BYDが日本市場をターゲットに開発して軽自動車規格のEVである「ラッコ」だが、少しクルマのことを判っていれば、これが大失敗に終るであろうことは、感覚的に理解できるだろう。とはいえ、ハッキリとした理由を挙げておかないと中国大好き派からの突っ込みがあるかもしれない。
そこで、「ラッコ」の販売が厳しくなる10の理由を整理してみる。
1. 航続距離は実走で短くなりやすい
カタログスペック(WLTCモード:約210〜320km)に対して、実際の走行では「エアコン(特に冬場の暖房)の使用」「乗車人数や荷物増加」「高速道路での連続走行」などによって電費が低下し、実際の可走距離が大きく短縮しがちだ。これにより、ユーザーの「電欠不安」を招きやすくなる。

2. LFPは寒さに弱い
BYDが強みとするLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーは、安全性や低コスト・長寿命に優れる反面、「低温環境下で放電効率や急速充電の受け入れ能力が著しく低下する」という弱点がある。日本の冬場や寒冷地での航続距離急減や充電時間の長期化が大きな懸念点となる。

3. 充電性能が物足りない
軽EVの低電圧システム構造や熱管理の兼ね合いもあり、外出先の急速充電器での受け入れ電力(kW)が限定されがちだ。充電スポットでの30分間の制限時間内において十分な航続距離を回復できず、遠出や緊急時の運用性で物足りなさが残る。

4. 車体が重く空気抵抗も不利
日本の軽で最も人気の高い「全高1.8m級スーパートールワゴン」を採用したことで、「大きな前面投影面積(空気抵抗/Cd値悪化)」と「大容量バッテリー+両側電動スライドドアによる車重増加」が重なり、中高速域でのエネルギー効率(電費)を大きく圧迫する。

5. N-ONE e: ほど効率重視でない
ホンダの軽EV「N-ONE e:」のように、軽量化・空気抵抗の最小化・電費性能の追求(WLTC 295km・高効率電費)に徹底特化した国産EV設計に比べ、ラッコは装備や空間の豪華さを優先した結果、純粋なエネルギー効率(電費性能)の追求という点では見劣りする。

6. サクラほど割り切れていない
市場で大ヒットした日産「サクラ」は、航続距離を180km(バッテリー20kWh)に抑え、「近距離移動・普段乗りのセカンドカー」と割り切ることで低価格・軽量化を実現した。一方のラッコは長距離用途もカバーしようとバッテリーを大型化したことで、車両重量と価格が跳ね上がり、コンセプトのターゲットが曖昧化している。

7. 豪華装備が本質的強みになりにくい
脚部センサー付き電動スライドドアや大画面インフォテインメント、合皮シートなどの豪華な先進装備は魅力的だが、軽自動車ユーザーが最も重視する「必要十分な実用的機能」「手軽さ」「絶対的な車両本体価格の安さ」という購買決定要素とは必ずしも合致しない。

8. 補助金で不利(最大43万円程度のハンデ)
国のCEV補助金(持続可能なEV普及に向けた評価基準)において、整備拠点網やサイバーセキュリティ、災害時の給電対応実績などの要件から、輸入車メーカーであるBYDは国産メーカー(日産やホンダ等:最大58万円前後)に対して最大43万円程度支給額が下がるハンデを負っている。これにより、車両本来の低価格アドバンテージが相殺されてしまう。
.jpg)
9. 品質・安全面に不安
中国ブランドに対する日本市場特有の慎重な見方に加え、10年単位で乗り続けられる軽自動車としての耐久性、ディーラー・アフターサービス網の密度、将来の中古車下取り価格(リセールバリュー)に対する不透明感が、手堅い買い替えを望む地方やファミリー層の購入のハードルとなる。

10. 軽市場はガソリン車が強い
日本の軽自動車市場は、N-BOX、スペーシア、タントなど完成し尽くされたガソリン・ハイブリッド車(150万〜200万円台)が圧倒的なシェアを誇っている。「航続距離の心配がない」「数分で給油完了」「リセールが極めて高い」というガソリン軽の壁は非常に厚く、EV化への強い必然性を感じていない層の心を開くのは容易ではない。

という事であり、こうしてみてもラッコが成功する事はありえないどころか、悲惨な目にあう事は間違いない。
ラッコは昨日(7月28日)発売された。さ~て、その結果が楽しみだ。とはいえ、最初の2か月程は広報車やデーラー試乗車などで多少の実績はあるだろうが、今年の末辺りが実に楽しみだ。