米軍はフィリピンでの合同訓練に持ち込んたロケット砲をそのまま留め置いている





米比合同軍事演習(バリカタン2026)において、米軍が持ち込んだハイマース(HIMARS:高機動ロケット砲システム)が演習終了後もフィリピン国内に留め置かれて、その運用が常態化しつつある。

米軍ハイマースのフィリピンにおける現状
現在、フィリピンに展開しているハイマースは、単なる「一時的な訓練機材」から、より戦略的な「前方展開資産」としての性格を強めている。

1.演習終了後の「留め置き」と循環配備
かつての合同演習では、終了とともに機材は米軍基地(グアムやハワイ等)へ撤収されるのが通例だった。しかし、近年では以下の変化が見られる。

• EDCAサイトの活用:2023年以降、防衛協力強化協定(EDCA)に基づき米軍が使用できる拠点が拡充された。これにより、演習後も機材をこれらの拠点に「先行配置(Pre-positioning)」し、次の訓練や緊急事態に備えて事実上駐留させる運用が可能になっている。

• 循環配備(Rotational Presence):部隊自体は交代するが、ハイマースのような重量級機材をフィリピン国内に留め置くことで、南シナ海や台湾海峡での有事に対する即応性を高めている。

2.戦略的意図:第一列島線の「動く砲台」
米軍がハイマースをフィリピンに留める最大の理由は、中国に対する「拒否抑止」

• HIRAIN(ハイマース迅速浸透)訓練:2026年4月のバリカタン演習でも、ルソン島北部やイバヤット島などで、輸送機(C-130)からハイマースを降ろし、即座に射撃して撤収する訓練が繰り返された。

• 分散型殺傷力(Distributed Lethality):フィリピンの島々にハイマースを分散配置することで、中国艦隊の接近を阻む「対艦・対地攻撃ネットワーク」を構築している。

3.多国間連携の深化
今回の動きで注目すべきは、フィリピン軍(AFP)への技術移転と多国間での運用共有だ。

• フィリピン軍の習熟:米軍は機材を留めるだけでなく、フィリピン軍が自らハイマースを運用・整備できるよう訓練を強化している。

• 自衛隊との連携:2026年の演習からは陸上自衛隊も大規模に参加しており、日本の地対艦ミサイル(SSM)部隊と米軍ハイマースが連携し、フィリピン国内の拠点を共有しながら共同作戦を行う体制が整いつつある。

懸念と展望
• 中国の反発:中国側は、これら高機能兵器のフィリピン常駐化を「地域の緊張を煽る挑発行為」として強く非難している。

• 「事実上の基地化」:フィリピン国内では、憲法で禁じられている「外国軍の常駐」に抵触しないよう、「演習」や「一時的配備」という名目を維持しているが、実態としては米軍のストライク・ポイント(打撃拠点)として機能し始めている。

このように、ハイマースの「留め置き」は、フィリピンを南シナ海防衛の「不沈空母ならぬ、移動式ロケット砲陣地」へと変貌させる重要なステップとなっている。