イラン「地下ミサイル都市」 の対艦ミサイルは使い物になるのか





イランは対艦ミサイルが地下数百メートルの地下シティーに大量に保管されていると主張しているが、それが本当だとしてもそんな地下深くから地上まで米軍に感知されずにミサイルを搬出する事が出来るのだろうか。

結論から言えば、「完全に感知されずに搬出・発射すること」は極めて困難だが、米軍も「すべてを阻止すること」はできていないのが実情だ。

地下深部からの運用と米軍の監視について、いくつかのポイントに分けて整理する。

1.「地下数百メートル」からの搬出メカニズム
イランが主張する「地下都市」は、ただの穴蔵ではなく、巨大なトンネルネットワークとなっている。

• 自動レールシステム:最新の映像や分析では、ミサイルが自動化されたレールの上を移動し、発射地点まで運ばれる様子が確認されている。これにより、人力に頼らず高速な移動が可能となる。

• 「飛び出す」発射口:トンネルの出口(ポータル)は通常、山肌や民間施設を装った場所にカモフラージュされており、発射時だけハッチが開く仕組となっている。

• 地下発射(コールドローンチ):2020年には、ミサイルを垂直に地下から直接射出する試験にも成功している。これにより、地上に長く留まるリスクを最小限に抑えている。

2.米軍はどこまで「感知」しているのか?
米軍は、イラン全土を24時間体制で監視する多層的な網を張っている。
• 赤外線監視 (SBIRS):宇宙配備の赤外線システムは、ミサイルのエンジン点火時の熱を数秒以内に検知する。「搬出」を完全に見逃しても、「発射」の瞬間には確実にバレる。

• 合成開口レーダー (SAR):雲や夜間を突き抜けて地上のわずかな形状変化を捉える衛星で、トンネルの入り口周辺の車両の動きや、土砂の移動(再掘削など)をAIで解析し、活動の兆候を掴む。

• プロジェクト・メイヴン:大量の衛星画像から「ミサイル発射台らしき車両」をAIが自動で識別するシステム。

3.「感知」しても「破壊」できないジレンマ
実は、米軍にとっての最大の問題は「見えないこと」よりも「壊せないこと」に移っている。

• 「墓場」化戦略:米軍やイスラエル軍は、地下都市そのものを壊すのではなく、「出入り口(ポータル)をピンポイントで爆撃して塞ぐ」作戦をとっている。中のミサイルが無事でも、外に出られなければ「巨大なゴミ捨て場」と同じだからだ。

• 実戦での教訓 (2026年現在):現在進行中の「エピック・フューリー作戦(Operation Epic Fury)」などの報告では、米・イ軍はイランの既知のトンネル入り口の約77%を爆撃により封鎖したとされている。しかし、イラン側もブルドーザーなどで即座に瓦礫を撤去し、再開通させる粘り強さを見せている。

結論:イランの主張は「半分本当で半分ハッタリ
イランの地下ミサイル網は、確かに米軍の第一撃(奇襲)を生き残る能力を持っている。しかし、以下の理由から「無敵」では無い。

① ボトルネック:搬出口は数に限りがあり、米軍はそこを集中監視している。

② 汚職と管理:中国ロケット軍の汚職」と同様、イランでも軍内部の腐敗により、いざという時に「燃料が空だった」「誘導装置が中古品にすり替えられていた」といった事態が起きる可能性は、独裁国家特有のリスクとして常に指摘されている。

③ 封鎖の恐怖:地下深くにあるがゆえに、入り口を数箇所壊されるだけで、数千億円かけた兵器が二度と日の目を見ない「地下の墓」になる脆さを抱えている。

今のところ、米軍は「100%感知はできないが、出てきた瞬間に叩くか、出口を塞いで閉じ込める」という戦略でこの「地下都市」に対抗している。