ファウンドリ(自社で設計・販売は行わず、高度な製造設備(工場)のみを保有して受託生産に特化した企業)の世界では、台湾のTSMCが圧倒的なシェアと技術力を誇っている。そんな状況で日本の半導体産業の再興を目指し、2022年にトヨタ、ソニー、NTTなど国内大手8社が出資して設立されたのがラピダス(Rapidus)だ。
ラピダスは「TSMCの背中を追う」のではなく、「TSMCとは異なる土俵で戦う」という独自の生存戦略をとっている。
2026年4月現在の状況を踏まえ、ラピダスがどのようにTSMCに対抗しようとしているのか、その特徴と最新動向をまとめた。
1.対抗戦略:量から「スピードと多品種」へ
TSMCが巨大な工場(ギガファブ)で大量生産を行う「デパート型」なら、ラピダスは特定の顧客に寄り添う「ブティック型(RUMS:Rapid & Unified Manufacturing Service)」を掲げている。
• 超短納期(サイクルの高速化):設計から製造までを一体化し、TSMCなどでは数ヶ月かかる工程を大幅に短縮。変化の激しいAIチップ分野で「早く作れること」を最大の武器にする。
• 後工程(パッケージング)との融合:チップを積み重ねる3D実装技術などを製造段階から組み込み、性能を極限まで高める。
2.ロードマップ:2nmから1.4nmへの「ジャンプアップ」
ラピダスは、10nmや5nmといった既存の世代をすべて飛ばし、いきなり最先端の2nm世代からスタートするという、世界でも例のない賭けに出ている。
• 2nm(2027年量産開始予定):北海道千歳市の第1工場(IIM-1)で試作ラインが稼働中。
• 1.4nm(2029年頃〜):2026年4月、富士通から1.4nmチップの製造受託が内定したと報じられた。これにより、TSMCやインテルと同時期に最先端プロセスを投入する体制を整えつつある。
3.「日の丸連合」と政府の全面支援
「失敗は許されない」という不退転の決意のもと、官民一体の支援が加速している。
• 巨額の血税投入:2026年4月11日、日本政府は新たに6,315億円の追加支援を決定。累計の支援額は2.3兆円を超えている。
• 官民出資の強化:2026年2月には政府や民間企業(トヨタ、ソニー、ソフトバンク等)による追加出資も行われ、政府が筆頭株主として経営を支える強固なバックアップ体制が敷かれた。
• 海外との連携:技術面では米IBM、露光装置では蘭ASML、ベルギーのIMECなど、グローバルな「非TSMC連合」と深く連携している。
TSMCとの比較:ここが違う

現状の総評
ラピダスは、TSMCからシェアを奪うことを目的としているのではなく、「AI半導体の民主化」や「経済安全保障(自国で最先端チップを作れる能力)」の確保を至上命題としている。
2026年4月の赤沢経済産業相の言葉を借りれば、「血税を投入したプロジェクトを必ず成功させる」というフェーズに入っており、富士通という具体的な大口顧客(将来顧客)を確保したことで、単なる「夢物語」から「現実の製造ビジネス」へと一歩前進したと言える。