北朝鮮が憲法を改正し「朝鮮半島の統一」を削除





北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は2026年5月、憲法の改正を行った。今回の改正は、金正恩総書記が打ち出してきた「対南(韓国)政策の根本的な転換」を法的に完成させる極めて重要な内容となっている。

1.「南北統一」に関する記述の全面削除
今回の改正で最も象徴的なのが、憲法から「統一」に関連する表現がすべて削除された点だ。

• 内容:これまで北朝鮮の基本理念の一つであった「祖国統一」や「民族の団結」といった記述が消えた。

• 背景:金正恩氏は以前から、韓国を「和解と統一の対象」ではなく、「最も敵対的な国家」「不変の主敵」と定義しており、それを国の最高法規に反映させた形だ。

2.「領土条項」の親設
これまでは曖昧だった「領土」に関する規定が新たに設けられた。
• 内容:自国の領土・領海・領空の範囲を明確に定義した条項が追加された。

• 目的:韓国との「海上境界線(NLLなど)」を認めず、自国が定義する境界を法的に主張することで、有事の際に「領土侵犯」を理由とした軍事行動を正当化する狙いがある。

3.「国務委員長」への核兵器使用権限の明記
金正恩氏の職位である「国務委員長」の権限がより強化・明確化された。

• 内容:核兵器の使用権限を国務委員長が持つことが初めて憲法に明記された。

• 目的:指揮系統を一本化し、核保有国としての地位を揺るぎないものにすると同時に、対外的な威圧力を高める狙いがある。

4.ロシアへの派兵等を念頭に置いた新条項
• 内容:海外での軍事作戦に参戦した者を「特別な保護対象」に加えるなどの条項が新設された。

• 目的:ロシア・ウクライナ戦争への派兵など、軍事協力を強化している現状を踏まえ、対外的な軍事活動の法的根拠を整える意図があるとみられる。

改正の全体的な目的
今回の憲法改正の総括的な目的は、「特殊な関係(同胞)」から「完全な別個の敵対国家」への移行だ。

① 体制の安定化:「同じ民族」という概念を捨てることで、韓国の文化流入や情報による住民の動揺を抑え、「敵対国との対決」という構図で国内の結束を図る。

② 軍事行動の正当化:韓国を「他国」と位置づけることで、将来的な武力行使を「民族同士の争い」ではなく「国家間の戦争」として扱いやすくする。
③ 「正常な国家」の演出:領土規定や国家元首の権限を明文化することで、国際社会に対して(核を保有した)一つの独立した「普通の国」であるとアピールする。

これにより、長年続いてきた「朝鮮半島の統一」という目標は、北朝鮮の国家戦略から事実上、消滅したことになる。

これに対しての韓国の反応はどのようなものだろうか。

北朝鮮が「南北統一」の目標を憲法から削除し、韓国を別個の国家として定義し直したことに対し、韓国側は複雑かつ警戒感の強い対応を見せている。

1.「平和共存」路線の堅持(公式発表)
2026年5月の憲法改正の判明後、韓国の李在明政権は「朝鮮半島における平和共存政策を継続する」という基本方針を改めて表明した。

• 内容:北朝鮮が一方的に「二国家」を主張しても、韓国政府は引き続き平和的な手段による緊張緩和を目指すとしている。

• 背景:国内では「北朝鮮を国家として認め、お互い干渉しないほうが楽だ」という現実的な二国家論(自主派)と、「憲法上、北朝鮮は依然としてわが領土であり、国家とは認められない」とする伝統的な立場(同盟派)の間で激しい議論があるが、政府としてはひとまず対話の窓口を閉ざさない姿勢を見せている。

2.「領土規定」への強い警戒
韓国政府が最も神経を尖らせているのは、北朝鮮が新たに設けた「領土条項」だ。

• 反論:韓国側は「大韓民国の領土は韓半島とその付属島嶼とする」という韓国憲法第3条に基づき、北朝鮮独自の領土主張を認めていない。

• 懸念:特に海上境界線(NLL)を北朝鮮が法的に否定したことで、黄海などでの偶発的な軍事衝突が「領土防衛」の名の下で正当化されるリスクに対し、即応体制を強化している。

2.核使用権限の明文化への対抗
金正恩総書記に核兵器の使用権限が明記されたことに対し、防衛政策を一段と強化している。

• 核抑止力の強化:米国との「核協議グループ(NCG)」を通じて、核抑止力の実行力を高める方針を継続している。

• 心理戦への警戒:北朝鮮が「民族」という枠組みを捨て、核を持つ「普通の国家」として米国と直接交渉しようとする戦略(韓国パッシング)を阻止するため、日米韓の連携を再確認している。

韓国国内の反応の分かれ目
北朝鮮が「統一」を捨てたことは、韓国社会にも大きな波紋を呼んでいる。

• 保守層・伝統派:「北朝鮮の挑発を正当化する口実だ」として批判し、北朝鮮を国家として認めることに強く反対している。

• 若年層・現実派:「もともと別の国のようなものだった」と冷静に受け止める層も増えており、統一のコストや負担を避けたいという本音から、無理な統一よりも「平和的な隣国」としての関係構築を支持する声も出ている。

韓国政府は現在、北朝鮮の新憲法の詳細な文言を精査しており、今後さらに具体的な対抗措置や、必要に応じた「南北基本合意書」の再定義などの検討に入ると見られている。