」を最優先目標としている。