2026年4月末、イランがホルムズ海峡の封鎖を一部解き、出光興産の大型タンカー「出光丸」の通過を許可した。
この出来事を巡り、イラン側が70年以上前の「日章丸事件」を引用して友好関係を強調している動きについて、背景と諸外国の反応は‥‥
1.イランによる「日章丸事件」の政治利用
在日イラン大使館は、タンカーの通過に合わせてSNS(Xなど)で1953年の「日章丸事件」の画像を投稿し、「この遺産は今も意義を持ち続けている」と発信した。

• 日章丸事件の文脈:当時、英国の石油封鎖に苦しんでいたイランから、出光興産の「日章丸」が国際的な圧力を無視して石油を買い付けた事件で、イランにとっては「困難な時に助けてくれた真の友」という象徴的な物語だ。
• 今回の狙い:2026年現在の国際的な孤立状態において、日本という「西側諸国の一員でありながら、独自の歴史的絆を持つ国」を特別扱いすることで、「イランは理不尽な敵ではない」「恩義を忘れない国家である」というイメージを内外に誇示するプロパガンダ的な側面がある。
2.実利的な背景(外交的ディール)
単なる「友情」だけでなく、現実的な取引があったとの見方が有力だ。
• 日本人拘束者の解放:2026年1月からイランで日本人(報道ではNHKテヘラン支局長ら)が拘束された事件は、日本の反イラン識者が強く指摘している。そこで拘束されていた日本人は4月に保釈され、引き換えにタンカーの安全航行を認めるという外交的譲歩が行われた可能性がある。
• 通行料の免除:日本政府は「通行料は支払っていない」としており、イラン側が「友情」を名目に実質的な経済制裁を回避しつつ、日本とのパイプを維持しようとした形跡が見て取れる。
3.諸外国・国際社会の反応
この「日本への特別扱い」に対し、周辺国や国際社会からは複雑な反応が出ている。

考察:バランスの危うさ
イランにとって日章丸は「反欧米・自主独立」の象徴だが、日本にとっては「エネルギー安全保障」のための苦肉の策だった。イランがこの物語を強調すればするほど、日本は「G7の足並みを乱している」という疑いの視線を向けられるリスクも孕んでいる。
歴史を美談として語り直すことで、現在の軍事・政治的な緊張を緩和させようとするイラン側の手法は、非常に巧みなソフトパワー戦略といえる。