イラン産とサウジアラビア産の原油を合わせると中国の原油輸入量の約30%(時期や迂回ルートの実態によってはそれ以上)を占めるため、この2か国からの供給が途絶した場合、中国が莫大なダメージを受けることは間違いない。
しかし、「世界で一番大きな影響を受けるのが中国か」という点については、受ける影響の性質(「絶対的なダメージの大きさ」か「致命的な麻痺度」か)によって評価が分かれる。
1. 中国が「最も打撃を受ける」とされる理由

中国にとってサウジとイランからの輸入停止は、経済・安全保障の両面で致命的なリスクとなる。
• イラン産の「格安原油」の喪失
中国は米国の制裁下にあるイラン産原油を他国(マレーシア等)経由を含めて大幅なディスカウント価格で購入してきた。これが途絶えると、安価なエネルギーに依存してきた中国の民間製油所(ティーポット)が打撃を受け、製造業全体のコストが跳ね上がる。
• 輸入絶対量の巨大さ
中国は世界最大の原油輸入国(日量1,000万バレル以上を輸入)で、30%の供給が失われると、量にして「日量300万バレル以上」という他国では代替不可能な規模のエネルギーが消滅することになる。
• ホルムズ海峡への依存
サウジやイランだけでなく、イラクやクウェートなども含めると、中国の原油輸入の中東依存度は約40%に達する。中東紛争でホルムズ海峡が封されれば、中国の工業活動や物流は激しい停滞を余儀なくされる。
2. それでも「他国の方がより深刻」とされる理由

一方で、エネルギー構造や代替手段の観点から、日本や韓国、あるいは途上国の方がより致命的な影響を受けるという見方もある。
• 他国の圧倒的な中東依存度(日本・韓国など)
◦ 日本・韓国: 原油の約80〜90%を中東に依存している。中東からの供給途絶は、国全体のエネルギーインフラの即時停止を意味する。
◦ 中国: 中東依存度は約40%にとどまり、残りはロシア、西アフリカ、南米、中央アジアなどへ分散されている。
• ロシア産原油と陸路パイプラインの存在
中国はロシアからの原油輸入(全体の約15〜20%)を行っており、万が一海上ルート(中東)が途絶しても、陸路のパイプライン(ESPO等)を通じてロシアやカザフスタンから一定量の原油を維持できる強みがあるが、日韓や欧州にはこの選択肢がない。
• 国家石油備蓄(SPR)とEV移行
中国は充分な国家石油備蓄(90〜100日分以上)を確保している。また、乗用車の電動化(EV・HV)が急速に進んでいるため、ガソリン消費のピークアウトが進んでおり、油糧ショックに対する耐性が年々高まっている。
• 新興国・途上国の購買力格差
中東紛争で原油価格が急騰した場合、十分な外貨準備を持たない途上国(パキスタンやアフリカ諸国など)は買い負けし、ハイパーインフレや経済破綻を引き起こす危険がある。
まとめ
「金額やエネルギー量の規模」「安価なイラン原油依存からの脱却コスト」という点では、中国は世界で最も大きな経済的ダメージを受ける国の一つだが、日本なども安心はできないのが現状だ。