オマーンがホルムズ海峡の通行料プランを提案





ニューヨークタイムズ(The New York Times)は「After U.S.-Iran War, Oman Said to Propose Hormuz Fee Plan(米イラン戦争後、オマーンがホルムズ海峡の通行料プランを提案か)」という記事で、海峡に面する当事国であるオマーンが、イランによる一方的な通航料徴収を避けるための共同枠組み(迂回策)をアメリカや欧政政府に正式提案した、と伝えている。

背景:米イラン間の一時的な停戦合意(14項目の覚書)により、世界的なエネルギー危機を引き起こしていたホルムズ海峡の封鎖が解除され、60日間の交渉期間中は商業船舶の「無料かつ安全な航行」が保証された。しかし、イランは同海峡を紛争前の「完全無料」の状態に戻す気はなく、何らかの徴収システムを導入したい意向を示していす。そこで、
記事の主なポイントは‥‥

🔷オマーンの提案内容(サービス料の徴収)
• 仕組みの提案:オマーンは、イランとオマーンが共同でホルムズ海峡を通過する商船から「航行サービス料(Service Fees)」を徴収する枠組みを提案した。

• モデルの踏襲:この提案は、アジアのマラッカ海峡やシンガポール海峡のモデル(民間基金が航行の安全性や環境対策、緊急対応のために資金を集める仕組み)を参考にしている。

• 国際法への配慮:オマーンのバドル・アルブサイディ外相は、「単に通航するためだけの『通航料(Tolls)』を課すことは国際法違反になる」という立場をとっており、あくまで航行安全や安全維持に対する「サービスへの対価」として区別することを強調している。

🔷「自発的」か「義務的」かをめぐるイランとの足並みのズレ
• オマーン側の意図:オマーンや外交筋によると、この支払いはあくまで「自発的な寄付・貢献(Voluntary)」という形を想定している。

• イラン側の主張:一方で、イランの高官は「世界に無料のサービスなど存在しない」として、この支払いを「義務化(Compulsory / Mandatory)」することを求めている。イラン側はオマーンとの共同メカニズム構築を優先しつつも、合意に至らない場合は「イラン単独でも徴収に踏み切る」と警告している。

🔷アメリカおよび国際社会の強い反発
• トランプ大統領の拒絶:ドナルド・トランプ米大統領は、ホルムズ海峡でのいかなる通航料や料金の徴収も「受け入れられない(Unacceptable)」と猛反発している。以前には、オマーンがイランと組んで料金を徴収するなら「オマーンを攻撃(爆撃)する」と激しい言葉で脅しをかけたことも報じられており、米国政府は紛争前の完全な自由航行へ戻すことを要求している。

• 欧州や周辺国の懸念:欧州の外交官らは、この提案に不満を示しつつも、せめて国際法に違反しない形(自発的な支払いなど)で収まるよう注視している。また、海上貿易に依存するサウジアラビアなどの他の湾岸諸国からも、「紛争の結果としてなぜ新たな負担を受け入れなければならないのか」と疑問の声が上がっている。

要点
この提案は、長年続いてきたホルムズ海峡の「完全な自由・無料通航」の歴史を転換させる可能性を秘めており、今後の恒久的な和平交渉(ポスト60日間の体制構築)における最大の火種の一つとなっている。

この記事の中で、マラッカ海峡とシンガポールで確立された前例に言及していて、そこでは、日本の民間財団が政府、企業、業界団体からの自主的な拠出金を管理し、海峡の安全な航行を促進していると記されている。

マラッカ・シンガポール海峡における航行安全の仕組みにおいて、日本の団体は以下のような重要な役割を果たしてきた。

🔷日本財団(The Nippon Foundation)
国際海事機関(IMO)が主導し、2008年に設立された「航行援助施設基金(Aids to Navigation Fund: ANF)」において、最大の民間資金拠出者(拠出金全体の約3割を占めるトップ)となっている。この基金は、沿岸国(インドネシア・マレーシア・シンガポール)だけではなく、海峡を利用する国々や民間企業が「自主的な拠出金(Voluntary Contributions)」を出し合い、灯台やビーコンなどの航行援助施設の維持・更新費用をまかなう国際共同メカニズムとなっている。

🔷マラッカ海峡協議会(Malacca Strait Council)
日本財団や日本船主協会、電気事業連合会、日本石油連盟などの民間資金や業界団体からの拠出を受け、現地での安全対策を半世紀以上にわたり実務的に支援している財団(現在は一般社団法人)で、海峡の電子海図の作成、沈没船の撤去、沿岸国へのオイルフェンスや清掃船の寄贈など、安全航行の促進に直接関わっている。

オマーンがこの事例を持ち出した理由 マラッカ海峡は「通航料(Toll)」のような義務的な課税を行うと国際法(国連海洋法条約)の「国際航行に使用される海峡における通航権」に抵触するため、あくまで日本の民間財団などが主導する「安全のための自発的な基金・サービス料」という枠組みで資金を集めている。

オマーンは、アメリカなどの反発をかわしつつイランの金銭的要求を満たすための現実的なモデルとして、この「日本財団などが関わるマラッカ海峡の自主的拠出システム」を前例としてニューヨークタイムズの記事内で提示した、という背景のようだ。