中国の日本に対する認知戦や世論誘導について、日本の公安調査庁は毎年1月に公表している『内外情勢の回顧と展望』の2017年1月公表版で指摘していた。
これは、日本の安全保障や公共の安全を脅かす国内外の動向を公安調査庁が分析・まとめている年次報告書で、2017年版の「中国」を扱った項目(コラム欄など)の中で、沖縄をターゲットにした中国の世論工作について、政府機関として踏み込んだ警告を発したことで当時大きな話題になったという。
この報告書に書かれている具体的な内容は‥‥
🔷中国メディアによる「琉球帰属未定論」の提起
報告書では、2016年8月に中国の共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」に掲載された、「琉球の帰属は未定であり、琉球を沖縄と呼んではならない」という趣旨の論文を取り上げている。「沖縄は歴史的に日本固有の領土ではない」とする言説(琉球帰属未定論)を中国側が意図的に流し始めている事実に警鐘を鳴らした。
🔷「学術交流」を隠れ蓑にしたアプローチ
こうした理論の浸透を狙う中国の大学やシンクタンクが中心となり、日本国内で「琉球独立」を掲げて活動する団体や関係者との間で、積極的に学術交流を進めて関係を深めている実態を指摘した。純粋な研究や交流を装いながら、独立派勢力に接近しているという分析です。
🔷「世論誘導」と「国内分断」の戦略的意図
公安調査庁は、こうした中国の一連の動きの背後にある狙いを、報告書の中で次のように明言(断定)している。
「こうした交流の背後には、沖縄で、中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられ、今後の沖縄に対する中国の動向に注目する必要がある」
この報告書が持つ意味
それまで「中国による沖縄への世論工作」は、一部の専門家やジャーナリストが指摘するレベルに留まることが多かったのですが、日本の公的なインテリジェンス(情報)機関が公式な報告書として「中国側の明確な意図(分断工作)」を明文化して警告したという点で、極めて重要な意味を持っている。
この報告書の存在は、 「2021年のフランス軍事省の報告書(IRSEM)」よりも4年も前に、日本政府みずからが同じ構図(学術交流を通じた独立派への接近、世論誘導、国内分断の狙い)を明確につかみ、公式に警戒を呼びかけていたということになる。