EVMJが輸入した中国製EVバスは、中国国内で販売できない規格外など、EVMJというベンチャー企業は詐欺的な「ビジネスモデル(水平分業)」の隙間を狙ったものだった。
1.中国国内の販売に必要な「MIITリスト」への未掲載
中国で自動車を国内向けに製造・販売するためには、中国政府の工業情報化部(MIIT)という省庁が管理する、いわば「市販許可車両リスト」に登録される必要がある。ところがEVMJのバスはこのリストに登録されていないものだった。
• リストに載っていない理由: EVMJが提携した3社(福建ウィズダム、恒天、愛中和汽車)はいずれも、中国国内の巨大なEVバス市場(BYDやYutongなどが牛耳る市場)で競争して実績を上げたメーカーではなかった。
• 輸出専用としての抜け道: 中国の規制では、「国内では販売できない(MIITリスト未掲載の)車両であっても、海外からの注文に応じた『輸出専用車』として製造・出荷することは違法ではない」というルールがある。そのため、3社は中国国内での厳しい安全性・耐久性の型式認証をパスすることなく、日本向け(輸出用)としてのみ製造を行った。
2.「自社開発・国内製造」の看板と実態(水平分業の失敗)
EVMJは当初、自社を「日本発の商用EVベンチャー」と位置づけ、インバータなどの核心技術は日本で培ったものを使い、車体製造を中国企業に委託する「水平分業(ファブレス経営)」をアピールしていた。
• 実績のないメーカーへの丸投げ: しかし実態は、中国国内でも実績がほぼない、あるいはバス製造のノウハウが未熟なメーカーに製造を委託していた。
• 「日本向け初物」という実験台: 3社とも「日本向けに販売するバスは今回初めて作った」という状態だったため、中国国内での走行データや、何万キロも走らせた耐久テストの蓄積が一切なかった。結果として、日本の公道や万博会場という「ぶっつけ本番」の場で、日本特有の高温多湿やストップ&ゴーの多い環境に耐えられず、不具合が噴出することになった。
3.中国メーカー側の「補助金終了」と「海外進出」の思惑
中国政府は2020年頃まで、国内のEV製造企業に対して巨額の補助金をEV有象無象メーカーは、生き残りをかけて「海外市場」へ活路を見出そうとしていた。
• タイミングの合致: 中国国内市場では大手(BYD等)に勝てないこれらの中小・新興メーカーにとって、「日本市場向けに作ってくれ」というEVMJからの大量の発注(万博用の150台など)は、願ってもないビジネスチャンスだった。
まとめ
つまり、「中国国内の厳しい審査や競争を経験していない(走った実績すらない)未完成の車両」が、中国の輸出規制の隙間を通り、EVMJの「国内ベンチャーが開発したっ心のEV」というブランディングに乗っかる形で、日本の自治体や万博会場に大量に導入されてしまった、というのがこの問題の本質だった。
そしてこれが、のちに重要保安部品の多発的な不具合、最終的にはEVMJの経営破綻(民事再生)へと繋がっていった。