富士通が、最先端半導体の量産を目指すラピダス(Rapidus)に対し、回路線幅1.4nm(ナノメートル)世代のチップ製造を委託する方針を固めたことは、日本の半導体戦略において極めて重要な転換点となる。

2026年4月の最新動向を含め、このプロジェクトの要点を整理する。
1.プロジェクトの核心:純国産の「AI専用半導体」
富士通が設計し、ラピダスが製造するこのチップは、主にAIの推論処理に特化した「NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)」だ。
• 「MONAKA」プラットフォームとの連携:富士通が開発中の次世代データセンター向けCPU「MONAKA(モナカ)」や、その発展形である「MONAKA-X」を補完・強化する役割を担う。
• 超省電力技術:スーパーコンピューター「富岳」で培った省電力技術を応用。AI処理に不可欠な膨大な計算を、極めて低い消費電力で実現することを目指している。
• 「富岳」後継機への搭載:2030年頃の稼働を目
2.製造・スケジュールのロードマップ
ラピダスは現在、北海道千歳市で工場の建設を進めており、1.4nmの量産は2nmの先に見据えた野心的な目標だ。
• 2nmノード(2027年量産):まずは2nmの量産を確立させ、その実績をベースに1.4nmへ移行する。
• 1.4nmノード(2029年頃〜):2029年頃に試作生産を開始し、2030年代初頭のフル量産を目指す計画だ。これは、世界のトップを走るTSMCやインテルと肩を並べる、あるいは先行するペースといえる。
3.なぜこの提携が重要なのか
この提携には、技術面だけでなく、経済安全保障や国家戦略としての側面が強く反映されている。
• 「設計から製造まで」の国内完結:これまで設計(富士通)と製造(TSMCなど海外)が分断されていた先端半導体において、「純国産」のサプライチェーンを確立する。
• ラピダスの「大口顧客」確保:ラピダスにとって、富士通という日本を代表するテック企業が「大口の製造委託先(アンカーカスタマー)」となることは、投資家や金融機関に対する信頼性を高め、上場(2031年度目標)に向けた大きな追い風となる。
• 巨額の政府支援:2026年4月11日、経済産業省はラピダスに対し、2026年度分として新たに6,315億円の追加補助金を承認した。これにより、累計の支援額は2.3兆円を超えている。
まとめ:垂直統合に近い協力体制

このプロジェクトは、AIの運用基盤を海外に依存しない「技術主権」の確立を目指す、日本の半導体復活に向けた「最終兵器」と目されている。