イラン戦争による中東からのエネルギー供給停止は、欧州にとって国家経済と社会秩序を脅かす「死活的利益(Vital Interest)の侵害」であり、米国主導の対イラン軍事行動に踏み切る強力な大義名分(開戦理由)となる。
ただし、欧州諸国がどこまで軍事攻撃に深入りするかは、「防衛的な海上開通作戦」と「イラン本土への大規模空爆」とで姿勢が分かれる。
1. 欧州が軍事攻撃に踏み切る3つの大義名分
• 経済・社会崩壊を防ぐための「自衛権」の行使:

エネルギー途絶によるハイパーインフレと産業の停止は、政権の退陣や社会騒乱に直結する。欧州各国にとって「経済安全保障上の緊急事態」となり、国際法上の自衛権(国連憲章第51条)や公海の「航行の自由」を防衛することを大義名分として軍事力行使を正当化する。
• 米国の軍事負担に対する連帯と圧力:

米国単独での対応には限界があり、欧州のエネルギー危機を打開するための軍事行動である以上、米国から「同盟国としての相応の負担(軍事的貢献)」を強く要求される。
• イランによる核・ミサイル脅威の排除:

イランが封鎖を強行する背景には核開発や長距離ミサイルの存在がある。イランの弾道ミサイル射程には欧州南東部も入るため、過激化するイランの軍事インフラを叩く動機が強まる。
2. 実際の軍事参加における欧州各国の「温度差」

欧州が一岩となってイラン本土を攻めるわけではなく、国によって関与の度が異なる。
• イギリス:米国との「共同攻撃」に即座に参加
◦ 行動:米軍と連携し、英軍基地(キプロスやディエゴガルシア島など)の使用を許可するだけでなく、英空軍(RAF)や海軍がイランのミサイル基地やドローン点、イエメンのフーシ派への直接空爆・迎撃作戦に積極参加する。
• フランス・ドイツ・イタリアなど:海上防衛を主導し、本土攻撃には慎重
◦ 行動:ホルムズ海峡や紅海の「機雷掃海」「民間タンカーの強制護衛」「対艦ミサイル/ドローンの迎撃」といった防衛作戦(EU主導の護衛ミッション等)には空母や護衛艦を派遣して全力投入する。
◦ 限界:イラン本土への全面空爆や政権倒壊作戦への直接参加には慎重姿勢をとる。報復テロのリスクや中東での更なる泥沼化を恐れるためだが、情報提供、後方支援、ロジスティクスの形で米英の攻撃を全面的にバックアップする。
中東原油・LNGの完全途絶は、欧州諸国にとって軍事力行使を躊躇する余裕を奪う事態となる。欧州は米国とともに「海上交通路(SLOC)の強制開通」に向けた多国籍軍の主力として軍事介入し、イランへの攻撃を事実上容認・支援することになる。
